HARMONIC insight
🧭 実務ガイド

労働時間・勤怠の記録ルールの教育を動画で実施するには
打刻・残業の申請・休憩の取り方を、新人にも中途入社の人にも同じ内容で届ける進め方

勤怠の決まりは、どの職場でも毎日使うのに、きちんと教わる機会の少ない領域です。入社初日に勤怠システムのログイン方法だけを案内され、着替えの前と後のどちらで打刻するのか、残業はいつまでに誰へ申請するのか、休憩が取れなかった日はどう記録するのか、打刻を忘れたらどう直すのかは、隣の席の先輩に聞いて覚える――という形になりがちです。前の職場のやり方を持ち込む中途入社の人ほど、自社の決まりとの違いに気づきにくく、月末の締めの時期には同じ問い合わせが人事に何度も寄せられます。この、実際に働いた時間をそのまま記録に残すという共通の考え方と、自社の打刻・申請・修正の手続きを、働く全員に同じ内容で届けて記録に残す ための進め方を整理します。人事労務・総務の教育担当者の方向けに、動画にできる部分とできない部分の切り分け、実際の問い合わせから作る手順、撮影・構成時の注意点、視聴記録の残し方までを実務目線でまとめました。

所要時間:7 分 / 最終更新:2026 年 10 月

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セクション 1

なぜ勤怠の記録ルールの教育を動画にするのか

勤怠の決まりは、就業規則や勤怠システムの操作マニュアルに書かれていても、読まれないまま使われ始めることがほとんどです。動画にしておくと扱いやすくなる理由は、次の 3 つです。

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決まりは「一日の流れ」の中で見せると伝わる

「始業時刻に打刻する」と書かれていても、出社してから着替え、朝礼、作業の準備と進む一日のどこが始業にあたるのかは、職場によって違います。出社から退勤までの流れを画面で追い、その途中で打刻・休憩・申請がどこに入るかを示せる点が、動画の効きやすいところです。勤怠システムの画面操作も、実際の画面を見ながらのほうが迷いが減ります。

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入社の時期も前の職場も違う全員に、同じ内容を渡せる

新卒は一斉に入社しますが、中途入社やパート・アルバイトの人は時期がばらばらで、そのたびに担当者が口頭で説明すると、人によって伝わる中身が変わります。前の職場のやり方に慣れた人ほど「このくらいは同じだろう」と思い込みやすい領域でもあります。入社手続きの流れの中で同じ動画を見てもらえば、誰が入っても同じ説明から始められます。

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制度もシステムも、変わるたびに配り直せる

勤怠システムの入れ替え、シフト制度や在宅勤務の決まりの見直し、申請の締め日の変更など、勤怠の決まりは数年ごとに何かしら変わります。説明会を開き直して全員を集めるより、変わった部分を扱う本だけを差し替えて配り直すほうが、手間も伝わり方も整えやすくなります。

※ 本ガイドは、勤怠の記録にまつわる社内ルールの周知を動画教材として運用する方法を整理するものであり、教材が法令で求められる要件を満たすことや、どの時間が労働時間にあたるかを示すものではありません。労働時間の範囲、休憩・残業・休日の扱い、労働時間の把握と記録の方法には法令や行政のガイドラインの定めがあり、自社の就業規則・労使協定・雇用形態によっても扱いが異なるため、個別の判断が必要です。規程の内容や運用については、自社の人事部門や、社労士など所管の専門家にご確認ください。

セクション 2

扱う内容の種類と動画化の相性

「勤怠の教育」とひとことで言っても、その中身は、働く人の誰にでも共通する考え方から、自社の勤怠システムの操作、職場ごとのシフトや休憩の決まり、個別の労働時間や賃金の判断まで幅があります。動画化との相性は内容によって大きく変わるため、まずどこを動画にするかを切り分けると、作る本数も更新の手間も見通しが立ちます。

扱う内容変わりやすさ動画化との相性進めるときのポイント
実際に働いた時間をそのまま記録に残すという共通の考え方(打刻と実際の始業・終業がずれたら申告する、残業は事前に申請する、休憩が取れなかった日はそのまま記録する、打刻の漏れや誤りは決められた手続きで直す、分からないときは締めの前に聞く)変わりにくい全員に同じ内容を届ける用途に向く1 本目はここから。雇用形態や部署を問わずそのまま渡せる
自社の勤怠システムの操作と締めの流れ(打刻の方法、申請と承認の画面、修正の申請、締め日と確定の流れ)システムの入れ替えや 設定の変更で変わる向く。画面を見せられる点が強い考え方の本と別にし、システムが変わったらこの本だけ差し替える
職場ごとのシフト・休憩・在宅勤務や直行直帰の決まり(交代のときの打刻、休憩の取り方と場所、移動時間の扱いの社内ルール)職場や 制度の見直しで変わる向く。ただし対象を職場ごとに絞る全社向けとは別の本にし、該当する職場だけに渡す
個別の労働時間・賃金の判断、労使協定の内容、長時間労働への対応、記録と実態が食い違っている事案事案ごとに違う動画で決めるものではない教材では相談先と流れだけを示し、判断は所管部門と専門家へ

※ 何をどこまで教材に載せるか、どの範囲の人を対象とするかは、業種、勤務の形、雇用形態、自社の就業規則や労使協定の定めによって異なり、本ガイドでは判断できません。教材に書いたことがそのまま規程として効力を持つわけでもありません。規程として定める場合の内容と手続きは、自社の人事部門や所管の専門家にご確認ください。

セクション 3

実務の進め方 — 締めの時期に寄せられる「問い合わせ」から作る

勤怠の教材でつまずきやすいのは、就業規則の労働時間の章を頭から順に読み上げる構成から作り始めてしまうパターンです。条文の順番は、働く人が迷う順番とは一致しません。まずは、人事や勤怠の担当者のもとに、締めの時期に繰り返し寄せられる問い合わせと差し戻しを書き出すところから始めてください。教材の題材はすべてここから出てきます。

勤怠の担当者と現場の責任者に、繰り返し出る問い合わせを聞く — 「打刻を忘れた日はどう直すのか」「残業の申請を出し忘れたまま帰ってしまった」「休憩が取れなかった日はどう入力するのか」「着替えや朝礼は打刻の前か後か」「直行した日の打刻はどうするのか」。多くの職場で、似た問い合わせが毎月のように出てきます。件数の多いものから 3 つか 4 つで十分です。誰が問い合わせたかは記録せず、場面と迷った点だけを残してください。

1 本目は共通の考え方に絞る — 勤怠システムの全機能を順に説明する構成にすると、長くなり、どこが大事かが伝わりません。まずは、打刻と実際の始業・終業がずれたら申告する/残業は事前に申請する/休憩が取れなかった日はそのまま記録する/打刻の漏れや誤りは決められた手続きで直す/分からないときは締めの前に聞く――この五つだけで 1 本にすると、どの職場の誰にでもそのまま渡せます。システムの操作や職場ごとの決まりは、そのあとに別の本で足していけば十分です。

一日の流れと画面を並べて見せる — 勤怠の教材で効くのは、自分の一日に重ねて見られることです。出社から退勤までを時刻つきの図で示し、打刻・休憩・残業の申請がどこに入るかを順に追ったうえで、その場面で開く勤怠システムの画面を横に並べてください。画面を映す場合は、教材用の架空の社員と架空の打刻データを用意し、実在の社員の氏名や勤務記録が写らないようにします。

「正しく記録する」と同じ重さで「直し方と聞き方」を見せる — 打刻の漏れや申請の出し忘れは誰にでも起こります。教材が「間違えないように」だけを繰り返すと、間違えた人は黙って記録を合わせようとします。修正の申請をどの画面から誰に出すのか、締めに間に合わなかったときはどうするのか、迷ったときは誰に聞けばよいのかを、窓口の名前を入れて具体的に示してください。あわせて、決められた時間を超えて働きそうなときや、休憩が取れない日が続くときに上長や人事へ伝える流れも扱うと、教材が「記録をそろえるためのもの」ではなく「実態を伝えるためのもの」として受け止められます。

場面で区切って短く作る — 「勤怠のすべて」を 1 本にまとめると、自分に関係のない話が続き、途中で止められます。「共通編(働く全員向け)」「勤怠システムの操作編」「打刻を直すとき・申請を出し忘れたとき編」「シフト勤務の職場編」「承認する管理職編」のように区切っておくと、必要な本だけを渡せますし、制度やシステムが変わったときも差し替えが一部で済みます。ナレーションは、自分たちの声で録音する、台本から合成音声(TTS)で生成する、といった選択肢があります。締め日や画面が変わったときに一部だけ直して配り直したい場合や、日本語が母語でない方が働く職場で多言語版も用意したい場合は、台本を直せば作り直せる合成音声(TTS)が運用しやすい方式です。

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研修動画の作り方 — 6 ステップの実務ガイド

勤怠の記録ルールの教材も、企画 → 台本 → スライド → ナレーション → 書き出し → 配信という基本の流れは他の研修動画と同じです。台本の書き方やナレーションの選択肢の比較は、こちらの実務ガイドに整理しています。

研修動画の作り方を読む →

セクション 4

視聴記録をどう残すか

誰がどの教材を見たかを把握しておくと、入社した全員に行き渡っているか、制度やシステムを変えたときの配り直しが届いたかを確認できます。残し方は大きく 2 つです。

動画を共有し、記録は既存の様式に残す(MP4 共有)

まず始めるなら

共有フォルダや社内ポータルに動画を置いて視聴してもらい、記録は入社時の書類や教育記録簿など、これまで使っている様式に残す運用です。追加のシステムが不要で、今の流れを変えずに始められます。動画の側では誰が視聴したかは残らないため、記録は従来の様式で押さえる形になります。勤怠システムの初回ログインと同じ日に視聴してもらい、入社手続きの書類に「視聴した日」を記入してもらう運用にしている職場もあります。

LMS で受講状況を管理する(SCORM)

証跡を集約するなら

教材を SCORM 形式で LMS(学習管理システム)に登録すると、受講者ごとの完了状況や学習時間を LMS が自動で記録します。拠点や店舗が多く、入社の時期も雇用形態もばらばらな中で、どこまで行き渡ったかを一覧で確認したい場合に向きます。無料・オープンソースの LMS もあり、まずは小さく試すこともできます。なお、研修の受講時間そのものを労働時間としてどう扱うかは自社の決まりによりますので、受講を勤務時間内とするかどうかは先に整理しておいてください。

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SCORM 1.2 入門ガイド

受講記録を残すうえで避けて通れないのが SCORM 規格です。SCORM とは何か、なぜ重要か、対応 LMS、書き出しの流れまでをまとめた入門ガイドをご用意しています。サンプル SCORM 1.2 パッケージも無料でダウンロードできます。

SCORM 1.2 入門ガイドを読む →

セクション 5

つまずきやすいポイント

勤怠の記録ルールの教育を動画にするときに引っかかりやすい点を、先回りして 5 つ挙げておきます。

「記録を整える」ことを求める教材にしない — 教材の目的は、実際に働いた時間が記録に残ることです。「残業は月に何時間まで」「定時で打刻するように」といった伝え方をすると、受け取る側には「実態と違っても記録を合わせる」ことを求められたように聞こえるおそれがあります。働いた時間はそのまま記録し、上限を超えそうなときは早めに上長へ伝える、という順番で示してください。上限の管理は、記録の段階ではなく、仕事の配分の段階で行うものとして扱います。

どの時間が労働時間かを教材で言い切らない — 着替え、朝礼、作業前の準備、移動、待機など、どこからどこまでを労働時間として扱うかは、業務の実態や法令の考え方、自社の決まりによって判断が分かれます。教材の中で独自に線を引くと、規程と教材の二つの正本ができてしまいます。教材は「自社ではこう決めている、詳しくは就業規則のここ、迷ったらこの窓口」という示し方にとどめ、判断の中身は所管部門と専門家の確認を経た規程に置いてください。

管理職向けを別に作る — 打刻や申請は働く本人の話ですが、承認や差し戻し、実態とずれた記録に気づいたときの対応は管理職の役割です。管理職にも共通編を見てもらったうえで、承認の画面、差し戻すときの伝え方、部下の記録と実態が食い違っていそうなときの相談先を扱う本を別に用意すると、本人向けの教材と食い違いません。

実在の勤務記録や画面をそのまま映さない — 操作説明のために本番の勤怠システムを撮影すると、実在の社員の氏名、勤務時間、休暇の取得状況などが写り込むことがあります。勤務記録は個人に関わる情報です。教材用の架空の社員と架空のデータを用意した環境で画面を撮り、書き出す前に写り込みがないかを確認してください。

制度やシステムが変わったら教材も差し替える — 勤怠システムを入れ替えた、締め日を変えた、シフトや在宅勤務の決まりを見直した、修正申請の窓口が移った――このとき教材だけが以前の内容のまま残ると、見た人は存在しない画面や窓口を探すことになります。自社の決まりを扱う本には、いつ時点の内容かを画面に入れておき、制度を変える側から教材の担当に伝わる流れを決めてください。差し替えたら旧版は共有場所から下げ、どの版を見ればよいかが分かる状態にしておきます。

セクション 6

よくある質問

着替えや朝礼の時間を労働時間として扱うかどうかも、教材で説明すべきですか?
本ガイドでは判断できません。どの時間が労働時間にあたるかは、その時間の実態や法令の考え方、自社の就業規則の定めによって判断が分かれ、個別の確認が必要です。実務では、自社としてどう扱っているかを規程に定め、教材では「自社ではこう決めている、根拠は就業規則のこの部分、迷ったらこの窓口」と示す形が取りやすい方法です。扱いを決める段階では、人事部門や社労士など所管の専門家にご確認ください。
「育児・介護休業制度」の教材とは、どう使い分けますか?
扱う範囲が違います。育児休業や介護休業など、休むための制度とその申出の流れを扱うのが「育児・介護休業制度の周知を動画で行うには」です。本ガイドは、働いた日の時間の記録――打刻、残業や休日出勤の申請、休憩、記録の修正――に絞った位置づけです。休暇や休業の申請も同じ勤怠システムで行う職場では、システムの操作編を共通にして、制度の説明はそれぞれの本に分けておくと、どちらかの制度が変わったときの差し替えが一部で済みます。
パート・アルバイトや派遣の方にも同じ教材を使えますか?
共通編は、雇用形態を問わずそのまま使える内容にしておくのが扱いやすい方法です。ただし、シフトの組み方や休憩の取り方、申請の流れは雇用形態や契約によって異なることがあり、派遣の方の勤怠の扱いは派遣元との役割分担によります。対象ごとに違う部分は別の本に分け、派遣の方については所管の部門と派遣元にご確認ください。
打刻と実際に働いた時間がずれている人がいる場合も、教材で対応できますか?
教材で示せるのは、ずれに気づいたら申告する、修正の手続きはこう、相談先はここ、という流れと窓口の名前までです。すでにずれが生じている事案への対応や、過去の記録の扱い、賃金の精算は、事案ごとの判断が必要ですので、人事部門や社労士・弁護士など所管の専門家にご確認ください。教材を配る前に、ずれを申告した人が不利に扱われないことを自社の方針として整理しておくと、教材が実際に使われやすくなります。
日本語が母語でない方にも同じ教材を使えますか?
そのままでは届きにくい部分があります。勤怠の決まりは「いつ」「どこで」「誰に」の組み合わせが多く、文章で説明すると取り違えが起きやすいところです。字幕を用意する、多言語版を作る、一日の流れは時刻つきの図で示す、勤怠システムの画面は押す場所に印を入れて見せる、といった工夫が有効です。あわせて、打刻を忘れたときや申請に迷ったときに誰へ声をかければよいかを教材の中で名指ししておくと、実際に困ったときに使われます。合成音声(TTS)で作っておくと、台本を訳して同じ構成の多言語版を用意しやすくなります。
どこから作ればよいですか?
まず、勤怠の担当者のもとに締めの時期に寄せられる問い合わせと差し戻しを書き出してみてください。自社で多い迷いが見えます。1 本目は、打刻と実際の始業・終業がずれたら申告する/残業は事前に申請する/休憩が取れなかった日はそのまま記録する/打刻の漏れや誤りは決められた手続きで直す/分からないときは締めの前に聞く――という共通の考え方に絞ると、働く誰にでも配れる教材になります。次に「勤怠システムの操作編」、そして「打刻を直すとき・申請を出し忘れたとき編」を足していくと、実際に必要な形になります。すべてを一度に作ろうとすると完成しないまま止まりがちです。

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