HARMONIC insight
🧭 実務ガイド

内部通報制度の周知を動画で行うには
制度の説明で終わらせず、困ったときに窓口を思い出せる状態をつくる進め方

窓口を設け、規程を整え、社内ポータルに案内を掲示した。それでも、実際に気になることが起きたときに社員が窓口を思い出せるかというと、そこは別の話です。周知の場でよく起きるのは、制度の名称と根拠の説明で時間が終わり、受け手には「そういう窓口があるらしい」だけが残るという事態です。相談をためらわせているのは制度への無知よりも、伝えたあと自分がどう扱われるのかが見えないこと であることが少なくありません。誰が受け取り、どこまで秘密が守られ、伝えたことで不利益を受けないと決められているのか――この見通しを、部署や拠点が分かれていても同じ内容で届け、見たことを記録に残すための進め方を整理します。総務・コンプライアンス・法務・人事で窓口の運用や周知を任されている方、拠点や関係会社をまたいで案内を行き渡らせる立場の方向けに、動画にできる部分とできない部分の切り分け、通報後の流れを教材に落とす手順、記録の残し方、そして周知が形だけで終わるのを防ぐ作り方までを実務目線でまとめました。

所要時間:7 分 / 最終更新:2026 年 8 月

📩 公開・改訂のお知らせをメールで受け取る

EN / ZH 翻訳版・追加資料・ガイド改訂のお知らせを不定期にお送りします(解除はいつでも)。

送信時、お問い合わせフォームに必要事項が引き継がれます(最終送信はそちらで完了)。

セクション 1

なぜ内部通報制度の周知を動画にするのか

内部通報の仕組みで中心になるのは、窓口を用意すること、受け付けたあとの手順を定めること、伝えた人が不利益を受けないようにすることです。周知はその外側にありますが、使われない窓口は無いのとあまり変わりません。周知を動画にする組織が増えているのは、次の 3 つの理由によります。

🗂️

掲示や配布だけでは、必要になった瞬間に思い出されない

規程の改定時に一斉メールを送り、ポータルに案内を掲示する――これは必要な手当てですが、受け手が読むのは何も起きていないときです。実際に気になることが起きるのは半年後かもしれず、そのとき記憶に残っているのは制度の名称くらいということが起こります。動画にすると、窓口の場所だけでなく、伝えたあとに何がどう進むのかを短い時間で見せられます。文字の案内より、思い出せる形で残りやすいのが動画の利点です。

🏢

拠点・雇用形態・関係会社で、届き方に差が出やすい

本社の社員には行き渡っていても、店舗や現場、交代勤務の職場、パート・アルバイト、派遣で来ている方、関係会社の従業員には届いていない――周知の抜けはこうした場所に出ます。集合しての説明会を開こうにも、拠点や勤務時間が分かれているほど全員は集まりません。動画にしておけば、同じ内容を各自の都合のよいタイミングで見てもらう形が取れます。窓口の案内は、届く範囲が広いほど意味を持ちます。

🔁

入社・異動のたびに、同じ説明が必要になる

窓口の案内は、入ってきた人にその都度届いていなければ意味がありません。ところが入社・異動は年間を通じて起こり、そのたびに担当者が口頭で説明するのは負担が大きく、繁忙期には後回しになりがちです。動画にしておけば、あとから加わった人にも同じものをそのまま渡せます。管理職に登用された人には、相談を受ける側としての内容だけを追加で見てもらう、といった使い方もできます。

※ 本ガイドは内部通報制度の周知を動画教材として運用する方法を整理するものであり、周知や教育の実施が義務づけられていることを示すものでも、公益通報者保護法をはじめとする法令・指針への適合や、制度の設計・運用が十分であることを示すものでもありません。窓口の設置や体制の整備がどこまで求められるか、周知の対象・内容・頻度・記録の様式、通報の受付範囲や匿名の取り扱い、受付後の手続きは、事業者の規模、業種、事業の構造、自社の規程によって異なります。何をどこまで整えるかの判断は、社内のコンプライアンス・法務・人事の所管部門および経営層、必要に応じて弁護士など外部の専門家にご確認ください。

セクション 2

扱う内容の種類と動画化の相性

「内部通報制度の周知」とひとことで言っても、その中身は、組織が変わっても通用する考え方から、自社の窓口と受付の流れ、相談を受ける側である管理職の振る舞い、そして実際に受け付けたあとの調査や是正まで幅があります。動画化との相性は内容によって大きく変わるため、まずどこを動画にするかを切り分けると、作る本数も更新の手間も見通しが立ちます。

扱う内容変わりやすさ動画化との相性進めるときのポイント
共通の考え方(何のための仕組みか、どんなことが相談・通報の対象になりうるか、秘密がどう守られるのか、伝えたことで不利益な取扱いを受けない扱いになっていること)変わりにくい全員に同じ内容を届ける用途に向く1 本目はここから。雇用形態や拠点が違っても同じものを渡せる
自社の窓口と受付の流れ(社内・社外のどこへ、どの手段で伝えるか、匿名で伝えられるか、受け付けたあと誰が見てどう進むか、本人への返しはあるか)体制変更・委託先の 変更で変わる向くが、共通編と別の本に分けておく必要がある自社編として独立させ、窓口が変わったらこの本だけ差し替える
管理職・相談を受ける側の対応(職場で相談を受けたときにすること・しないこと、抱え込まない、自分で調べ始めない、相談したことを本人の不利益にしない)規程・体制の 変更で変わる一部向く。共通の心構えを揃えるところまで管理職編として分ける。個別の判断は所管部門が持つ
受け付けた案件の調査、関係者への聞き取り、是正や処分の手続き、社外窓口とのやりとりその時・その 状況による定められた手順に沿って行うものであり、動画で置き換えるものではない動画は「窓口にたどり着ける」まで。対応は所管部門と規程の手順で

※ 何をどこまで教材に載せるか、どの範囲の人を対象とするかは、事業者の規模、業種、拠点や関係会社の構成、自社の規程によって異なり、本ガイドでは判断できません。窓口の設計、受付範囲、匿名の取り扱い、秘密保持の方法、受付後の手続き、通報者の保護に関わる判断は、教材で決めるものではなく、コンプライアンス・法務・人事の所管部門と経営層の領域です。社内の所管部門にご確認のうえ、決まっている内容を教材に反映してください。

セクション 3

実務の進め方 — 「伝えたあとどうなるか」を先に見せる

この分野の教材でつまずきやすいのは、制度の名称、根拠、規程の条文の説明から始めてしまい、肝心の「自分が伝えたらどう扱われるのか」に触れないまま終わるパターンです。受け手が知りたいのは制度の成り立ちではなく、伝えたあとに自分の身に何が起きるかです。手元に自社の内部通報規程、窓口の案内、受付から対応までの手順を揃えたら、次の順で進めると形になります。

受付から返しまでの流れを、所管部門と一緒に 1 枚に書き出す — どの窓口で受け付けるのか、社内窓口と社外窓口はどう使い分けるのか、匿名で伝えられるのか、受け付けた内容を誰が見るのか、本人へ何らかの返しはあるのか、伝えたことが人事評価や配置に影響しない扱いになっているのか。ここを曖昧にしたまま教材を作ると、いちばん知りたい部分が抜けた本になります。書き出す過程で決まっていない箇所が見つかったら、それは教材の問題ではなく運用の側に残っている宿題です。所管部門に戻し、決まったものから教材にしてください。

1 本目は「共通編」に絞る — 管理職編や部門別から作り始めると本数が膨らみ、途中で止まります。まずは、何のための仕組みか、どんなことが対象になりうるか、どこへどう伝えるか、秘密と不利益な取扱いの扱いはどうなっているか――この共通編だけで 1 本にすると、雇用形態や拠点が違ってもそのまま渡せます。管理職編は、この共通編を見た前提で短く作れます。

「密告の推奨」に見えない構成にする — いきなり「不正を見つけたら通報を」と始めると、受け手は身構えます。まず職場の中で上司や所管部門に相談する道があること、そのうえで、言いにくい相手が関わっているときや相談しても止まってしまうときのために別の窓口が用意されていること――この順で示すと、制度が普段の相談の延長線上に置かれます。窓口は職場のやりとりを飛び越えるためのものではなく、行き止まりを作らないためのものだ、という位置づけが伝わる作りにしてください。

線引きを断定せず、「迷ったら相談してよい」を残す — 教材で「これは通報の対象」「これは対象外」と細かく仕分けようとすると、微妙な場面ほど当てはめに迷い、結局黙っておこうという方向に働きます。対象になりうる事柄の類型は例として示しつつ、確信が持てない段階でも相談してよいこと、勘違いだったとしてもそのこと自体で不利益を受けない扱いになっていることを明示するほうが、実務では機能します。どこまでを対象とするかの線引きは規程の定めに沿い、教材では規程の参照先を案内するにとどめてください。

ナレーションは目的に合わせて選ぶ — 自分たちの声で録音する、台本から合成音声(TTS)で生成する、といった選択肢があります。当面内容を変える予定がなければ録音でも構いません。一方で、窓口の変更や規程の改定のたびに一部を直したい場合や、担当が代わっても更新していく前提の場合、日本語が母語でない方が働く職場で多言語版も用意したい場合は、台本を直せば作り直せる合成音声(TTS)が運用しやすい方式です。窓口の連絡先など聞き逃せない部分もあるため、字幕を併せて用意しておくと確実です。

🎬

研修動画の作り方 — 6 ステップの実務ガイド

内部通報制度の周知教材も、企画 → 台本 → スライド → ナレーション → 書き出し → 配信という基本の流れは他の研修動画と同じです。台本の書き方やナレーションの選択肢の比較は、こちらの実務ガイドに整理しています。

研修動画の作り方を読む →

セクション 4

視聴記録をどう残すか

誰がどの教材を見たかを把握しておくと、拠点や雇用形態にかかわらず案内が行き渡っているか、窓口を変更したあとの配り直しが届いたかを確認できます。残し方は大きく 2 つです。

動画を共有し、記録は既存の様式に残す(MP4 共有)

まず始めるなら

共有フォルダや拠点の端末、貸与端末に動画を置いて視聴してもらい、記録は教育記録簿など、これまで使っている様式に残す運用です。追加のシステムが不要で、今の帳票の流れを変えずに始められます。動画の側では誰が視聴したかは残らないため、記録は従来の様式で押さえる形になります。周知の範囲を関係会社や取引先まで広げる可能性がある場合は、社外に渡してよい内容かどうかを所管部門と確認したうえで、渡す版を分けて用意しておくと扱いやすくなります。

LMS で受講状況を管理する(SCORM)

証跡を集約するなら

教材を SCORM 形式で LMS(学習管理システム)に登録すると、受講者ごとの完了状況や学習時間を LMS が自動で記録します。拠点や部署が多く、どこまで行き渡ったかを一覧で確認したい場合に向きます。無料・オープンソースの LMS もあり、まずは小さく試すこともできます。ただし記録に残るのは「見たかどうか」であり、窓口が使える状態にあるかは別に確かめる必要があります。記録の様式や保存期間が社内の定めで決まっている場合は、その基準にあわせて運用を整えてください。

📘

SCORM 1.2 入門ガイド

受講記録を残すうえで避けて通れないのが SCORM 規格です。SCORM とは何か、なぜ重要か、対応 LMS、書き出しの流れまでをまとめた入門ガイドをご用意しています。サンプル SCORM 1.2 パッケージも無料でダウンロードできます。

SCORM 1.2 入門ガイドを読む →

セクション 5

つまずきやすいポイント

内部通報制度の周知を動画にするときに引っかかりやすい点を、先回りして 5 つ挙げておきます。

規程の読み上げにしない — 条文や制度の沿革をなぞる作りは、作る側にとっては網羅できて安心ですが、受け手には何も残りません。作るときは「この本を見た人は、困ったときに何を思い出せるようになっているか」を 1 行で書いてから中身に入ってください。思い出してほしいのは、たいてい、窓口がどこにあるか・秘密が守られること・伝えても不利益を受けない扱いになっていること、の 3 つ程度です。覚えてもらう情報を絞り、細かい定めは規程の参照先を案内する形にすると、短く作れて更新も楽になります。

窓口が実際に動く状態を先に整える — 教材で「気になることがあれば窓口へ」と案内するのに、受付の担当者が決まっていない、連絡してもしばらく返事がない、社外窓口の委託が切れている――こうした状態のまま配信すると、教材はかえって不信を強めます。受け付けたあと誰がどう扱うのか、本人への返しをどうするのか、伝えた人の不利益をどう防ぐのかを所管部門と確認し、案内できる形にしてから配信してください。体制が変わったときに教材だけ古いまま残ると、案内先が実在しない状態になります。更新の担当と契機(規程改定、窓口や委託先の変更、担当者の交代)をあらかじめ決めておくと、更新が止まりません。

通報件数や受講率を、制度がうまくいっている証拠として扱わない — 件数がゼロだから健全だ、受講率が揃ったから周知できている――どちらも成り立ちません。件数がゼロなのは問題が無いからかもしれませんし、使えない仕組みだと思われているからかもしれず、数字だけでは区別がつきません。受講率も、配ったことの記録であって、必要なときに思い出せるかどうかとは別です。数字を目標に置くと、周知の目的が「受講率を上げること」にすり替わります。教材は共通理解をつくる役割に置き、制度が機能しているかは所管部門が別の方法で確かめる、と切り分けておくと扱いを誤りません。

受講者の中に、今まさに悩んでいる人がいる前提で作る — 受講者の中には、実際に困っている最中の人が含まれている可能性が常にあります。実例を扱う場面では、当事者が特定されるような描写、特定の部署や属性を例に使う言い回しは避け、業種・場面・立場だけを残して再構成してください。原因を個人の資質に帰す作りにすると、相談すること自体が責める行為に見えてしまいます。集合させての一斉視聴を強めに求めるのではなく、各自の都合のよいタイミングで見られるようにし、窓口の案内は教材の最初と最後の両方に置いてください。

管理職編を、共通編の焼き直しにしない — 相談を受ける側に必要なのは、制度の知識ではなく、受けたときの振る舞いです。その場で真偽を確かめようとして自分で聞き回らないこと、相談があったこと自体を他へ広げないこと、対応が難しくても止めずに定められた道筋につなぐこと、相談したことを本人の評価や配置に反映しないこと――このあたりを、実際に起こりそうな場面に沿って短く扱うほうが効きます。共通編と同じ内容をもう一度流すだけの本は、見る側の時間を使うわりに残るものが少なくなります。

セクション 6

よくある質問

動画を配れば、内部通報制度の周知として足りますか?
本ガイドでは判断できません。周知の対象・内容・頻度・記録の様式は、事業者の規模、業種、拠点や関係会社の構成、自社の規程によって異なります。実務上は、動画で共通の考え方と自社の窓口・受付の流れを揃え、掲示やカード類など手元に残る案内を併用し、個別の受付や対応は所管部門と規程の手順で行う、という組み合わせが取りやすい形です。何をどこまで整えるかは、社内のコンプライアンス・法務・人事の所管部門と経営層、必要に応じて弁護士など外部の専門家にご確認ください。
どこから作ればよいですか?
1 本目は「共通編」に絞ってください。何のための仕組みか、どんなことが対象になりうるか、どこへどう伝えるか、秘密と不利益な取扱いの扱いはどうなっているか――ここは雇用形態や拠点が違ってもそのまま渡せます。次に、相談を受ける側である管理職向けの本を足すと、実際に効く形になります。すべてを一度に作ろうとすると完成しないまま止まりがちです。
コンプライアンス研修やハラスメント研修とは、どう使い分けますか?
重なる部分はありますが、置いている焦点が違います。「コンプライアンス研修を動画で実施するには」で扱うのは法令や社内規程を守る取り組み全般、「ハラスメント研修を動画で実施するには」で扱うのは職場の中での言動です。本ガイドが扱うのは、何かに気づいた人が声を上げられる道筋そのものになります。それぞれの教材の最後で窓口の案内に触れ、詳しい説明は本ガイドの教材に寄せる、という組み立てにすると、それぞれの本を短く保てます。取引先や委託先まで視野を広げる内容は「ビジネスと人権の教育を動画で実施するには」で扱っています。
匿名で伝えられることは、教材に書いてよいですか?
自社の規程と窓口の運用しだいです。匿名で受け付けるかどうか、匿名の場合に本人へ返しができるか、社外窓口を通す場合の扱いはどうなるかは、事業者ごとに定めが異なります。教材には、所管部門と確認して確定している内容だけを書いてください。決まっていない事項を「たぶんこうだろう」で書くと、実際の運用と食い違ったときに制度そのものへの不信につながります。運用が確定していない部分は、規程や窓口の案内を参照先として示すにとどめるのが安全です。
パート・アルバイトや関係会社の人にも見てもらう必要がありますか?
対象範囲は自社の規程と体制の定めによります。実務としては、周知の抜けが出やすいのは本社の正社員以外のところです。誰を対象とするかを所管部門と決めたうえで、対象に含める場合は、勤務時間が分かれていても見られる形(各自の端末や拠点の共有端末で視聴できる、短い尺に分ける)にしておくと届きやすくなります。社外の方に渡す版は、社内の呼び方や内部の事情を含まない形に整えたうえで、渡し方を所管部門と確認してください。
窓口や規程が変わったら、教材は毎回作り直しですか?
作り方しだいで、作り直しは避けられます。共通編と自社編(窓口・受付の流れ)、管理職編を別の本に分け、本編には担当者の個人名を書き込みすぎず役割と参照先で示しておけば、変わった部分の本だけを差し替えれば済みます。台本から作り直せる形にしておくと、変更箇所だけ直して同じ体裁で出し直せます。案内先が実在しない教材が残っているのは、教材が無い状態より悪い影響が出ます。更新の担当と契機を先に決めておいてください。

ご紹介

周知教材づくりに使えるツールのご紹介

当社の Insight Training Studio は、PowerPoint を素材として研修・教育動画を作成するデスクトップアプリです。窓口と受付の流れをスライドに整理し、解説をスピーカーノートに台本として集約 → 合成音声でナレーション生成 → MP4 書き出し、受講記録が必要なら SCORM 1.2 でパッケージ出力、という本ガイドの流れをそのまま 1 つのアプリ内で進められます。無料版をご用意していますので、まずは共通編の 1 本からお試しください。

  • PowerPoint から教育動画(MP4)を生成
  • 合成音声(TTS)によるナレーション — 47 言語に対応
  • SCORM 1.2 パッケージ出力(LMS 配信・受講記録向け)
  • 無料版あり・キー不要ですぐに使えます

導入のご相談は info@h-insight.jp まで