HARMONIC insight
🌐 実務ガイド

外国人材向けの生活オリエンテーション資料を翻訳するには
住まい・ごみ出し・病院・相談窓口の案内を、困ったときに母語で読める形にする

入社の前に、寮の決まりやごみの出し方、近くの病院をまとめた資料を用意して説明した。それでも、最初の週末に熱を出した本人は、どこに連絡すればよいのか分からずに一晩を過ごしていた。あるいは、ごみの分別の案内を丁寧に訳したのに、収集日が変わったことを誰も直しておらず、近所から苦情が届いた——。受入れ担当の方からは、「説明はしたし、資料も渡した。けれど、困ったその場で本人が読めていなかった」 という声を聞きます。生活の案内は、入社の日に一度読んで終わる資料ではなく、体調を崩した夜や、鍵をなくした休日に手に取られる資料です。本ガイドでは、公的な多言語の資料と自社で書く資料の分け方から、困ったときに読める構成、地名や病院名の扱い、渡す資料と一緒に確かめることの線引き、内容を古くしない運用までを、専門知識を前提とせずに整理します。

所要時間:7 分 / 最終更新:2026 年 10 月

📩 公開・改訂のお知らせをメールで受け取る

EN / ZH 翻訳版・追加資料・ガイド改訂のお知らせを不定期にお送りします(解除はいつでも)。

送信時、お問い合わせフォームに必要事項が引き継がれます(最終送信はそちらで完了)。

セクション 1

なぜ生活の案内の翻訳は、職場の文書とは別の気づかいが要るのか

生活オリエンテーションの資料は、業務の手順書や就業規則に比べれば、書かれている内容はやさしいものです。それでも翻訳がうまく働かないことが多いのは、次の 3 つの事情によるものです。

🌙

読まれるのは、困ったときである

業務の文書は職場で、時間のあるときに読まれます。生活の案内が本当に読まれるのは、夜に体調を崩したとき、休日に部屋の設備が壊れたとき、財布や鍵をなくしたときです。周りに聞ける人がおらず、気持ちにも余裕がない場面で、本人がひとりで読んで動けるかどうかが問われます。訳が正確であることに加えて、「どこを見ればよいか」がすぐ分かる構成になっていなければ、資料があっても使われません。

🗺️

中身が、地域と住まいごとに違う

ごみの分別と収集日は自治体ごとに、建物の決まりは寮や社宅ごとに、近くの病院や交番、役所の窓口は住む場所ごとに違います。どこかで見つけた生活の案内をそのまま訳して渡すと、本人の住む地域では当てはまらない内容が混ざります。翻訳の前に、「この人が住む場所で、本当にそうなっているか」を日本語の側で確かめる工程が欠かせません。

📅

内容が、知らないうちに古くなる

収集日の変更、病院の診療時間の変更、相談窓口の電話番号や受付時間の変更、寮の管理人の交代——。生活の案内に書かれた情報は、職場の手順よりもずっと頻繁に、しかも自社の外の事情で変わります。日本語版を直しても、母語の版が古いまま残っていれば、本人は古い情報で動きます。翻訳した版をどう直し続けるかまで決めておかないと、資料はいずれ本人を困らせる側に回ります。

※ 本ガイドは、生活の案内を「外国人材が母語で読める資料にする」工程を扱うものです。在留の資格ごとに受入れ側に求められる支援の内容(たとえば特定技能の受入れで支援計画の一部として行う生活オリエンテーション)について、どの内容をどの方法・言語で行えば要件を満たすのかは示しません。出入国在留管理庁の資料、登録支援機関や監理を担う団体、必要に応じて専門家にご確認ください。住民の手続きや医療・保険の制度の説明も、本ガイドでは扱いません。

セクション 2

生活の案内を母語で用意する方法 — 比較

生活オリエンテーションの資料を母語で用意する方法は、大きく 4 つあります。「困ったときに読まれる」「地域と住まいごとに違う」「すぐ古くなる」という性質に照らして、向き不向きを押さえておきます。

用意の方法手間・スピード文書データの扱い向いているケース
公的機関や自治体が出している多言語の資料を使う訳す手間はかからず、制度の説明や暮らしの基本を正確な表現で渡せる。ただし本人の住む地域・住まい・職場に固有の内容は含まれない公開されている資料を案内するだけのため、社内の情報は外に出ない住民の手続き、医療や保険のしくみ、災害への備えなど、全国や自治体で共通の内容
翻訳会社や専門家に依頼する住まいの決まりや緊急時の案内を丁寧に固められるが、収集日や連絡先が変わるたびに依頼すると、直すのが遅れる文書は依頼先にとどまる(取り決めによる)。寮の住所や管理人の連絡先を含む場合は、機密保持の取り決めを確認する自社の寮・社宅の決まりや、緊急時の 1 枚を最初に作る一巡目
母語の分かる社員や、先に入社した外国人材に訳してもらう暮らしの実感にもとづいた、伝わる言い方になりやすい。ただし本人の負担が大きく、異動や退職で直す人がいなくなる社内にとどまる(ただし訳した人に、寮や同僚の情報が集まる)訳した資料が本当に伝わるかの確認や、「最初に戸惑ったこと」を資料に足すための聞き取り
手元(ローカル)で処理する翻訳ツール日本語版を直したら、その場で母語の版も作り直せる。図や地図を入れた資料の配置を保ったまま訳せ、用語辞書で建物や設備の呼び名をそろえられる文書は PC の中で処理され、翻訳サービス事業者にはアップロードされない自社の寮・社宅の決まりや連絡先の一覧のように、自社に固有で、しかも頻繁に直す資料

※ どれか 1 つに絞る必要はありません。全国や自治体で共通の内容は公的な多言語の資料に任せて自社では訳さず、自社で書くのは住まい・職場・地域に固有の部分だけにする、という分け方が現実的です。自社で書いた部分も、一度は母語の分かる人に読んでもらい、「訳としては正しいが、読んでも動けない」箇所がないかを確かめてください。生活の案内でいちばん困るのは、誤訳よりも、本人が読んだあとに何をすればよいか分からないことです。

セクション 3

実務の進め方 — 訳す前に決めておくこと

生活の案内の翻訳は、受入れのたびに、そして暮らしの事情が変わるたびに続く運用です。作り直しのたびに構成や言い回しが変わると、前の版を読んだ人が混乱するため、着手前に決めておくと以降が楽になる点を、4 つにまとめます。

自社で書く部分と、公的な資料に任せる部分を分ける — 資料に入れたい項目を書き出したら、「全国や自治体で共通の内容」と「自社の寮・職場・この地域に固有の内容」に分けてください。前者は、公的機関や自治体が出している多言語の資料の入手先を案内するにとどめ、自社で書き直して訳すことはしません。制度の説明を自社の言葉で書き直すと、誤りが入り、しかも制度が変わったときに直す相手が増えます。自社で書いて訳すのは、寮の決まり、通勤の経路、職場と寮の連絡先、近くの病院や交番への行き方、といった部分に絞ります。

「困ったとき」の 1 枚を、ほかと分けて作る — 体調を崩した、けがをした、火事や地震が起きた、部屋に入れない、といった場面で見るべき内容は、分厚い資料の途中に置かず、両面 1 枚に収めて別にしてください。「まず誰に連絡するか(職場の担当・寮の管理人・夜間と休日の連絡先)」「緊急の通報の番号」「近くの病院と、行き方」を、母語と日本語を並べて書きます。部屋の中の目につく場所に貼っておける形にしておくと、本当に困ったときに手に取られます。

「いつ・どこで・誰に」の形で書き、地名や病院名は訳さない — 生活の案内は、気をつけることを並べるより、「何曜日の何時までに、どこへ出す」「夜間は、この番号に電話する」のように、本人が次にすることが分かる形で書くと訳しても伝わります。地名、駅名、病院名、建物の名前は訳さずに日本語の表記を残し、読み方を添えてください。現地で看板や表示と見比べるとき、訳された名前では見つけられません。こうした呼び名は用語辞書にまとめて、どの資料でも同じ書き方にそろえます。

更新の持ち主と、最終確認日を決める — 収集日、診療時間、連絡先のような変わりやすい情報には、誰がいつ確かめるのかを決め、資料の隅に「この内容の確認日」を書いておいてください。日本語版を直したら、同じ日に母語の版も作り直すことをルールにします。日本語版と母語の版の確認日がそろっていない資料は、本人に渡さないようにすると、古い版が残り続けるのを防げます。

📖

翻訳の用語を統一して品質を安定させるには

建物や設備の呼び名、地名の書き方、職場で使う言い回しの訳が資料ごとにばらつく問題は、受け入れる人数と資料の数が増えるほど効いてきます。用語集(用語辞書)で訳のぶれをなくす考え方と、最初に登録すべき語の選び方をこちらの実務ガイドに整理しています。

翻訳の用語統一ガイドを読む →

セクション 4

「渡して読んでもらう資料」と「一緒に歩いて確かめること」— 扱いを分ける

生活オリエンテーションには、資料を渡して読んでもらえば足りる内容と、資料だけでは伝わらず、その場で一緒に確かめたほうがよい内容があります。どちらも大切ですが、翻訳に期待してよいことが違います。

渡して読んでもらう資料

母語で手元に残す

寮の決まり、通勤の経路、連絡先の一覧、困ったときの 1 枚のように、本人があとで何度も見返す内容です。ここは母語の版を手元に残すことに意味があります。日本語版と並べた形にしておくと、本人が職場の人に「ここに書いてあることを教えてほしい」と指で示して聞くこともできます。説明の場で一度読み合わせたうえで、持ち帰ってもらってください。

一緒に歩いて確かめること

訳に頼らず見せる

ごみの出し場所、分別の実物、最寄りの病院の入口と受付、役所の窓口、職場までの道のりのように、場所や物を見れば一度で分かる内容です。ここは訳文をいくら丁寧にしても、現地で迷うことがあります。最初の数日のうちに、受入れ担当や先輩の社員が一緒に歩いて見せ、資料の写真や地図と実物を見比べてもらってください。歩いたときに本人が戸惑った点は、資料に書き足す材料になります。

🔒

住所や連絡先を含む資料を安全に翻訳するには

寮の住所や部屋番号、管理人や同僚の連絡先が書かれた資料を、クラウド型の翻訳サービスに貼り付けてよいのか——。翻訳でデータがどこへ送られるか、処理場所による違い、手元(ローカル)処理・BYOK の考え方は、こちらの実務ガイドに整理しています。

社内文書の安全な翻訳ガイドを読む →

セクション 5

つまずきやすいポイント

生活オリエンテーション資料の翻訳で引っかかりやすい点を、先回りして 5 つ挙げておきます。

「日本のマナー」を並べた資料にしない — 生活の案内は、ともすると「してはいけないこと」の一覧になりがちです。注意ばかりが並んだ資料は、本人を委縮させ、困ったときに相談することまでためらわせます。決まりを書くときは、その理由と、分からないときに聞く先を一緒に書いてください。決まりと同じ重さで、「困ったら、この人に聞いてよい」ことを伝えます。

自治体の決まりを、自社の資料に書き写さない — ごみの分別の細かな区分や収集日をすべて自社の資料に書き写すと、変更のたびに直す箇所が増え、古い情報が残ります。自治体が出している多言語の案内がある場合は入手先を示し、自社の資料には「寮の集積所の場所」「出してよい時間帯」のような、自治体の案内には載っていない部分だけを書いてください。

医療や手続きの説明を、資料で言い切らない — 病院のかかり方や保険、住民の手続きについて、自社の資料で「こうすればよい」と言い切ると、本人の状況や制度の変更によっては誤った案内になります。資料に書くのは、近くの医療機関への行き方と、迷ったときの職場や公的な相談窓口の連絡先までにとどめ、制度の説明は公的機関の資料と窓口に任せてください。

母語だけの資料にしない — 母語だけで書かれた資料は、本人には読めても、職場の人や病院の受付で見せたときに伝わりません。母語と日本語を並べた形にしておくと、本人が資料を見せて助けを求めることができます。日本語の側は、短い文で、漢字に読み方を添えるなど、読みやすく書いておくと、日本語を学んでいる人の助けにもなります。

寮の住所や個人の連絡先を、無料のウェブ翻訳に貼り付けない — 生活の案内には、寮の住所や部屋番号、管理人や担当者の個人の携帯番号が入ることがあります。急いで作り直すときほど、手軽な翻訳サービスに貼り付けたくなりますが、本人や同僚の情報が社外のサービスに残ることになります。使ってよい翻訳の方法を、受入れの準備を始める前に部署で決めておいてください。

セクション 6

よくある質問

自治体が多言語の生活ガイドを出しているなら、自社で翻訳する必要はありますか?
全国や自治体で共通の内容は、公的な資料をそのまま案内するのがよい方法です。ただし、そうした資料には、本人の住む寮の決まり、職場と寮の連絡先、夜間や休日に誰に連絡するか、集積所の場所といった、自社と住まいに固有の内容は含まれません。自社で書いて訳すのは、その部分に絞ってください。公的な資料の入手先と、自社の資料の両方を 1 つの案内にまとめて渡すと、本人がどこを見ればよいか迷いません。
受け入れる人の母語が複数ある場合、どの言語から用意すればよいですか?
人数の多い言語からではなく、困ったときの 1 枚を全員の母語でそろえることから始めることをおすすめします。緊急時の連絡先と最初にすることは、1 人でも読めない人がいれば役に立たないためです。そのうえで、寮の決まりや通勤の案内のように分量の多い資料は、人数の多い言語から順に用意し、まだ母語の版がない人には、日本語版を読み合わせる場を設けてください。
特定技能の受入れで求められる生活オリエンテーションは、この資料で満たせますか?
本ガイドでは判断できません。特定技能の受入れでは、支援計画の一部として生活オリエンテーションを行うことが求められていますが、扱う内容、実施の方法、本人が十分に理解できる言語で行うことなど、満たすべき点が定められています。出入国在留管理庁の資料や、登録支援機関、必要に応じて専門家にご確認ください。本ガイドで扱うのは、そのために用意する資料を母語で読める形にする工程です。
生活の案内を動画にしたほうが伝わりますか?
ごみの出し方や設備の使い方のように、手順や実物を見せたほうが早い内容は、写真や短い動画が向いています。一方で、連絡先や決まりのように何度も見返す内容は、手元に残る資料のほうが使われます。どちらか一方ではなく、見せる内容は写真や動画で、見返す内容は資料で、と分けると無理がありません。どちらにしても、本人の住む地域と住まいの実物にもとづいて作ることが前提です。
入社手続きの書類や、就業規則の翻訳とは何が違いますか?
入社手続きの書類や就業規則は、働く条件と職場の決まりを伝える文書で、正本がどの言語か、記載の内容がどう扱われるかが重く問われます。生活の案内は、職場の外の暮らしを支える文書で、困ったときに本人がひとりで読んで動けること、地域の事情に合っていること、古くならないことが中心になります。入社手続きの書類は「入社手続き書類を外国人材向けに翻訳するには」、就業規則は「就業規則・社内規程を外国人材向けに翻訳するには」のガイドをご参照ください。
育成就労制度の開始に向けて、いまから準備しておくことはありますか?
生活の案内は、受け入れる制度が変わっても中身の多くが変わらない資料です。いまのうちに、自社で書く部分と公的な資料に任せる部分を分け、困ったときの 1 枚と更新の持ち主を決めておくと、受入れの人数が増えたときにも同じ形で回せます。制度の開始に向けた研修や体制の整え方は、「育成就労 2027 研修整備チェックリスト」もあわせてご参照ください。制度の要件の解釈については、所管の行政機関や専門家にご確認ください。

ご紹介

生活の案内を、手元で・書式そのまま訳すツールのご紹介

当社の Insight Doc Translator は、Word・Excel・PowerPoint・PDF をドラッグ&ドロップするだけで、レイアウトや書式を保ったまま多言語に翻訳するデスクトップアプリです。地図や写真を入れて作った寮の案内や、困ったときの 1 枚を、配置を保ったまま母語の版にできるため、日本語版を直したその日に母語の版も作り直せます。用語辞書で建物や設備の呼び名、職場の言い回しの訳をそろえ、地名・駅名・病院名は「訳さない語」として日本語の表記を残せます。翻訳メモリを残しておけば、受入れのたびにくり返し使う決まりの文は前回の訳を引き継げます。文書は PC の外に出ない手元処理(BYOK)のため、寮の住所や連絡先を含む資料を扱う場面にも向いています。無料版をご用意していますので、まずは困ったときの 1 枚からお試しください(FREE 版のダウンロードはメールアドレスの登録なしでご利用いただけます)。訳した資料は、一度は母語の分かる方に読んでいただき、本人が読んで動けるかを確かめたうえでご運用ください。

  • ✓Word・Excel・PowerPoint・PDF・テキストに対応
  • ✓地図・写真入りの資料も配置を保持したまま翻訳
  • ✓用語辞書で呼び名の訳を統一/地名・病院名を保護
  • ✓翻訳メモリで決まりの文の訳を引き継ぎ
  • ✓BYOK(自社の AI キーで運用)/文書は PC の外に出ない

導入のご相談は info@h-insight.jp まで