HARMONIC insight
🌐 実務ガイド

取扱説明書を書式を保ったまま翻訳するには
図・表・レイアウトを崩さず、複数言語で用意する

製品を海外に出す場面や、国内でも外国語の利用者に向けて製品を提供する場面では、「取扱説明書やユーザーマニュアルを、図表や書式を崩さずに正確な訳で、しかも複数の言語で用意したい」 という課題に必ず突き当たります。取扱説明書は、図解・表・警告表示・部品名や操作名の対応関係が密に組み合わさった文書で、本文だけを訳すとレイアウトが崩れ、部品名や操作名の訳がばらつくと利用者が操作を取り違えるおそれもあります。本ガイドでは、取扱説明書・製品マニュアルを書式を保ったまま翻訳し、複数言語で用意する実務の進め方を、専門知識を前提とせずに整理します。

所要時間:6 分 / 最終更新:2026 年 7 月

📩 公開・改訂のお知らせをメールで受け取る

EN / ZH 翻訳版・追加資料・ガイド改訂のお知らせを不定期にお送りします(解除はいつでも)。

送信時、お問い合わせフォームに必要事項が引き継がれます(最終送信はそちらで完了)。

セクション 1

なぜ取扱説明書の翻訳は難しくなりやすいのか

「説明書は利用者が読める言語で用意したい」こと自体に異論は出にくいのに、実際に整えるのは負担が大きいテーマです。つまずきの原因は、次の 3 つに整理できます。

🗂️

図・表・レイアウトと本文が密に絡み合う

取扱説明書は、手順の図解・部品図・仕様表・注意書きの囲みなど、レイアウトそのものが情報の一部です。本文だけをコピーして訳すと、図と本文の対応がずれたり、表組みや段組みが崩れたりします。加えて言語によって文章の長さが変わり、日本語より長くなる言語では枠からあふれ、短くなる言語では余白が空くため、レイアウトの作り直しが発生しがちです。

🔤

部品名・操作名・型式の訳がぶれやすい

説明書には「電源ボタン」「排水フィルター」「お手入れモード」といった部品名・操作名や、型式・品番が繰り返し登場します。同じ部品や操作が箇所ごとに違う訳語になると、利用者は別のものだと受け取り、操作を取り違えるおそれがあります。製品本体の表示やラベルの表記と説明書の訳語がそろっていないと、さらに混乱します。訳語の一貫性が、読み物以上に強く求められます。

🔁

分量が多く、改訂・機種展開のたびに増える

取扱説明書は分量が多いうえ、仕様変更やモデルチェンジのたびに改訂され、シリーズ・機種ごとに似た内容が枝分かれします。さらに輸出先が増えるほど言語数も増えるため、「機種数 × 改訂 × 言語数」で翻訳の総量が膨らみます。毎回すべてを一から訳し直していると、手間もコストも際限なく増えていきます。

※ 本ガイドは、内容が確定した取扱説明書・マニュアルを「翻訳して用意する」工程を扱います。安全に関わる警告表示や、法令・規格・仕向け地の基準で記載が求められる表示(例:各国の安全・電気・化学品などの表示)は、製品の種類や販売先によって要否・書き方が異なります。何をどう記載すべきかの判断は、所管の基準や専門家にご確認ください。

セクション 2

取扱説明書を翻訳する方法 — 比較

取扱説明書の翻訳でよく使われる方法は、大きく 4 つあります。「図表やレイアウトを保ちたい」「訳語をそろえたい」「分量が多く反復する」というマニュアルの性質に照らして、それぞれの向き不向きを押さえておきます。

翻訳の方法手間・スピード文書データの扱い向いているケース
翻訳会社・技術翻訳者に依頼する品質は高いが、分量が多いと時間と費用がかかる文書は依頼先にとどまる(取り決めによる)初版や、専門性・安全性が特に高い説明書
クラウド型の翻訳サービスに貼り付ける貼り付けるだけで速いが、レイアウトは自分で作り直す本文がサービス提供元のサーバーに送られる社外秘を含まない、内容把握のための下訳
翻訳 API を制作フローに組み込む仕組みを作れば速いが、導入・開発の手間がかかるAPI 提供元に送られる(契約で扱いを定められる場合あり)制作部門が関与できる、大規模・継続的な運用
手元(ローカル)で処理する翻訳ツールファイルを渡すだけで速く、書式を保ったまま訳せる文書は PC の中で処理され、翻訳サービス事業者にはアップロードされない図表・レイアウトを保ち、機種・改訂・言語を継続的に翻訳する運用

※ どれか 1 つに絞る必要はありません。初版や安全性の高い説明書は技術翻訳者に依頼し、改訂版や機種違いの差分・大量の言語展開はツールで用意して人が確認する、と工程で使い分けるのが現実的です。

セクション 3

実務の進め方 — 「訳しやすいマニュアル」を先に整える

取扱説明書の翻訳品質は、翻訳の腕前だけでなく「元の文書の整え方」で決まる部分が大きいテーマです。毎回の翻訳と修正のやり取りを安定させるために、訳す前と訳す段階で押さえておきたい点を 4 つにまとめます。

一文一義・平易な書き言葉で書いてから訳す — 一文が長く、条件や注意が入り混じった手順文は、どの言語に訳しても曖昧さが残ります。「〜してから、〜してください」のように動作を分け、一文一義の書き言葉に整えてから翻訳すると、原文の時点で誤解が減り、訳文も安定します。手順は箇条書き・番号付きにしておくと、言語が変わっても構造を保ちやすくなります。

部品名・操作名・型式を用語辞書に登録する — 「電源ボタン」「排水フィルター」「お手入れモード」といった部品名・操作名や、型式・品番は、毎回同じ訳語になるよう用語辞書(用語集)に登録しておきます。型式・品番や製品名など「訳さずそのまま残す語」を指定できるツールなら、固有名詞が勝手に意訳される事故も防げます。製品本体の表示やラベルの表記とそろえておくことも大切です。

図表・レイアウトごと翻訳する — Word・PowerPoint・PDF などで作った説明書は、本文だけコピーして訳すと、図と本文の対応や表組み・段組みが崩れます。ファイルのレイアウトを保ったまま翻訳できる方法を選ぶと、図解や表の配置を保った訳文がそのまま制作データになり、レイアウトの作り直しを大きく減らせます。文章の長さが変わる分の微調整だけで済みます。

共通部分は翻訳メモリで再利用する — 取扱説明書には、安全上のご注意・保証・お手入れ・仕様表など、機種や改訂をまたいで繰り返し使う共通部分が多くあります。過去の訳文を蓄積して再利用する翻訳メモリを使うと、共通部分は以前の訳をそのまま当てて、機種ごと・改訂ごとに変わった部分だけを訳せます。「機種数 × 改訂 × 言語数」で膨らむ手間を、大きく抑えられます。

📖

翻訳の用語を統一して品質を安定させるには

部品名・操作名・製品名の訳がばらつく問題は、取扱説明書に限らず翻訳運用に共通の課題です。用語集(用語辞書)で訳のぶれをなくす考え方と、最初に登録すべき語の選び方をこちらの実務ガイドに整理しています。

翻訳の用語統一ガイドを読む →

セクション 4

製品に添える配布版か、社内把握のための参照訳か — 目的で使い分ける

取扱説明書の翻訳は、「製品に同梱・掲載して利用者に届ける配布版」なのか「社内やサポートが内容を把握するための参照訳」なのかで、求められる精度と工程が変わります。どちらか一方に決めるのではなく、目的に応じて組み合わせるのが実務的です。

製品に添える配布版

利用者に届ける正式な版として

製品に同梱したり、Web で公開したりして利用者に届ける版です。誤った手順や不正確な警告表示は事故につながりかねないため、機械的な下訳をそのまま配布するのではなく、内容を理解できる担当者や技術翻訳者の確認を必ず挟む前提で進めます。安全・法令に関わる表示は、仕向け地の基準にあわせて別途確認します。

社内把握・サポート用の参照訳

内容共有・問い合わせ対応の補助に

海外拠点やサポート窓口が、外国語の説明書や他機種の説明書の内容を素早く把握したい場面で使う訳です。まず全体像をつかむための下訳や、原文と訳文を並べた対訳の形で用意します。参照訳は配布を前提にせず、利用者に届ける前には担当者の確認を挟むのが安全です。

🔒

未公開製品のマニュアルを安全に翻訳するには

発売前の製品や、仕様・不具合情報を含むマニュアルを、クラウド型の翻訳サービスに貼り付けてよいのか——。翻訳でデータがどこへ送られるか、処理場所による違い、手元(ローカル)処理・BYOK の考え方は、こちらの実務ガイドに整理しています。

社内文書の安全な翻訳ガイドを読む →

セクション 5

つまずきやすいポイント

取扱説明書の翻訳運用で引っかかりやすい点を、先回りして 3 つ挙げておきます。

図・写真・スクリーンショットに焼き込まれた文字が残る — 図解のラベルや操作画面のキャプチャに文字が画像として埋め込まれていると、本文を訳しても図の中の文字は元の言語のまま残ります。図中の文字は編集できるテキストとして持たせる、キャプチャは各言語で撮り直す、といった段取りを最初に決めておくと、訳し忘れを防げます。

部品名・操作名が製品本体の表示とずれる — 説明書の中では訳語をそろえても、製品本体のボタン表示・ラベル・パッケージの表記とずれていると、利用者は説明書と現物を結びつけられません。本体・ラベル・説明書の訳語を同じ用語辞書で管理し、どれか一方だけを直さないようにします。

改訂したのに一部の言語が古いまま残る — 日本語版だけ改訂して各言語版の反映が漏れると、言語によって内容が食い違います。翻訳メモリで「変わった箇所」を特定しやすくし、改訂は必ず全言語に反映する運用を決めておくと、版のずれを防げます。どの言語がどの版に対応しているかを管理する表があると確実です。

セクション 6

よくある質問

取扱説明書を AI 翻訳や機械翻訳にかけた訳文は、そのまま製品に同梱できますか?
機械的な訳文は、内容把握や下訳としては有用ですが、そのまま配布するのは避けるのが基本です。誤った手順や不正確な警告表示は事故につながりかねないため、利用者に届ける版は内容を理解できる担当者や技術翻訳者の確認を挟む前提で使います。安全・法令に関わる表示は、製品の種類や仕向け地の基準にあわせて別途ご確認ください。
図や表を崩さずに、レイアウトを保ったまま翻訳できますか?
できます。ファイルのレイアウトを保ったまま翻訳する方式のツールであれば、Word・PowerPoint・PDF などの図・表・段組みの配置を保って、本文だけを訳文に置き換えられます。本文をコピーして貼り付ける方式だと図と本文の対応や表組みが崩れやすいため、レイアウトが重要な説明書はファイルごと翻訳する方法が向いています。ただし、画像として焼き込まれた文字は別途対応が必要です。
似た機種の説明書を何度も翻訳します。訳のばらつきとやり直しを減らすには?
翻訳メモリと用語辞書の併用が基本です。安全上のご注意・保証・お手入れ・仕様表などの共通部分は、過去の訳文を蓄積しておけば以前の訳を再利用でき、機種ごと・改訂ごとに変わった部分だけを訳せます。部品名・操作名・型式を用語辞書に登録しておけば、機種が違っても同じ訳語にそろいます。
発売前の製品のマニュアルを、翻訳サービスにかけても大丈夫ですか?
「どこで処理されるか」の確認が先です。クラウド型のサービスは入力した本文が提供元のサーバーに送られるため、未公開の仕様や不具合情報を含むマニュアルでは、社内の情報管理ルールとの整合を確認する必要があります。手元(ローカル)で処理し、自社の AI キーで動かす方式(BYOK)であれば、文書を翻訳サービス事業者にアップロードせずに翻訳できます。詳しくは「社内文書を安全に翻訳するには」のガイドをご参照ください。
英語だけでなく、多くの言語で説明書を用意したい場合は?
元になる日本語版を 1 つ正本として定め、そこから各言語へ展開するのが基本です。言語ごとに別の原稿から訳すと、言語間で内容がずれます。多言語対応の翻訳ツールであれば、同じ原文・同じ用語辞書から複数言語の訳文を作れるため、内容をそろえやすくなります。どの言語がどの版に対応しているかを管理しておくと、改訂の反映漏れも防げます。

ご紹介

取扱説明書を、手元で・図表そのまま翻訳するツールのご紹介

当社の Insight Doc Translator は、Word・Excel・PowerPoint・PDF をドラッグ&ドロップするだけで、レイアウトや書式を保ったまま多言語に翻訳するデスクトップアプリです。取扱説明書の図・表・段組みの配置を保って翻訳し、用語辞書で部品名・操作名・型式の訳を統一、翻訳メモリで安全上のご注意や仕様表などの共通部分を再利用できます。文書は PC の外に出ない手元処理(BYOK)のため、発売前の製品マニュアルの下訳・参照訳づくりにも向いています。無料版をご用意していますので、まずは 1 つの説明書からお試しください(FREE 版のダウンロードはメールアドレスの登録なしでご利用いただけます)。利用者に届ける版は、担当者・技術翻訳者の確認を前提にお使いください。

  • Word・Excel・PowerPoint・PDF・テキストに対応
  • 図・表・段組みのレイアウトを保持したまま翻訳
  • 用語辞書で部品名・操作名・型式を統一・「訳さない語」も指定
  • 翻訳メモリで共通部分を再利用・機種/改訂の差分だけ翻訳
  • BYOK(自社の AI キーで運用)/文書は PC の外に出ない

導入のご相談は info@h-insight.jp まで