反社会的勢力の排除の研修を動画で実施するには
取引開始時の確認と、不当な要求を受けたときの相談の流れを全社に同じ内容で届ける進め方
反社会的勢力の排除は、多くの会社で「方針も契約書の条項もあるが、現場の一人ひとりが何をすればよいかは伝わっていない」領域です。基本方針を掲げ、契約書に条項を入れていても、実際に判断を迫られるのは目の前の場面です。新しい取引先と契約する前に何を確かめるのか、受付や電話で強い口調の要求を受けたときにその場で何を言えばよいのか、取引先の様子に違和感を覚えたら誰に伝えればよいのか――その答えが担当者ごとにばらばらだと、担当者ひとりが抱え込み、その場で約束をしてしまうことにもなりかねません。その答えを、担当者ひとりで抱えず組織で対応するという共通の考え方と、取引を始める前の確認・不当な要求を受けたときの初動と報告先を、全社に同じ内容で届けて記録に残す ための進め方を整理します。総務・法務部門の教育担当者の方向けに、動画にできる部分とできない部分の切り分け、社内の実際の質問から作る手順、構成時の注意点、視聴記録の残し方までを実務目線でまとめました。
所要時間:7 分 / 最終更新:2026 年 10 月
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セクション 1
なぜ反社会的勢力の排除の研修を動画にするのか
反社会的勢力の排除は、方針や規程を配るだけでは「自分の仕事のどの場面で関係するのか」が伝わりにくい領域です。動画にしておくと扱いやすくなる理由は、次の 3 つです。
その場での振る舞いは、文章より映像のほうが伝わる
「不当な要求には応じない」「組織として対応する」と書かれても、受付や電話で実際に強い要求を受けた瞬間に何を言い、どこへつなげばよいかは、文章だけでは掴みにくいものです。即答を避ける一言、ひとりで会わずに上司や窓口へつなぐ流れ、やり取りを記録する手順――典型的な場面を順に示し、その場の振る舞いを見せられる点が、動画の効きやすいところです。
営業にも購買にも受付にも、同じ内容を渡せる
反社会的勢力の排除に関わるのは、総務や法務だけではありません。新しい取引先と契約する営業や購買、不当な要求を受けやすい受付・店舗・電話窓口、工事や物件に関わる現場の担当もいます。部署ごとに口頭で補足すると、伝わる中身が人によって変わります。共通の考え方を同じ動画で届けておけば、誰が加わっても同じ説明から始められます。
規程や窓口が変わるたびに配り直せる
取引開始時の確認の手順、契約書の条項の扱い、報告先の部署や担当者、社外の相談先との連携の方法などは、見直しが入ることがあります。そのたびに全員を集め直すより、変わった部分を扱う本だけを差し替えて配り直すほうが、手間も伝わり方も整えやすくなります。入社時や異動時、毎年の再受講に同じ教材を使えるのも動画の利点です。
※ 本ガイドは、反社会的勢力の排除にまつわる社内の方針と手続きの周知を動画教材として運用する方法を整理するものであり、教材が法令や条例で求められる要件を満たすことや、特定の相手が反社会的勢力にあたるかどうかを示すものではありません。企業の取り組みについては政府の指針が示されているほか、各都道府県の暴力団排除条例に事業者に関わる定めがあり、その内容は都道府県によって異なります。規程の内容や運用、取引の可否や個別の事案については、自社の法務部門や、弁護士・警察・各地の暴力追放運動推進センターなどの相談先にご確認ください。
セクション 2
扱う内容の種類と動画化の相性
「反社会的勢力の排除の研修」とひとことで言っても、その中身は、全社に共通する考え方から、取引開始時の確認の手続き、不当な要求を受けやすい窓口向けの初動、相手が該当するかどうかの判断まで幅があります。動画化との相性は内容によって大きく変わるため、まずどこを動画にするかを切り分けると、作る本数も更新の手間も見通しが立ちます。
| 扱う内容 | 変わりやすさ | 動画化との相性 | 進めるときのポイント |
|---|---|---|---|
| 共通の考え方(反社会的勢力とは取引を含めて一切の関係を持たない/不当な要求には応じず、その場で約束しない/担当者ひとりで抱えず組織で対応する/違和感を覚えたら早めに報告する) | 変わりにくい | 全社に同じ内容を届ける用途に向く | 1 本目はここから。部署を問わずそのまま渡せる |
| 取引開始時の手続き(新しい取引先の確認の流れ、契約書の条項や確認書の扱い、確認の記録の残し方、確認で気になる点が出たときの相談先) | 規程の見直しや 窓口の変更で変わる | 向く。手続きの流れを順に見せられる | 考え方の本と別にし、営業・購買など契約に関わる部署に渡す |
| 不当な要求を受けやすい窓口向けの初動(受付・店舗・電話での受け答え、即答しない一言、ひとりで会わない、記録の取り方、上司と窓口への報告の流れ) | 窓口の体制や 報告先で変わる | 向く。ただし対象を窓口ごとに絞る | 全社向けとは別の本にし、該当する窓口の担当だけに渡す |
| ある相手が反社会的勢力にあたるかどうか、取引を断るか・契約を解除するかの判断、すでに起きた事案への対応、警察などとの個別の連携 | 事案ごとに違う | 動画で決めるものではない | 教材では報告先と流れだけを示し、判断は法務部門と専門家へ |
※ 何をどこまで教材に載せるか、どの範囲の人を対象とするかは、業種、取引の形、店舗や窓口の有無、自社の規程の定めによって異なり、本ガイドでは判断できません。教材に書いたことがそのまま規程として効力を持つわけでもありません。規程として定める場合の内容と手続きは、自社の法務部門や所管の専門家にご確認ください。
セクション 3
実務の進め方 — 社内に実際に寄せられる「質問」から作る
反社会的勢力の排除の教材でつまずきやすいのは、基本方針や条例の条文を頭から順に解説する構成から作り始めてしまうパターンです。方針の文面の順番は、担当者が迷う順番とは一致しません。まずは、総務や法務の窓口に繰り返し寄せられる質問を書き出すところから始めてください。教材の題材はすべてここから出てきます。
窓口の担当者に、繰り返し出る質問を聞く — 「新しい取引先と契約する前に、何を確かめればよいか」「確認の結果が分からないまま契約の期日が来てしまう」「電話で強い口調の要求を受けたが、その場でどう答えればよいか」「取引先の担当者の言動に違和感があるが、誰に伝えればよいか」「契約書の条項について相手から削ってほしいと言われた」。多くの会社で、似た質問が繰り返し出てきます。件数の多いものから 3 つか 4 つで十分です。誰が質問したかは記録せず、場面と迷った点だけを残してください。
1 本目は共通の考え方に絞る — 方針の背景や条例の仕組みを網羅的に説明する構成にすると、長くなり、どこが自分に関係するのかが伝わりません。まずは、反社会的勢力とは取引を含めて関係を持たない/不当な要求には応じず、その場で約束しない/担当者ひとりで抱えず組織で対応する/違和感を覚えたら早めに報告する/迷ったら窓口へ聞く――この五つだけで 1 本にすると、部署を問わずそのまま渡せます。取引開始時の手続きや窓口向けの初動は、そのあとに別の本で足していけば十分です。
「その場で約束しない・ひとりで会わない・記録する・すぐ報告する」を場面で見せる — 教材の中心は、方針の説明よりも、その場での振る舞いです。受付で面会を強く求められる場面、電話で金銭や便宜を求められる場面、営業が新しい取引先と契約の準備を進める場面、現場で取引先の関係者から無理な要求を受ける場面――といった場面を短い寸劇や図で示し、その場で即答を避ける一言、上司や窓口へつなぐ流れ、日時・相手・やり取りの内容を残す手順がどう当てはまるかを順に追ってください。場面は教材用に作った架空のものを使い、実在の団体や人物、取引先が特定されないようにします。
禁止事項と同じ重さで「報告の流れ」と「会社が守る」ことを示す — 「関係を持ってはいけない」「応じてはいけない」だけを並べると、受け取る側は、要求を受けた自分が責められるのではないかと構え、報告をためらいかねません。報告はどこへ、どの手段で、何を伝えればよいのか、報告を受けた側がどう動くのかを、窓口の名前を入れて具体的に示してください。あわせて、要求を受けた担当者をひとりにしないこと、必要に応じて会社として社外の相談先と連携することを示しておくと、教材が「怖がらせるためのもの」ではなく「迷わず報告できるためのもの」として受け止められます。
対象で区切って短く作る — 「反社会的勢力の排除のすべて」を 1 本にまとめると、自分に関係のない話が続き、途中で止められます。「共通編(全社向け)」「取引開始時の確認と契約の手続き編」「受付・店舗・電話窓口の初動編」「管理職向けの報告の受け方編」のように区切っておくと、必要な本だけを渡せますし、規程や窓口が変わったときも差し替えが一部で済みます。ナレーションは、自分たちの声で録音する、台本から合成音声(TTS)で生成する、といった選択肢があります。窓口や手続きが変わったときに一部だけ直して配り直したい場合や、外国籍の社員向けに多言語版も用意したい場合は、台本を直せば作り直せる合成音声(TTS)が運用しやすい方式です。
研修動画の作り方 — 6 ステップの実務ガイド
反社会的勢力の排除の教材も、企画 → 台本 → スライド → ナレーション → 書き出し → 配信という基本の流れは他の研修動画と同じです。台本の書き方やナレーションの選択肢の比較は、こちらの実務ガイドに整理しています。
研修動画の作り方を読む →セクション 4
視聴記録をどう残すか
誰がどの教材を見たかを把握しておくと、全社や関係する窓口に行き渡っているか、規程を変えたときの配り直しが届いたかを確認できます。残し方は大きく 2 つです。
動画を共有し、記録は既存の様式に残す(MP4 共有)
まず始めるなら共有フォルダや社内ポータルに動画を置いて視聴してもらい、記録は教育記録簿や規程の確認書など、これまで使っている様式に残す運用です。追加のシステムが不要で、今の流れを変えずに始められます。動画の側では誰が視聴したかは残らないため、記録は従来の様式で押さえる形になります。入社時や、営業・購買・窓口の担当に就くタイミングで視聴してもらう運用にしておくと、抜け漏れを防ぎやすくなります。
LMS で受講状況を管理する(SCORM)
証跡を集約するなら教材を SCORM 形式で LMS(学習管理システム)に登録すると、受講者ごとの完了状況や学習時間を LMS が自動で記録します。拠点や店舗が多く、部署や拠点ごとに、どこまで行き渡ったかを一覧で確認したい場合に向きます。無料・オープンソースの LMS もあり、まずは小さく試すこともできます。毎年の再受講を求める場合も、受講した年ごとの記録をまとめて確認できます。
SCORM 1.2 入門ガイド
受講記録を残すうえで避けて通れないのが SCORM 規格です。SCORM とは何か、なぜ重要か、対応 LMS、書き出しの流れまでをまとめた入門ガイドをご用意しています。サンプル SCORM 1.2 パッケージも無料でダウンロードできます。
SCORM 1.2 入門ガイドを読む →セクション 5
つまずきやすいポイント
反社会的勢力の排除の研修を動画にするときに引っかかりやすい点を、先回りして 5 つ挙げておきます。
怖がらせる演出にしない — 不当な要求の場面を迫力のある寸劇で見せると、印象には残っても、見た人に残るのは「関わりたくない」という気持ちだけになりがちです。そうなると、違和感を覚えても報告せずにやり過ごす人が出かねません。教材の目的は、その場で即答せず、ひとりで抱えず、すぐに報告できるようになることです。場面は落ち着いたトーンで短く示し、時間の多くは振る舞いの手順と報告の流れに使ってください。
「見分け方」を教材で言い切らない — 相手が反社会的勢力にあたるかどうかは、外見や話し方で担当者が判断できるものではなく、会社として確認の手順を踏み、必要に応じて社外の相談先と連携して判断するものです。教材の中で独自の「見分け方」を示すと、偏見を生んだり、当てはまらない相手を見逃したりするおそれがあります。教材では、違和感を覚えたら報告する、確認は決められた手順で行う、という流れにとどめてください。
取引開始時の確認を「形だけ」にしない — 確認の手順が「様式に記入して終わり」と伝わると、期日に追われて確認の結果を待たずに契約が進むことがあります。確認が済むまで契約や発注を進めないこと、確認で気になる点が出たら担当者の判断で進めず窓口へ相談することを、営業・購買向けの本で場面として示してください。確認に使う社内の画面や資料をそのまま映さず、教材用の図に置き換えることも忘れないでください。
実在の団体や事件を題材にしない — 説明を分かりやすくしようとして、報道された実際の事件や、社内で過去に起きた出来事を例に使うと、教材そのものが特定の人や会社を名指しすることになりかねません。場面は教材用の架空の会社・架空の人物で作り、書き出す前に、実在の名称や人名、社内の資料が写り込んでいないかを確認してください。
規程や窓口が変わったら教材も差し替える — 報告先の部署が変わった、確認の手順を見直した、契約書の条項を改めた――このとき教材だけが以前の内容のまま残ると、見た人は古い窓口に報告し、古い手順で動いてしまいます。自社の手続きを扱う本には、いつ時点の内容かを画面に入れておき、規程を変える側から教材の担当に伝わる流れを決めてください。差し替えたら旧版は共有場所から下げ、どの版を見ればよいかが分かる状態にしておきます。
セクション 6
よくある質問
取引先に心当たりのない会社でも、この研修は必要ですか?
「コンプライアンス研修」や「カスタマーハラスメント研修」の教材とは、どう使い分けますか?
不当な要求を受ける場面を、寸劇で見せてもよいですか?
外国籍の社員や、店舗のパート・アルバイトの方にも同じ教材を使えますか?
すでに取引のある相手について気になる情報が出てきた場合も、教材で対応できますか?
どこから作ればよいですか?
ご紹介
全社向けの周知教材づくりに使えるツールのご紹介
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