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🌐 実務ガイド

人事評価・目標管理シートを翻訳するには
評価の言葉を、社内の定義どおりに渡す

海外拠点にも同じ評価制度を適用することになった、日本で働く外国人材に評価シートを母語でも読める形で渡したい、自己評価欄が空欄のまま返ってくる——人事や人材開発の担当者からは、「様式は訳したのに、書かれてくる中身がかみ合わない」 という声をよく聞きます。評価シートが他の社内文書と違うのは、読んで終わりではなく、本人が記入し、面談で使われ、その先の処遇にもつながっていく様式だということです。言葉の受け取り方がずれたままだと、評価の納得感そのものに響きます。本ガイドでは、評価の言葉をどう扱うか、期首と期末で訳をどう保つか、評価内容という個人情報をどこで処理するかを、専門知識を前提とせずに整理します。

所要時間:7 分 / 最終更新:2026 年 9 月

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セクション 1

なぜ評価シートの翻訳は、訳しただけでは足りないのか

評価シートは分量としては多くありません。それでも他の文書より手こずるのは、次の 3 つの事情があるからです。

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評価の言葉が、一般の言葉ではなく社内で定義された言葉になっている

「期待を上回る」「概ね期待どおり」「要改善」「発揮行動」「達成度」「ウェイト」——評価シートに並ぶ言葉は、辞書どおりの意味ではなく、自社の評価制度の中で意味が決められた言葉です。ところが訳文では、その言葉が現地で普通に使われている意味で受け取られます。段階の呼び方ひとつでも、「期待どおり」が母語では物足りない評価に聞こえる言い方に訳されてしまえば、本人の受け止め方は変わります。ここで必要なのは、うまい訳語を探すことではなく、社内での定義とセットで渡すこと、そして一度決めた訳語を動かさないことです。

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期首と期末で、同じ様式が往復する

目標管理のシートは、期首に目標を書き、期中に振り返り、期末に達成度を評価する——同じ紙面が一年かけて何度も行き来します。このとき、期首に訳した目標の文言を期末にもう一度訳し直すと、言い回しが変わります。原文は変わっていないのに訳文だけが動くと、「この目標は達成されたのか」を見る場面で、基準そのものがぶれます。評価の場では、書かれている言葉が期首から動いていないことが、内容の正確さと同じくらい効いてきます。

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中身が、そのまま個人の評価情報である

記入済みの評価シートには、本人の氏名、社員番号、等級、評定、上司のコメントが載っています。他の業務文書と違い、書かれていること自体が本人の処遇に関わる個人情報です。翻訳のために誰かに渡す、どこかに貼り付ける——その一手が、本来その情報を見る立場にない人に中身を開くことになっていないか。様式(空欄のシート)を訳す工程と、記入済みのシートを訳す工程は、扱いを分けて考える必要があります。

※ 本ガイドは、すでに社内で運用している評価様式や記入済みのシートを「翻訳して相互に読める形にする」工程を扱うものであり、評価制度の設計、評価項目や評定段階の決め方、評価結果を処遇にどう反映するか、海外拠点や外国人材に同じ制度をそのまま適用してよいかを示すものではありません。これらは組織の形・雇用の形態・拠点の所在によって異なり、労働条件の明示や不利益な取り扱いに関わる論点も含みます。判断は自社の人事労務の所管部門、社会保険労務士など所管の専門家、海外拠点については現地の法令に詳しい窓口にご確認ください。就業規則や社内規程そのものの翻訳については「就業規則・社内規程を外国人材向けに翻訳するには」のガイドをご参照ください。

セクション 2

評価シートを翻訳する方法 — 比較

この領域でよく使われる方法は、大きく 4 つあります。「記入欄のある様式である」「期首と期末に必ず発生する」「記入済みのものは個人情報を含む」という評価シートの性質に照らして、向き不向きを押さえておきます。

翻訳の方法手間・スピード文書データの扱い向いているケース
翻訳会社に依頼する様式の翻訳には向くが、評価期間の締切に合わせて記入済みのシートを往復させるのは現実的でないことが多い文書は依頼先にとどまる(取り決めによる)空欄の様式や、制度の説明資料をまとめて整えるとき
クラウド型の翻訳サービスに貼り付ける貼り付けるだけで速いが、表と記入欄を組み直すことになり、評価のたびに負担が積み上がる本文がサービス提供元のサーバーに送られる個人が特定される情報を含まないと確認できた説明文だけを訳す場合
日本語ができる現地の社員や同僚に頼むその場で頼めるが、評価に関わらない立場の人に中身が開く。担当者が抜けると翌期から止まる社内にとどまるが、閲覧してよい範囲を超えることがある空欄の様式や制度の案内文の下訳(記入済みのシートには向かない)
手元(ローカル)で処理する翻訳ツールファイルを渡すだけで速く、表と記入欄の配置を保ったまま訳せる。翌期も同じ手順で回せる文書は PC の中で処理され、翻訳サービス事業者にはアップロードされない記入済みの評価シート・評価期間中のやり取り・複数拠点で同じ様式を使う運用

※ どれか 1 つに絞る必要はありません。空欄の様式や制度の説明は時間をかけて文面を固め、評価期間中に行き来する記入済みのシートは手元で速く回す、という使い分けが現実的です。なお、記入済みのシートは本人の処遇に関わる情報を含みます。社外のサービスに載せてよいかは、自社の情報管理と個人情報の取り扱いのルールに照らして、着手前に確認しておいてください。判断がつかないうちは、手元で処理できる方法を選んでおくほうが安全です。

セクション 3

実務の進め方 — 期首に決めた言葉を、期末まで持たせる

評価シートの翻訳は、一度訳して配れば終わりではありません。同じ様式が期首・期中・期末と往復し、来期もまた戻ってきます。押さえておきたい点を 4 つにまとめます。

「訳す語」「訳さない語」「毎回同じ訳にする語」を先に仕分ける — 設問文、記入欄の説明、目標の記述、上司と本人のコメント、フィードバックの文章は訳す対象です。一方、氏名、社員番号、等級やグレードの記号、評定の記号、点数、ウェイトの数値、評価期間の表記、部署コードは、原文のまま残す対象です。そして、評価項目の名称、評定段階の呼び方、制度上の用語(目標管理・達成度・発揮行動・中間振り返りなど)は「毎回同じ訳語にする語」です。この 3 つをファイルを開く前に仕分け、後の 2 つを用語辞書(用語集)に登録しておくと、担当者が変わっても、期が変わっても訳が動きません。同じ評価項目が期によって違う呼び方で出てくると、読む側は別の項目として受け取ってしまいます。

評定段階は、訳語だけでなく定義と並べて渡す — 「期待を上回る」「概ね期待どおり」といった段階の呼び方は、訳語を当てただけでは、その言葉が現地で持っている一般的な語感で受け取られます。自社の制度でその段階が何を指すのかという説明を、様式の中か添付の案内に併記しておいてください。段階の記号(S・A・B などの表記)は訳さずそのまま残し、記号と定義の対応表を別に用意するのが確実です。記号に現地語の意味を持たせようとすると、制度と言葉が二重になり、あとから食い違います。なお、段階の設け方や分布の考え方そのものは制度側の話で、翻訳の工程で決めるものではありません。

元ファイルごと翻訳する — 評価シートは、評価項目の行、評定欄、ウェイトの列、記入欄が対応した状態で意味を持ちます。本文だけをコピーして訳すと、この対応が崩れ、記入欄の位置がずれた様式が出回ります。ファイルの書式を保ったまま翻訳できる方法を選ぶと、原本と同じ体裁の訳文がそのまま出せる状態になり、原本と訳文を並べて確認する作業も楽になります。なお、様式の中に画像として貼り込まれた説明図や、画面写真として貼られた記入例は翻訳の対象になりません。どの文字が編集できるデータで、どれが画像なのかを、様式を決める段階で洗い出しておいてください。

期首の訳文を保存し、期末はそれを引き継ぐ — 目標管理のシートでは、期首に書いた目標の文言が、期末にもう一度同じ紙面に出てきます。ここで訳し直すと、原文が変わっていないのに訳文の言い回しだけが変わります。原文と訳文を翻訳メモリとして残しておけば、期末には期首と同じ訳が当たり、確認の手間は「期中に書き足された部分」に集中できます。用語辞書も同じで、評価項目や段階の訳語を部門の資産として引き継いでください。個人の手元に置いたままにすると、担当が交代した期から言葉が動きます。

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翻訳の用語を統一して品質を安定させるには

評価項目や評定段階の訳が期によってばらつく問題は、定型の様式を繰り返し使う業務文書に共通の課題です。用語集(用語辞書)で訳のぶれをなくす考え方と、最初に登録すべき語の選び方をこちらの実務ガイドに整理しています。

翻訳の用語統一ガイドを読む →

セクション 4

空欄の様式か、記入済みのシートか — 扱いを分ける

同じ評価シートでも、まだ何も書かれていない様式と、本人と上司の記入が入ったシートでは、翻訳の工程で気をつける点がまったく違います。ここを一緒くたにすると、速さか安全かのどちらかを落とします。

空欄の様式・制度の案内

時間をかけて固める版

評価項目、設問文、記入のしかたの説明、評定段階の定義など、全員が同じものを読む部分です。個人が特定される情報は含まれないため、文面を固めることに時間をかけられます。ここで決めた訳語がそのまま期末まで使われるので、人事の担当者と、可能であれば現地の拠点にも一度読んでもらい、意味が取れるかを確かめてから配ってください。ここを丁寧に作っておくほど、記入済みのシートを訳す段階の手間が減ります。

記入済みの評価シート

閲覧範囲を守る版

本人の自己評価、上司のコメント、評定と点数が入った状態のシートです。中身は本人の処遇に関わる情報なので、速く訳すことよりも、誰の手を経由するかのほうが重要になります。翻訳のために閲覧できる人を増やさない、手元で処理できる方法を使う、訳文の保管場所と保管期間を原本と同じ扱いにする——この 3 点を先に決めてから着手してください。翻訳版を配る範囲も原本と同じにし、訳したという理由で共有先が広がらないようにします。評価結果をどう扱うか、本人にどこまで開示するかは、人事労務の所管部門の定めに従ってください。

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個人情報を含む文書を安全に翻訳するには

記入済みの評価シートは、本人の評価・処遇に関わる情報そのものです。こうした文書を、クラウド型の翻訳サービスに貼り付けてよいのか——。翻訳でデータがどこへ送られるか、処理場所による違い、手元(ローカル)処理・BYOK の考え方は、こちらの実務ガイドに整理しています。

社内文書の安全な翻訳ガイドを読む →

セクション 5

つまずきやすいポイント

人事評価・目標管理シートの翻訳で引っかかりやすい点を、先回りして 5 つ挙げておきます。

記号・点数・ウェイト・期間は訳さず、必ず原本と突き合わせる — 等級やグレードの記号、評定の記号、点数、ウェイトの割合、評価期間の表記、社員番号や部署コードは、意味を訳す対象ではなく原本と一致させる対象です。ここでのずれは、読みにくさではなく処遇の取り違えになります。とくに注意したいのが、小数点やけた区切りに使う記号の違い、割合の書き方、日付の並び順の違い、英数字が全角に置き換わること、記号と番号の間のハイフンやゼロが落ちることです。訳し終えたら、文章の読みやすさとは別に「記号と数値だけを原本と並べて突き合わせる」工程を必ず入れてください。

訳文は、面談そのものを置き換えない — 様式が母語で読めることと、評価の内容に納得できることは別です。評価のやり取りでいちばん意味を持つのは、なぜその評価になったのかを本人と話す場面で、そこは文書の翻訳では埋まりません。訳文だけを渡して記入を求めると、書かれてくるのは形だけ整った自己評価になりがちです。翻訳で用意するのは、面談の前後で双方が同じ内容を確認できる土台までと考えてください。面談の場での意思疎通をどう支えるかは、通訳の手配も含めて別に検討する話です。

自己評価欄が空欄で返ってくるのは、訳の問題とは限らない — 設問の意味が分からなかったのか、何をどこまで書いてよいか分からなかったのか、書いたことが不利に働かないか不安だったのか——理由は訳文の外にあることが多くあります。記入欄の説明に「どのくらいの分量で」「どの期間のことを」「誰が読むのか」を書き添えるだけで返ってくる中身は変わります。訳文を直す前に、原文の段階で説明が足りているかを見てください。原文に書かれていない前提を訳の工程で補って書き足すと、様式としては整って見えても、拠点ごとに違う案内が出回ることになります。

制度が改定されたら、様式と用語辞書を一緒に更新する — 評価制度の見直しで評価項目や段階の呼び方が変わると、前期までの型をそのまま当てた訳文は、実際の制度と食い違います。制度を改定するときは、様式の差し替え、用語辞書の訳語の更新、旧様式の訳文を共有場所から下げる手順を、改定の作業とセットで決めておいてください。原本と翻訳版が食い違ったまま並んでいる状態は、翻訳版が無い状態よりも混乱を招きます。とくに評価は年に数回しか使わないため、古い版が残っていても気づかれにくい領域です。

同じ様式を配ることと、同じ制度が成り立つことは違う — 訳した様式を海外拠点にそのまま配れば同じ評価ができる、とはなりません。等級や処遇の仕組み、評価に関わる現地の法令や慣行、面談の進め方は拠点によって異なります。翻訳はこの差を埋めるものではなく、むしろ同じ日本語の項目名に訳されたことで「同じもの」に見えてしまう危うさがあります。制度をどこまで共通にするかは人事労務の所管部門と現地の窓口が決める話です。翻訳の工程では判断せず、揃っていない点に気づいたら所管部門に戻してください。

セクション 6

よくある質問

記入済みの評価シートを、クラウド型の翻訳サービスに貼り付けても大丈夫ですか?
記入済みのシートには、氏名・社員番号・評定・上司のコメントなど、本人の処遇に関わる情報が含まれます。クラウド型のサービスは入力した本文が提供元のサーバーに送られるため、自社の情報管理と個人情報の取り扱いのルールとの整合を、着手前に確認する必要があります。手元(ローカル)で処理し、自社の AI キーで動かす方式(BYOK)であれば、シートを翻訳サービス事業者にアップロードせずに翻訳できます。判断がつかない段階では、まず空欄の様式や制度の案内文だけを訳して配り、記入済みのシートの扱いは所管部門の確認を経てから決める、という順序も取れます。詳しくは「社内文書を安全に翻訳するには」のガイドをご参照ください。
評定の段階(S・A・B など)は、現地語に訳したほうが伝わりますか?
記号はそのまま残し、記号と定義の対応表を別に用意することをおすすめします。記号に現地語の意味を持たせると、制度上の段階と言葉の語感が二重になり、あとから食い違います。訳すべきなのは記号そのものではなく、その段階が自社の制度で何を指すのかという説明のほうです。なお、段階をいくつ設けるか、どう分布させるか、処遇にどう結びつけるかは制度側の設計であり、翻訳の工程で扱う範囲ではありません。人事労務の所管部門にご確認ください。
評価シートが Excel の表です。計算式や入力規則は壊れませんか?
ファイルの書式を保ったまま翻訳できる方法であれば、表の行列の対応、セルの結合、記入欄の配置を保ったまま訳文を出せます。ただし、点数やウェイトの数値は「訳さない語」として保護し、訳し終えたあとに原本と並べて突き合わせておいてください。また、入力規則の選択肢や、図として貼り込まれた説明は翻訳の対象にならないことがあります。様式を作る段階で、選択肢や説明文を編集できるデータとして持たせておくと、期をまたいだ更新がそのぶん楽になります。様式を作り替える必要が出た場合は、記入する側の負担も変わるため、所管部門と相談してから決めてください。
外国人材が母語で書いた自己評価を、日本語にして評価者に渡してもよいですか?
運用としては可能ですが、二次的な訳であることを評価者に明示してください。自己評価は書いた本人の言葉づかいに意味があり、訳すと強さやニュアンスが変わります。評価の判断に関わる部分は、訳文だけで決めずに本人に確かめる前提にしてください。あわせて、誰が訳すのかも決めておく必要があります。同じ職場の同僚に頼むと、本来その内容を見る立場にない人に評価情報が開くことになります。手元で処理できる方法を使い、閲覧できる人を増やさない形にしておくと安全です。
期首に訳した目標を、期末にもう一度訳し直してもよいですか?
原文が変わっていないのであれば、期首の訳文をそのまま引き継いでください。訳し直すと言い回しが変わり、達成したかどうかを見る場面で基準がぶれます。翻訳メモリに期首の原文と訳文を残しておけば、期末には同じ訳が当たり、確認は期中に書き足された部分に集中できます。期中に目標そのものを変更した場合は、変更前後が分かる形で残し、いつ変わったのかを訳文にも反映させてください。
海外拠点にも同じ評価シートを訳して配れば、同じ運用になりますか?
翻訳で制度は揃いません。等級や処遇の仕組み、評価に関わる現地の法令や慣行、面談の進め方は拠点によって異なり、様式を訳しただけでは同じ運用になりません。むしろ、訳して同じ項目名になったことで中身も揃っているように見えてしまうほうが問題です。実務としては、まず現在使っている様式を訳して読める状態にし、そのうえで「どこが噛み合っていないか」を人事労務の所管部門と現地の窓口に見てもらうのが現実的です。制度の適用可否そのものは、本ガイドでは判断できません。

ご紹介

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