HARMONIC insight
🧭 実務ガイド

贈収賄防止・接待贈答ルールの研修を動画で実施するには
接待・贈答・便宜の社内ルールと事前相談の流れを、営業・調達・海外担当に同じ内容で届ける進め方

接待や贈答のルールは、多くの会社で「規程はあるが、読まれているかは分からない」領域です。規程には金額の目安や申請の様式が並んでいても、実際に迷うのは目の前の場面です。取引先との会食の費用をどこまで持つか、役所の担当者に手土産を持っていってよいか、取引先から季節の贈答品が届いたときにどうするか、海外の現地で手続きを急ぐための支払いを求められたらどう断るか――その答えが担当者ごとにばらばらだと、悪意がなくても、あとから説明のつかない支出や受け取りが残ります。その答えを、相手・目的・中身を記録と事前相談で見える形にするという共通の考え方と、実施する前・受け取ったときに踏む社内の手続き・相談先を、関係する役職員に同じ内容で届けて記録に残す ための進め方を整理します。法務・コンプライアンス部門の教育担当者の方向けに、動画にできる部分とできない部分の切り分け、社内の実際の質問から作る手順、構成時の注意点、視聴記録の残し方までを実務目線でまとめました。

所要時間:7 分 / 最終更新:2026 年 10 月

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セクション 1

なぜ接待・贈答ルールの研修を動画にするのか

接待・贈答のルールは、規程を配るだけでは「自分のどの場面で関係するのか」が伝わりにくい領域です。動画にしておくと扱いやすくなる理由は、次の 3 つです。

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迷う場面は文章より映像のほうが伝わる

「社会通念の範囲を超える接待・贈答をしない」と書かれても、どこからが範囲を超えるのかは、文章だけでは掴みにくいものです。取引先との会食、入札の前の打ち合わせ、季節の贈答品の受け取り、海外の現地での手続き――典型的な場面を順に示し、その場で何を確かめ、誰に相談するのかを見せられる点が、動画の効きやすいところです。

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営業にも調達にも海外担当にも、同じ内容を渡せる

接待や贈答に関わるのは営業だけではありません。贈答品や招待を受け取る立場の調達・購買、公的機関とやり取りする許認可や入札の担当、海外の代理店や現地の役所と接する海外担当もいます。部署ごとに口頭で補足すると、伝わる中身が人によって変わります。共通の考え方を同じ動画で届けておけば、誰が加わっても同じ説明から始められます。

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規程や窓口が変わるたびに配り直せる

申請の様式や承認者、金額の目安、受け取った贈答品の扱い、海外の代理店を起用するときの確認の手順などは、見直しが入ることがあります。そのたびに全員を集め直すより、変わった部分を扱う本だけを差し替えて配り直すほうが、手間も伝わり方も整えやすくなります。毎年の再受講に同じ教材を使えるのも動画の利点です。

※ 本ガイドは、贈収賄の防止と接待・贈答にまつわる社内ルールの周知を動画教材として運用する方法を整理するものであり、教材が法令で求められる要件を満たすことや、どの行為が贈賄・収賄にあたるかを示すものではありません。公務員への贈賄は刑法で、外国公務員への贈賄は不正競争防止法で禁じられており、海外で事業を行う場合は現地の法令が別に適用されることもあります。対象となる相手や行為の範囲には個別の判断が必要です。規程の内容や運用、個別の事案については、自社の法務部門や、弁護士など所管の専門家にご確認ください。

セクション 2

扱う内容の種類と動画化の相性

「贈収賄防止の研修」とひとことで言っても、その中身は、関係する役職員に共通する考え方から、自社の接待・贈答の手続き、公的機関や海外と接する部署向けの注意、個別の可否の判断まで幅があります。動画化との相性は内容によって大きく変わるため、まずどこを動画にするかを切り分けると、作る本数も更新の手間も見通しが立ちます。

扱う内容変わりやすさ動画化との相性進めるときのポイント
共通の考え方(接待・贈答・便宜は、相手・目的・中身を記録と事前相談で見える形にする/公務員や公的機関の職員が相手のときは特に慎重にする/見返りを期待させる提供も受け取りもしない/迷ったら実施する前に聞く)変わりにくい関係する全員に同じ内容を届ける用途に向く1 本目はここから。部署を問わずそのまま渡せる
自社の手続き(接待・贈答の事前申請と承認、記録の残し方、受け取った贈答品や招待の報告・返却の流れ、相談の窓口)規程の見直しや 窓口の変更で変わる向く。手続きの流れを順に見せられる考え方の本と別にし、規程が変わったらこの本だけ差し替える
公務員・外国公務員と接する部署や海外拠点向けの注意(入札や許認可の前後の接触、現地の手続きを急ぐための支払いを求められたとき、代理店やコンサルタントを通じた支払い、起用前の確認)事業の地域や 取引の形で変わる向く。ただし対象を部署ごとに絞る全社向けとは別の本にし、該当する部署と拠点だけに渡す
個別の接待・贈答の可否、ある行為が贈賄・収賄にあたるかどうか、代理店の審査結果の判断、すでに起きた事案への対応事案ごとに違う動画で決めるものではない教材では相談先と流れだけを示し、判断は法務部門と専門家へ

※ 何をどこまで教材に載せるか、どの範囲の人を対象とするかは、業種、公的機関との取引の有無、海外での事業の有無、自社の規程の定めによって異なり、本ガイドでは判断できません。教材に書いたことがそのまま規程として効力を持つわけでもありません。規程として定める場合の内容と手続きは、自社の法務部門や所管の専門家にご確認ください。

セクション 3

実務の進め方 — 社内に実際に寄せられる「質問」から作る

接待・贈答ルールの教材でつまずきやすいのは、法令の条文や規程の章立てを頭から順に解説する構成から作り始めてしまうパターンです。条文の順番は、担当者が迷う順番とは一致しません。まずは、法務やコンプライアンスの窓口に繰り返し寄せられる質問を書き出すところから始めてください。教材の題材はすべてここから出てきます。

窓口の担当者に、繰り返し出る質問を聞く — 「取引先から季節の贈答品が届いたが、受け取ってよいか」「役所の担当者との打ち合わせに手土産を持っていってよいか」「取引先の会食に招かれたが、費用はどうするか」「海外の現地で、手続きを早めるための支払いを求められた」「代理店から手数料を上げてほしいと言われた」。多くの会社で、似た質問が繰り返し出てきます。件数の多いものから 3 つか 4 つで十分です。誰が質問したかは記録せず、場面と迷った点だけを残してください。

1 本目は共通の考え方に絞る — 法令の仕組みや規程の条文を網羅的に説明する構成にすると、長くなり、どこが自分に関係するのかが伝わりません。まずは、接待・贈答・便宜は相手・目的・中身を記録に残す/実施する前に決められた申請を出す/公務員や公的機関の職員が相手のときは特に慎重にする/見返りを期待させる提供も受け取りもしない/迷ったら実施する前に窓口へ聞く――この五つだけで 1 本にすると、部署を問わずそのまま渡せます。申請の詳細や海外向けの注意は、そのあとに別の本で足していけば十分です。

「渡す側」と「受け取る側」の両方を場面で見せる — 接待・贈答の教材は、営業が渡す側の話になりがちですが、調達・購買のように受け取る側で迷う人も少なくありません。営業が取引先との会食を計画する場面、調達の担当者のもとに取引先から贈答品が届く場面、許認可の担当が役所の担当者と打ち合わせる場面、海外担当が現地で支払いを求められる場面――といった場面を短い寸劇や図で示し、その場で「記録する」「申請する」「受け取ったら報告する」「迷ったら窓口へ」がどう当てはまるかを順に追ってください。場面は教材用に作った架空のものを使い、実在の取引先や案件が特定されないようにします。

「してはいけないこと」と同じ重さで「手続きと断り方」を見せる — 禁止事項だけを並べると、受け取る側は「取引先との会食は一切しないほうが無難」と構えてしまい、通常の商談まで止まりかねません。実施する前にどの様式を誰に出すのか、承認はいつまでに出るのか、受け取ってしまった贈答品はどこへ報告し、返す場合はどうするのかを、窓口の名前を入れて具体的に示してください。あわせて、相手との関係を損なわずに断るときの言い方の例――「社の決まりで、事前に申請が必要なものですので」のような一言――を用意しておくと、教材が「萎縮させるためのもの」ではなく「迷わず動くためのもの」として受け止められます。

対象で区切って短く作る — 「接待・贈答のすべて」を 1 本にまとめると、自分に関係のない話が続き、途中で止められます。「共通編(関係する役職員の全員向け)」「接待・贈答の申請と報告の手続き編」「公的機関と接する部署編」「海外拠点・海外担当編」のように区切っておくと、必要な本だけを渡せますし、規程や窓口が変わったときも差し替えが一部で済みます。ナレーションは、自分たちの声で録音する、台本から合成音声(TTS)で生成する、といった選択肢があります。窓口や様式が変わったときに一部だけ直して配り直したい場合や、海外拠点の社員や現地スタッフ向けに多言語版も用意したい場合は、台本を直せば作り直せる合成音声(TTS)が運用しやすい方式です。

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研修動画の作り方 — 6 ステップの実務ガイド

接待・贈答ルールの教材も、企画 → 台本 → スライド → ナレーション → 書き出し → 配信という基本の流れは他の研修動画と同じです。台本の書き方やナレーションの選択肢の比較は、こちらの実務ガイドに整理しています。

研修動画の作り方を読む →

セクション 4

視聴記録をどう残すか

誰がどの教材を見たかを把握しておくと、関係する部署や拠点に行き渡っているか、規程を変えたときの配り直しが届いたかを確認できます。残し方は大きく 2 つです。

動画を共有し、記録は既存の様式に残す(MP4 共有)

まず始めるなら

共有フォルダや社内ポータルに動画を置いて視聴してもらい、記録は教育記録簿や規程の確認書など、これまで使っている様式に残す運用です。追加のシステムが不要で、今の流れを変えずに始められます。動画の側では誰が視聴したかは残らないため、記録は従来の様式で押さえる形になります。営業や調達への配属時、海外赴任の前など、関係する立場に就くタイミングで視聴してもらう運用にしておくと、抜け漏れを防ぎやすくなります。

LMS で受講状況を管理する(SCORM)

証跡を集約するなら

教材を SCORM 形式で LMS(学習管理システム)に登録すると、受講者ごとの完了状況や学習時間を LMS が自動で記録します。グループ会社や海外拠点が多く、部署や拠点ごとに、どこまで行き渡ったかを一覧で確認したい場合に向きます。無料・オープンソースの LMS もあり、まずは小さく試すこともできます。毎年の再受講を求める場合も、受講した年ごとの記録をまとめて確認できます。

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SCORM 1.2 入門ガイド

受講記録を残すうえで避けて通れないのが SCORM 規格です。SCORM とは何か、なぜ重要か、対応 LMS、書き出しの流れまでをまとめた入門ガイドをご用意しています。サンプル SCORM 1.2 パッケージも無料でダウンロードできます。

SCORM 1.2 入門ガイドを読む →

セクション 5

つまずきやすいポイント

接待・贈答ルールの研修を動画にするときに引っかかりやすい点を、先回りして 5 つ挙げておきます。

条文の解説で終わらせない — 贈賄にあたる相手や行為の範囲を法令の言葉で細かく説明しても、受け取る側に残るのは「難しい」という印象だけになりがちです。教材の目的は、担当者が迷ったときに実施する前に止まり、窓口へ聞けるようになることです。法令の仕組みは必要な範囲で触れるにとどめ、時間の多くは場面と手続きと相談先に使ってください。

「ここまでなら大丈夫」を教材で独自に言い切らない — 接待や贈答がどこから問題になるかは、相手が誰か、時期、目的、頻度などによって判断が分かれます。教材の中で独自に線を引くと、規程と教材の二つの正本ができ、教材に載っていない場面で「これくらいなら大丈夫だろう」という思い込みを生むおそれもあります。金額の目安などを示す場合は規程の定めをそのまま引き、判断の中身は法務部門と専門家の確認を経た規程に置いてください。

受け取る側の教材を忘れない — 渡す側の注意だけを扱うと、取引先から贈答品や招待を受けた調達・購買の担当者が、どうすればよいか分からないまま残ります。受け取ったときに報告する先、返すときの手順と添える一言、断りにくい場面で上司や窓口につなぐ流れを、受け取る側の場面として別に扱うと、取引の公正さを保つ教材になります。

実在の取引先や案件を題材にしない — 説明を分かりやすくしようとして、過去の実際の接待や取引、社内の出来事を例に使うと、教材そのものが取引先の情報や社内の事情を広げることになりかねません。場面は教材用の架空の会社・架空の案件で作り、書き出す前に、実在の社名や人名、社内の申請画面や資料が写り込んでいないかを確認してください。

規程や窓口が変わったら教材も差し替える — 申請の様式が変わった、承認者が変わった、金額の目安を見直した、海外の代理店を起用するときの確認の手順を足した――このとき教材だけが以前の内容のまま残ると、見た人は古い手続きで動いてしまいます。自社の手続きを扱う本には、いつ時点の内容かを画面に入れておき、規程を変える側から教材の担当に伝わる流れを決めてください。差し替えたら旧版は共有場所から下げ、どの版を見ればよいかが分かる状態にしておきます。

セクション 6

よくある質問

海外で事業をしていない会社でも、この研修は必要ですか?
本ガイドでは判断できません。海外の事業がなくても、入札や許認可などで公的機関の職員と接する場面はありますし、取引先が独自の接待・贈答のルールを定めていて、それに沿った対応を求められることもあります。自社にとってどの範囲の教育が必要かは、業種や取引先との関係によって異なりますので、法務部門や弁護士など所管の専門家にご確認ください。
「コンプライアンス研修」や「インサイダー取引防止」の教材とは、どう使い分けますか?
扱う範囲が違います。独占禁止法や下請法などを含む全社のコンプライアンス教育の全体像を扱うのが「コンプライアンス研修を動画で実施するには」、業務で知った未公表の情報と株式の売買の関係を扱うのが「インサイダー取引防止の研修を動画で実施するには」です。本ガイドは、接待・贈答・便宜の提供と受け取り――記録する、事前に申請する、迷ったら聞く――に絞った位置づけです。全社のコンプライアンス教育の中の 1 本として、本ガイドの共通編を組み込む形も取れます。
お中元やお歳暮など、慣習になっている贈答はどう扱えばよいですか?
慣習としての贈答をどこまで認めるか、受け取ったものをどう扱うかは、会社の規程によって異なり、本ガイドでは判断できません。教材では、自社の規程で定めている扱い――贈る前の申請の要否、受け取ったときの報告先、返す場合の手順――をそのまま示し、迷ったときは窓口へ、という流れにとどめてください。取引先の側で受け取りを辞退する決まりがある場合もあるため、贈る前に相手の方針を確かめる手順を入れておく会社もあります。
海外拠点の社員や現地の代理店にも同じ教材を使えますか?
そのままでは届きにくい部分があります。接待や贈答に関わる言葉は、国や地域によって受け止め方が異なり、訳語の選び方によって意味がずれやすいところです。字幕を用意する、多言語版を作る、手続きの流れは図で示す、窓口の連絡先は画面に文字で出す、といった工夫が有効です。海外拠点では現地の法令が別に適用される場合もあり、代理店などの社外の相手に何をどこまで求めるかは契約の扱いにも関わりますので、所管の専門家にご確認ください。合成音声(TTS)で作っておくと、台本を訳して同じ構成の多言語版を用意しやすくなります。
すでに渡してしまった、受け取ってしまったあとで「まずかったかもしれない」と気づいた社員がいる場合も、教材で対応できますか?
教材で示せるのは、気づいたら早めに窓口へ相談する、相談先はここ、という流れと窓口の名前までです。すでに起きた事案への対応は個別の判断が必要ですので、法務部門や弁護士など所管の専門家にご確認ください。社内の通報窓口の案内とあわせて示しておくと、相談の入口が分かりやすくなります。教材を配る前に、自分から相談した人をどう扱うかを自社の方針として整理しておくと、教材が実際に使われやすくなります。
どこから作ればよいですか?
まず、法務やコンプライアンスの窓口に寄せられる質問を書き出してみてください。自社で多い迷いが見えます。1 本目は、接待・贈答・便宜は相手・目的・中身を記録に残す/実施する前に決められた申請を出す/公務員や公的機関の職員が相手のときは特に慎重にする/見返りを期待させる提供も受け取りもしない/迷ったら実施する前に窓口へ聞く――という共通の考え方に絞ると、関係する役職員の誰にでも配れる教材になります。次に「接待・贈答の申請と報告の手続き編」、そして公的機関や海外と接する部署向けの本を足していくと、実際に必要な形になります。すべてを一度に作ろうとすると完成しないまま止まりがちです。

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