介護・医療現場の研修を動画で実施するには
シフト勤務で集合研修が組めない現場に「同じ内容で届ける」進め方
接遇や言葉づかい、利用者・患者の個人情報の取り扱い、感染対策として自施設で決めている手順、介護記録や電子カルテといったシステムの基本操作――こうした現場の研修を実施したくても、24 時間のシフト勤務で全員がそろう時間がなく、同じ研修を何度も開催することになりがちです。この研修を、動画にしてシフトの合間に同じ内容で繰り返し届ける ための進め方を整理します。介護施設・訪問介護・クリニック・病院などの研修担当や管理者の方向けに、研修で扱う内容の切り分け、受講記録(証跡)の残し方、夜勤者や外国人材への届け方までを実務目線でまとめました。特別な知識は前提としません。
所要時間:7 分 / 最終更新:2026 年 8 月
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セクション 1
なぜ介護・医療現場の研修を「動画」にするのか
介護・医療の現場は 24 時間・365 日のシフト勤務が基本で、日勤・夜勤・非常勤・訪問先直行直帰と、職員の勤務時間帯がそろいません。集合研修を開けば必ず出られない人が出て、同じ内容を日を変えて何度も開催したり、欠席者に資料を渡すだけになったりしがちです。そのうえ研修のテーマは毎年繰り返すものが多く、担当者の負担が積み上がります。動画化が選ばれるのは、次の 3 つの理由によります。
シフト勤務で全員がそろう時間がない
日勤と夜勤、常勤と非常勤、施設内勤務と訪問先への直行直帰。全員が同じ時間・同じ場所に集まれる機会は限られ、集合研修は「開催する側も出る側も」日程調整の負担が大きくなります。動画にしておけば、各自がシフトの合間や勤務時間帯に合わせて同じ内容を視聴でき、開催回数を重ねる必要がなくなります。
毎年・入職のたびに同じ研修を繰り返す
接遇や個人情報の取り扱い、感染対策の基本といったテーマは、新しく入職した人にそのつど伝え、既存の職員にも定期的に繰り返すことになりがちです。中途入職が年間を通じて発生する現場では、そのたびに講師役の職員が時間を割くことになります。一度動画にすれば、入職のタイミングに合わせて同じ内容をすぐ届けられます。
誰がいつ受講したかを残しておきたい
介護・医療の現場では、研修を実施した記録や参加者の記録を整理して残しておきたい場面が多くあります。紙の出席簿や回覧のサインでは、職員数や事業所数が増えるほど集計と保管が負担になります。動画を学習管理の仕組みと組み合わせると、誰がいつ視聴を終えたかをそろえて残しやすくなります。
※ 本ガイドは介護・医療現場の研修を動画で実施する運用方法を整理するもので、介護保険・医療関係の法令や指定基準・診療報酬上の要件への適合を示すものではありません。研修の要否・内容・頻度・実施方法・記録の様式は、サービス種別や施設の類型、自治体・指定権者の基準によって異なります。詳細は施設の管理者・研修委員会や、所管の自治体・指定権者、社会保険労務士など所管の専門家にご確認ください。
セクション 2
研修で扱う内容の種類と動画化の相性
ひとくちに介護・医療現場の研修といっても、扱うテーマは全職員共通の基本方針の周知から、実技を伴うケアの指導まで幅があります。動画化との相性は内容によって変わるため、まずどの部分を動画にするかを切り分けると、進め方を整理しやすくなります。
| 扱う内容 | 主な対象 | 動画化との相性 | 進めるときのポイント |
|---|---|---|---|
| 共通の基本方針の周知(理念・接遇・個人情報の取り扱い・虐待防止や身体拘束適正化などの自施設の方針) | 全職員 共通 | 施設としての方針や考え方の周知は、職種や勤務形態が違っても同じ内容を伝えるため相性が良い | 「1 画面 = 1 メッセージ」で、まずこの土台部分を 1 本にまとめる |
| 自施設で決めている手順の周知(感染対策の自施設ルール・事故やヒヤリハット発生時の報告・災害時の連絡体制) | 全職員/職種別 | 「自分の施設では誰に連絡し何を優先するか」という決めごとは、迷いやすい場面を例示しながら伝えられるため動画に向く | 手順の中身は自施設の委員会・マニュアルに従い、動画は「周知の手段」と位置づける |
| 機器・記録システムの操作手順(介護記録ソフト・電子カルテ・ナースコール・見守り機器などの基本操作) | 該当の業務に就く職員 | 画面や手元の操作を映像で見せられるため動画化しやすい。入れ替えや更新で変わりやすい領域 | システムの更新で内容が変わりやすいため、差し替えられるよう独立した 1 本にしておく |
| 実技を伴うケア(移乗・入浴・食事の介助、医療的な処置、緊急時の対応訓練) | 職種ごと・個別 | 身体の動かし方や利用者・患者ごとの状態に応じた対応は、その場での実技指導・訓練が必要なため動画だけで完結させにくい | 動画で共通の前提をそろえたうえで、実技指導・訓練は別途実施する |
※ 扱うべき研修の内容・頻度・対象は、サービス種別(施設・通所・訪問など)や施設の類型、自治体・指定権者の基準によって異なります。動画はあくまで研修を実施する手段の一つです。医療・ケアの手技そのものの妥当性は本ガイドでは扱いません。研修計画は施設の管理者・研修委員会や、所管の自治体・指定権者にご確認のうえ整えてください。
セクション 3
実務の進め方 — まず全職員共通の 1 本を作る
介護・医療現場の研修動画化でつまずきやすいのは、接遇から感染対策・機器操作まで一度に動画化しようとして動き出せなくなるパターンです。まずは全職員が共通で対象になる「基本方針の周知」を 1 本作って実施してみると、自施設に合った進め方や負担の見当がつきます。
全職員共通の土台から動画化する — 接遇や個人情報の取り扱い、施設の理念や方針といったテーマは、職種や勤務形態を問わずほぼ同じ内容を伝えるため、動画化の効果が出やすい領域です。まずそこから 1 本作り、運用しながら自施設ルールの周知や記録システムの操作へ範囲を広げていくと無理がありません。
既存の研修資料・委員会資料をスライドに整理して教材化する — 多くの教材作成・動画化ツールはスライド(PowerPoint)を素材として扱います。これまで集合研修で使ってきた資料や、委員会で整理したマニュアル・掲示物がある場合は、「1 画面 = 1 メッセージ」を目安にスライドへ整理すると、そのまま動画の土台になります。
1 本を短くまとめ、テーマごとに分ける — 現場の職員はシフトの合間や業務の切れ目に視聴することが多く、長い 1 本は途中で止まりがちです。テーマごとに短く区切って複数本にしておくと、必要な分だけ視聴でき、内容が変わったときの差し替えも一部だけで済みます。
ナレーションは目的に合わせて選ぶ — 自分の声で録音する、台本から合成音声(TTS)で生成する、といった選択肢があります。毎年の見直しで内容を更新する・本数が増えていく・外国人材向けに多言語でも用意したい場合は、台本を直せば作り直せる合成音声(TTS)が運用しやすい方式です。
研修動画の作り方 — 6 ステップの実務ガイド
介護・医療現場向けの動画も、企画 → 台本 → スライド → ナレーション → 書き出し → 配信という基本の流れは研修動画と同じです。台本の書き方やナレーションの選択肢の比較は、こちらの実務ガイドに整理しています。
研修動画の作り方を読む →セクション 4
受講した記録(証跡)をどう残すか
介護・医療の現場では、研修を「実施したこと」「誰が受講したこと」を整理して残しておきたい場面が多くあります。動画を用意したら、誰がいつ受講したかを残す方法もあわせて決めておきます。残し方は大きく 2 つです。
動画を配って視聴してもらう(MP4 共有)
まず始めるならファイルサーバーや事業所のタブレット・社内ポータルで動画を配り、視聴してもらう運用です。追加のシステムが不要で、すぐに始められます。一方で誰が最後まで視聴したかは記録されないため、視聴後の確認テストや受講報告など別の方法で管理する必要があります。受講管理の仕組みがまだ無い段階の出発点として現実的です。
LMS で受講管理する(SCORM)
証跡が必要なら教材を SCORM 形式で LMS(学習管理システム)に登録すると、受講者ごとの完了状況や学習時間を LMS が自動で記録します。複数の事業所・多数の職員で受講漏れを防ぎたい・実施状況を一覧で確認したい場面では、この受講記録がそのまま証跡になります。無料・オープンソースの LMS もあり、まずは小さく試すこともできます。記録の保存方法や様式が定められている場合は、その基準にあわせて運用を整えてください。
SCORM 1.2 入門ガイド
受講記録を残すうえで避けて通れないのが SCORM 規格です。SCORM とは何か、なぜ重要か、対応 LMS、書き出しの流れまでをまとめた入門ガイドをご用意しています。サンプル SCORM 1.2 パッケージも無料でダウンロードできます。
SCORM 1.2 入門ガイドを読む →セクション 5
つまずきやすいポイント
介護・医療現場の研修を動画で実施するときに引っかかりやすい点を、先回りして 3 つ挙げておきます。
実技指導・訓練は動画に置き換えない — 移乗や入浴の介助、医療的な処置、緊急時対応の訓練は、身体の動かし方やその場の状況判断を伴うため、動画の視聴だけで完結させるのは向きません。動画が得意なのは、方針・手順・システム操作といった、全員に共通する前提をそろえる部分です。動画で土台をそろえ、実技指導や訓練の時間は確認と練習に集中させる、という組み合わせが現実的です。
利用者・患者の個人情報を教材に映さない — 現場の写真や記録システムの画面を教材に使うと説明が伝わりやすい一方で、利用者・患者の氏名や顔、記録の内容が映り込むと、教材の共有そのものが個人情報の取り扱い上の問題になりかねません。撮影前に映り込みを確認する、記録システムはテスト環境やダミーデータの画面で撮る、といった配慮をルールにしておきます。
夜勤者・非常勤・外国人材にも届く形にする — 夜勤明けや短時間勤務の職員は、視聴できる時間帯や環境が限られます。1 本を短くしておく、字幕を付けて音を出しにくい場所でも内容を追えるようにする、といった配慮が効きます。外国人材が働く現場では、台本を各言語に用意して合成音声(TTS)でナレーションを生成すれば、同じ教材を複数の言語で展開できます。
セクション 6
よくある質問
制度で求められている研修も動画で実施してよいのですか?
移乗介助などの実技研修は動画に置き換えられますか?
どの内容から動画にするのがよいですか?
受講した記録(証跡)はどう残せますか?
夜勤の職員や外国人材の職員にはどう届ければよいですか?
ご紹介
介護・医療現場向け動画づくりに使えるツールのご紹介
当社の Insight Training Studio は、PowerPoint を素材として研修・教育動画を作成するデスクトップアプリです。これまでの研修資料や委員会資料をスライドに整理し、台本をスピーカーノートに集約 → 合成音声でナレーション生成 → MP4 書き出し、受講記録が必要なら SCORM 1.2 でパッケージ出力、という本ガイドの流れをそのまま 1 つのアプリ内で進められます。無料版をご用意していますので、まずは全職員共通の研修 1 本からお試しください。
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