障害者差別解消法(2024 改正)の社内研修をどう整えるか
全従業員に「同じ内容で届けて・記録に残す」進め方
2024 年 4 月に施行された改正障害者差別解消法をふまえ、制度の基礎と自社の対応方針を全従業員へ同じ内容で繰り返し伝える ための社内研修の進め方を整理します。人事・教育・コンプライアンス・総務の担当者向けに、研修で扱う内容、動画化が向く範囲、受講記録(証跡)の残し方までを実務目線でまとめました。特別な法律知識は前提としません。
所要時間:7 分 / 最終更新:2026 年 6 月
📩 公開・改訂のお知らせをメールで受け取る
EN / ZH 翻訳版・追加資料・ガイド改訂のお知らせを不定期にお送りします(解除はいつでも)。
セクション 1
なぜいま「障害者差別解消法」の研修を整えるのか
障害者差別解消法(正式名称「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」)は 2024 年 4 月 1 日に改正法が施行され、事業者にも対応が求められる範囲が広がりました。研修を整える背景には、次の 3 つの理由があります。
2024 年 4 月から事業者の合理的配慮の提供が義務に
改正法の施行により、これまで事業者には努力義務とされていた「合理的配慮の提供」が、義務として位置づけられました。窓口・接客・採用など障害のある人と接する場面を持つ事業者は、自社としてどう対応するかを社内で共有しておく必要があります。研修は、その共有を従業員へ届ける手段の一つです。
現場で判断するのは一人ひとりの従業員
合理的配慮や不当な差別的取扱いの禁止が実際に問われるのは、来客対応や問い合わせ対応など日々の現場の場面です。方針を決めても、接する従業員一人ひとりに考え方が伝わっていなければ対応はばらつきます。だからこそ、全従業員へ同じ内容を確実に届けられる形にしておく意味があります。
実施した記録を残しておきたい場面がある
コンプライアンス研修は「いつ・誰に実施したか」という記録(証跡)を残しておきたい場面があります。集合形式では出席簿などで管理しますが、誰がどこまで受講したかを後から確認しづらいことがあります。研修を学習管理の仕組みと組み合わせると、受講状況をそろえて残しやすくなります。
※ 本ガイドは社内研修を整える運用方法を整理するもので、特定の法令解釈や、自社が講ずべき措置の要否を判断するものではありません。制度の詳細・対応の要件は、内閣府をはじめとする所管の解説・指針および社内規程・顧問専門家の助言にあわせてご確認ください。
セクション 2
研修で扱う内容の種類
ひとくちに障害者差別解消法の研修といっても、全従業員に共通して伝えたい基礎と、特定の部署に深く伝えたい実務とでは、求められる内容が変わります。まずどの内容を誰に届けるかを切り分けると、研修を整理しやすくなります。
| 扱う内容 | 主な対象 | 動画化との相性 | 進めるときのポイント |
|---|---|---|---|
| 制度の基礎理解 | 全従業員(制度の目的・改正点・基本用語) | 全員に共通する基礎事項のため、動画化と相性が良い | 制度の目的・2024 年改正の位置づけ・用語を共通の基礎として動画で統一する |
| 不当な差別的取扱いの禁止 | 顧客・利用者と接する部署 | 考え方の共有は動画に向く。具体の線引きは事例とあわせて伝える | 自社の業務に即した場面を例に、避けるべき対応の考え方を伝える |
| 合理的配慮の提供 | 窓口・接客・採用・人事など対応の最前線 | 考え方や具体例は動画に向くが、実際の判断は対話・相談とあわせる | 配慮の具体例を動画で共有し、個別の判断は相談体制につなぐ前提で設計する |
| 相談・対応体制の周知 | 全従業員+相談窓口の担当者 | 社内の手順・連絡先の周知は動画で統一しやすい | 自社の相談窓口・連絡先・対応の流れを反映し、改訂しやすい形にしておく |
※ 何をどこまで研修で扱うべきかは、業種・障害のある人と接する場面の有無・社内体制によって異なります。本表は内容を整理する観点を示すもので、講ずべき措置を定めるものではありません。所管の指針・社内規程にあわせてご判断ください。
セクション 3
実務の進め方 — まず基礎研修を 1 本作ってみる
コンプライアンス研修でつまずきやすいのは、すべてを一度に作り込もうとして動き出せなくなるパターンです。まずは全従業員に共通する「制度の基礎理解」を 1 本の研修にしてみると、自社に合った進め方や負担の見当がつきます。
全従業員共通の基礎から作る — 制度の目的・2024 年改正の位置づけ・基本用語といった、全員に同じ内容を伝えたい部分は動画化の効果が出やすいテーマです。まずそこから 1 本作り、運用しながら部署別の実務研修へ範囲を広げていくと無理がありません。
既存の資料や指針をスライドに整理して教材化する — 多くの教材作成・動画化ツールはスライド(PowerPoint)を素材として扱います。社内の方針資料や所管が公開する解説をもとに、「1 画面 = 1 メッセージ」を目安にスライドへ整理すると、そのまま動画の土台になります。引用元は出典として明記しておくと、改訂時に確認しやすくなります。
ナレーションは目的に合わせて選ぶ — 自分の声で録音する、台本から合成音声(TTS)で生成する、といった選択肢があります。全社展開で本数が多い・改訂が頻繁・字幕や多言語でも用意したい場合は、台本を直せば作り直せる合成音声(TTS)が運用しやすい方式です。
研修動画の作り方 — 6 ステップの実務ガイド
コンプライアンス研修の動画も、企画 → 台本 → スライド → ナレーション → 書き出し → 配信という基本の流れは研修動画と同じです。台本の書き方やナレーションの選択肢の比較は、こちらの実務ガイドに整理しています。
研修動画の作り方を読む →セクション 4
実施した記録(証跡)をどう残すか
コンプライアンス研修は「いつ・誰に実施したか」を残しておきたい場面があります。研修を用意したら、受講記録をどう残すかもあわせて決めておきます。残し方は大きく 2 つです。
動画を配って視聴してもらう(MP4 共有)
まず始めるならファイルサーバーやイントラネットで動画を配り、視聴してもらう運用です。追加のシステムが不要で、すぐに始められます。一方で誰が最後まで視聴したかは記録されないため、出席簿や視聴報告などで別途管理する必要があります。受講管理の仕組みがまだ無い段階の出発点として現実的です。
LMS で受講管理する(SCORM)
証跡が必要なら教材を SCORM 形式で LMS(学習管理システム)に登録すると、受講者ごとの完了状況や学習時間を LMS が自動で記録します。全社研修のように受講記録の保管が求められる場面では、この受講記録がそのまま証跡になり、未受講者の把握も一覧で行えます。無料・オープンソースの LMS もあります。
SCORM 1.2 入門ガイド
受講記録を残すうえで避けて通れないのが SCORM 規格です。SCORM とは何か、なぜ重要か、対応 LMS、書き出しの流れまでをまとめた入門ガイドをご用意しています。サンプル SCORM 1.2 パッケージも無料でダウンロードできます。
SCORM 1.2 入門ガイドを読む →セクション 5
つまずきやすいポイント
障害者差別解消法の研修を整えるときに引っかかりやすい点を、先回りして 3 つ挙げておきます。
「動画を見せれば終わり」にしない — 動画は制度の基礎や全社共通の考え方を揃えて伝えるのに向いています。一方で、合理的配慮は個別の状況に応じた対応が前提となるため、現場での判断は相談体制や対話とあわせて運用するのが基本です。共通部分を動画で標準化し、個別の判断は相談につなぐ、という役割分担で考えると無理がありません。
自社の対応方針・相談窓口を反映する — 一般的な制度説明だけでは、現場は「で、自社ではどうするのか」が分かりません。自社の相談窓口・連絡先・対応の流れを研修に織り込むことで、はじめて現場で使える内容になります。汎用の説明と自社固有の手順を分けて構成しておくと、後者だけを差し替えやすくなります。
改訂の担当とタイミングを決めておく — 制度の解説や指針が更新されたり、社内の体制・窓口が変わったりすると、研修内容も見直しが必要になります。誰がいつ内容を確認・更新するのかを最初に決めておかないと、古い内容のまま使われ続けるおそれがあります。台本(スピーカーノート)を残しておくと、改訂の際に該当箇所だけを直しやすくなります。
セクション 6
よくある質問
2024 年の改正で何が変わったのですか?
研修は動画で実施してもよいのですか?
どの内容から研修にするのがよいですか?
受講した記録(証跡)はどう残せますか?
外国人材を含む全社にも同じ研修を届けられますか?
ご紹介
コンプライアンス研修の動画づくりに使えるツールのご紹介
当社の Insight Training Studio は、PowerPoint を素材として研修・教育動画を作成するデスクトップアプリです。制度の解説や自社の方針資料をスライドに整理し、台本をスピーカーノートに集約 → 合成音声でナレーション生成 → MP4 書き出し、受講記録が必要なら SCORM 1.2 でパッケージ出力、という本ガイドの流れをそのまま 1 つのアプリ内で進められます。無料版をご用意していますので、まずは全従業員共通の基礎研修 1 本からお試しください。
- ✓PowerPoint から研修動画(MP4)を生成
- ✓合成音声(TTS)によるナレーション — 47 言語に対応
- ✓SCORM 1.2 パッケージ出力(LMS 配信・受講記録向け)
- ✓無料版あり・キー不要ですぐに使えます
導入のご相談は info@h-insight.jp まで