HARMONIC insight
🧭 実務ガイド

交通安全・通勤時の事故防止の教育を動画で実施するには
「社用車に乗らない人」を含めた全員に、同じ内容で届ける進め方

社用車の運転者向けには毎年きちんと教育をしている。構内のフォークリフトについても教材がある。けれども、自転車で通う人、駅まで歩く人、自家用車で通う人――つまり大多数の従業員が毎日している移動については、朝礼で季節ごとに一言添えるだけになっている。そうした職場は少なくありません。実際に会社に報告が上がってくる事故を並べてみると、業務中の運転よりも、出勤途中・帰宅途中の移動で起きたものが目につく、という現場もあります。通勤は業務時間の外にありますが、本人が働けなくなれば職場は止まり、労災保険の制度にも通勤中の災害という区分が置かれています。この、移動手段を問わず全員に関わる交通安全と、自社の通勤の決まりを、同じ内容で届けて記録に残す ための進め方を整理します。総務・安全衛生の担当者、全社への周知を任されている方向けに、動画にできる部分とできない部分の切り分け、自社の通勤の実情から作る進め方、視聴記録の残し方、そして受け手を責めずに行動が変わる作り方までを実務目線でまとめました。特別な知識は前提としません。

所要時間:7 分 / 最終更新:2026 年 9 月

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セクション 1

なぜ通勤時の交通安全を動画にするのか

通勤時の事故は、会社が直接その場を管理できない場面で起きます。だからこそ、できることは限られている――そう考えて、掲示物を貼る、季節の運動に合わせて一斉メールを流す、という形にとどまりがちです。ただ、掲示もメールも「読まれたかどうか」が残りません。動画にする現場が増えているのは、次の 3 つの理由によります。

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対象が全従業員で、移動手段がばらばら

社用車の教育は運転者に配ればよく、構内の教育は入構する人に配ればよい。一方、通勤の交通安全は、徒歩も自転車も自家用車も公共交通機関も含めて全員が対象です。手段ごとに集合研修を分けて開けば回数が増え、一本にまとめて話せば自分に関係のない話が続きます。動画にして「共通の土台」と「手段ごとの短い本」に分けておけば、必要な組み合わせだけを各自に渡せます。

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拠点や勤務形態によって通勤の実情が違う

駅から徒歩の本社と、自家用車通勤が中心の工場や店舗では、注意すべき場面がまったく違います。早朝・深夜の勤務がある職場なら、暗い時間帯の移動や疲労の問題も加わります。同じ内容を全社で一度に話すと、どの拠点にも半分しか当てはまりません。動画なら、共通編は全社に配り、拠点ごとの事情を扱う本だけを差し替えられます。

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毎年・季節ごとに繰り返す内容である

交通安全の周知は、季節ごとの運動の時期や、年度の初め、天候が変わる時期など、年に何度も繰り返す性格のものです。そのたびに資料を作り直し、拠点ごとに話す人を立てるのは負担が大きく、回を重ねるほど内容が揺れます。動画にしておけば、変わっていない部分はそのまま使い、状況が変わった部分だけを直して配り直せます。

※ 本ガイドは通勤時の交通安全にまつわる周知を動画教材として運用する方法を整理するものであり、教育の実施義務や、法令・指針への適合を示すものではありません。実施すべき内容・対象・頻度・記録の様式は、業種や事業場の状況、通勤の手段、自社の定めによって異なります。また、通勤中に起きた事故が労災保険の制度上どう扱われるか、自家用車での通勤をどこまで認めるかといった判断は、個別の事情によって変わります。自社に何がどこまで当てはまるかは、社内の人事労務・安全衛生を担う部門、所轄の労働基準監督署、社会保険労務士、交通ルールの内容については所轄の警察署など、所管の窓口にご確認ください。

セクション 2

扱う内容の種類と動画化の相性

「交通安全の教育」とひとことで言っても、その中身は、誰にでも当てはまる共通の土台から、自社の通勤に関する決まり、拠点ごとの経路の事情、そして実際の運転技能や個別の手続きまで幅があります。動画化との相性は内容によって大きく変わるため、まずどこを動画にするかを切り分けると、作る本数も更新の手間も見通しが立ちます。

扱う内容変わりやすさ動画化との相性進めるときのポイント
共通の土台(移動手段を問わず起きやすい場面、見通しの悪い交差点や横断の場面、夕暮れ・雨天・積雪など条件が悪いときの考え方、睡眠不足や急ぎの心理が判断に与える影響)変わりにくい全員に同じ内容を届ける用途に向く1 本目はここから。拠点や職種が違っても同じものを渡せる
手段ごとの要点(自転車・自家用車・徒歩・二輪など、手段によって変わる注意点と、その手段に関するルールの調べ先)ルールの見直しで変わることがある向くが、短い本に分けておく必要がある細かいルールを列挙せず、最新は所轄の窓口で確認する導線を置く
自社の決まり(自家用車通勤を届け出る手続き、駐車場の使い方、事故や遅延が起きたときの連絡先と手順、悪天候時の出社判断)規程の改定で変わる向く。更新前提で本を分けておく土台編と別の本にし、規程が変わった本だけ差し替える
実際の運転技能の指導、自家用車通勤の可否や保険の確認といった個別の手続き、事故が起きたあとの対応、健康上の不安がある場合の相談個別の事情による面談や所管部門の対応によるものであり、動画で置き換えるものではない動画は前提の共有と窓口の案内まで。個別の判断は従来どおり

※ 何をどこまで教材に載せるか、どの範囲の人を対象とするかは、業種や事業場の状況、通勤の手段、自社の定めによって異なり、本ガイドでは判断できません。特に、自家用車通勤の可否や条件、事故が起きたときの取り扱い、労災保険の制度上の扱いについては、動画教材でその判断を示せるものではありません。社内の人事労務・安全衛生を担う部門、所轄の労働基準監督署、社会保険労務士にご確認ください。交通ルールの具体的な内容は、所轄の警察署や各都道府県警察の案内が最新です。

セクション 3

実務の進め方 — 自社の通勤の実情から作る

通勤時の交通安全の教材でつまずきやすいのは、一般的な交通安全の話をそのまま並べてしまい、「知っている話」として流されるパターンです。まずは、自社の人が実際にどう通っているかを把握するところから始めてください。教材の題材はすべてここから出てきます。

自社の通勤の実情を先に把握する — 拠点ごとに、どの手段で通う人がどれくらいいるか、駅からの経路はどうなっているか、駐車場や駐輪場の出入口はどこか、早朝・深夜に動く人がいるか。届出の情報や、拠点の担当者への聞き取りで十分です。あわせて、過去に報告が上がった通勤中の事故やヒヤリとした話を、個人が分からない形で集めておきます。ここで挙がった場面が、そのまま教材の目次になります。教材の説得力は、一般論ではなく、この把握の具体性から出ます。

1 本目は「手段を問わない土台」に絞る — 手段ごとに作り始めると本数が膨らみ、途中で止まります。まずは、事故が起きやすいのは慣れた道の交差点や横断の場面であること、夕暮れ・雨天・積雪で見え方と止まりやすさが変わること、寝不足や「遅れそう」という焦りが判断を鈍らせること――この土台だけで 1 本にすると、手段が違う人にもそのまま渡せます。手段ごとの本は、そのあとに短く足していけば十分です。

ルールの細目を教材に書き写さない — 交通ルールの内容は見直されることがあり、教材に細かく書き写すと、更新が追いつかなくなった時点で誤った情報を配り続けることになります。教材で扱うのは「どういう場面が危ないか」「迷ったときに何を見れば分かるか」までにとどめ、具体的なルールの最新の内容は所轄の警察署や各都道府県警察の案内で確認する、という導線を置いてください。自転車の扱いのように見直しが続いている分野ほど、この形が安全です。

自社の決まりと窓口をはっきり示す — 自家用車で通ってよいのか、届け出が要るのか、駐車場はどこを使うのか、事故や電車の遅れで出社できないときは誰に連絡するのか。教材を見た人が最後に知りたいのはここです。制度の説明を尽くすより、「誰に・どうやって連絡するか」を画面に残すほうが、実際に必要になった人に届きます。規程が変わりやすい部分なので、土台編とは別の本に分けておきます。

場面で区切って短く作る — 「交通安全のすべて」を 1 本にまとめると、自分に関係のない部分が続き、途中で止められます。「土台編」「自転車で通う人編」「自家用車で通う人編」「悪天候・災害時編」「うちの決まり編」のように区切っておくと、必要な本だけを渡せますし、規程が変わったときも差し替えが一部で済みます。ナレーションは、自分たちの声で録音する、台本から合成音声(TTS)で生成する、といった選択肢があります。毎年一部だけ直して配り直したい場合や、日本語が母語でない方が働く職場で多言語版も用意したい場合は、台本を直せば作り直せる合成音声(TTS)が運用しやすい方式です。通勤時間帯に各自の端末で見る人もいるため、字幕を併せて用意しておくと音を出せない場所でも視聴の妨げになりません。

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研修動画の作り方 — 6 ステップの実務ガイド

交通安全の教材も、企画 → 台本 → スライド → ナレーション → 書き出し → 配信という基本の流れは他の研修動画と同じです。台本の書き方やナレーションの選択肢の比較は、こちらの実務ガイドに整理しています。

研修動画の作り方を読む →

セクション 4

視聴記録をどう残すか

誰がどの教材を見たかを把握しておくと、全員に行き渡っているか、規程を変えたときの配り直しが届いたかを確認できます。残し方は大きく 2 つです。

動画を共有し、記録は既存の様式に残す(MP4 共有)

まず始めるなら

共有フォルダや社内ポータル、拠点の端末に動画を置いて視聴してもらい、記録は周知記録や教育記録簿など、これまで使っている様式に残す運用です。追加のシステムが不要で、今の帳票の流れを変えずに始められます。動画の側では誰が視聴したかは残らないため、記録は従来の様式で押さえる形になります。拠点数が少ない場合や、まず 1 本目を配ってみたい段階では、この形が取り回しやすいことが多い方法です。

LMS で受講状況を管理する(SCORM)

証跡を集約するなら

教材を SCORM 形式で LMS(学習管理システム)に登録すると、受講者ごとの完了状況や学習時間を LMS が自動で記録します。拠点や部署が多く、どの拠点まで行き渡ったかを一覧で確認したい場合に向きます。無料・オープンソースの LMS もあり、まずは小さく試すこともできます。ただし記録に残るのは「見たかどうか」であり、実際に安全に通えているかどうかとは別のものです。記録の様式や保存期間が社内の定めで決まっている場合は、その基準にあわせて運用を整えてください。

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SCORM 1.2 入門ガイド

受講記録を残すうえで避けて通れないのが SCORM 規格です。SCORM とは何か、なぜ重要か、対応 LMS、書き出しの流れまでをまとめた入門ガイドをご用意しています。サンプル SCORM 1.2 パッケージも無料でダウンロードできます。

SCORM 1.2 入門ガイドを読む →

セクション 5

つまずきやすいポイント

通勤時の交通安全を動画にするときに引っかかりやすい点を、先回りして 5 つ挙げておきます。

事故を起こした人・遭った人を責める作りにしない — 実際に起きた事故を題材にすると伝わりやすくなりますが、扱い方を誤ると、当事者が特定される、あるいは「本人が不注意だった」という結論だけが残ります。そうなると、次に事故に遭った人は報告をためらいます。日時・拠点・部署を細かく書かず、状況の条件だけを残してください。原因も本人の注意に帰さず、暗い時間帯だった、急いでいた、見通しが悪い交差点だった、といった条件の側を扱うと、同じ場面を通る人が自分ごととして受け取れます。教材を作る前に、当事者や所管部門の了解を得ておくと後で揉めません。

私生活に踏み込みすぎない — 通勤は業務時間の外にあり、経路の選び方も、私有車の使い方も、本来は本人の領分です。「何時に寝るべきか」「どの道を通るべきか」まで教材で指示すると、押しつけと受け取られ、肝心の部分まで読まれなくなります。会社として求めるのは、自社の決まり(届け出や連絡の手順)を守ってもらうことと、危ない場面を知っておいてもらうことまで――この線引きを教材の冒頭で示しておくと、受け手の身構えが変わります。

安全と「遅れてはいけない」を同時に求めない — 急がなければ間に合わない前提があると、注意喚起だけを増やしても行動は変わりません。悪天候や交通機関の乱れで遅れたときに責められない、無理をせず遅れる判断をしてよい――この前提を会社の側から示して初めて、安全な行動が選べるようになります。教材では、遅れそうなときの連絡先と、遅れの扱いに関する自社の考え方を、注意喚起とセットで置いてください。

運転技能の指導や個別の相談を動画で置き換えない — 実際の運転が安全かどうかは、動画を見ただけでは分かりません。加齢や体調、服用している薬によって運転に不安が出ている場合も、必要なのは教材ではなく個別の相談です。教材の位置づけは「前提の共有と、相談先の案内まで」と明示し、運転技能に関する指導や、健康上の不安がある場合の対応は、産業保健スタッフや所管部門の窓口につないでください。特に、自家用車通勤の可否や保険の確認といった手続きは、教材ではなく規程と所管部門の領域です。

規程を変えたら教材も差し替える — 自家用車通勤の条件を変えた、駐車場を移した、連絡先の部署名が変わった――このとき教材だけが以前の内容のまま残ると、見た人は古い前提で動きます。何も配っていない状態より混乱します。自社の決まりを扱う本には、いつ時点の内容かを画面に入れておき、規程を変える側から教材の担当に伝わる流れを決めてください。差し替えたら旧版は共有場所から下げ、どの版を見ればよいかが分かる状態にしておきます。

セクション 6

よくある質問

通勤時の交通安全は、会社として教育する必要があるものですか?
本ガイドでは判断できません。実施すべき内容・対象・頻度・記録の様式は、業種や事業場の状況、通勤の手段、自社の定めによって異なります。実務上は、通勤中の事故が本人にも職場にも影響することから、季節の交通安全の運動の時期や年度の初めに合わせて全社に周知している会社が多く見られます。要否の判断は、社内の人事労務・安全衛生を担う部門、所轄の労働基準監督署、社会保険労務士にご確認ください。
「安全運転教育を動画で実施するには」「構内交通安全の教育を動画で実施するには」とは、どう使い分けますか?
対象と場面が違います。社用車・営業車を運転する人に向けた教育を扱うのが「安全運転教育を動画で実施するには」、工場や倉庫の構内での歩車分離やフォークリフト周辺を扱うのが「構内交通安全の教育を動画で実施するには」、そして移動手段を問わず全従業員の通勤に関わる部分を扱うのが本ガイドです。安全衛生の教育全体の枠組みと記録の揃え方は「安全衛生教育を動画で実施するには」、危険を先に見つける考え方そのものは「危険予知(KY)活動の教育を動画で実施するには」で扱っています。重なる部分は既存の教材を活かし、本ガイドの範囲では「全員が対象であること」と「自社の決まりと窓口」に絞ると、作る本数を抑えられます。
どこから作ればよいですか?
まず、拠点ごとの通勤の手段と経路の実情を把握し、1 本目は「移動手段を問わない土台」に絞って作るところから始めると、全社にそのまま配れる教材になります。次に、自社で人数の多い手段(自家用車通勤が中心の拠点なら自家用車編、駅からの徒歩が中心なら歩行者編)と、「うちの決まり編」を足していくと、実際に必要になる形になります。すべてを一度に作ろうとすると完成しないまま止まりがちです。
交通ルールの具体的な内容を教材に入れてもよいですか?
入れる場合は、範囲を絞って、確認先を併記することをおすすめします。交通ルールは見直されることがあり、教材に細かく書き写すと、更新が追いつかなくなった時点で誤った情報を配り続けることになります。教材では危ない場面の考え方までを扱い、具体的なルールの最新の内容は所轄の警察署や各都道府県警察の案内で確認する導線を置いてください。自転車に関するルールや取り締まりの扱いのように見直しが続いている分野は、特にこの形が安全です。
自家用車通勤の許可や保険の確認について、教材で扱えますか?
扱えるのは「自社に届け出の仕組みがあること」と「どこに相談すればよいか」までです。許可の可否、必要な保険の内容、事故が起きたときの取り扱いは、自社の規程と個別の事情によって決まるもので、教材で判断を示せるものではありません。所管部門の窓口を教材の中で明示し、実際の手続きはそちらに委ねてください。規程の内容そのものを教材に書き写す場合は、規程が変わったときに差し替える運用まで決めておく必要があります。
日本語が母語でない従業員にも同じ教材で足りますか?
そのままでは届きにくい部分があります。交通の決まりや標識の意味は国や地域によって違い、自転車の扱いのように、来日して初めて知る内容も含まれます。字幕を用意する、多言語版を作る、標識や場面は言葉ではなく画で示す、といった工夫が有効です。あわせて、「分からないときに聞ける相手」を教材の中で名指ししておくと、実際に迷ったときに使われます。合成音声(TTS)で作っておくと、台本を訳して同じ構成の多言語版を用意しやすくなります。

ご紹介

交通安全の教材づくりに使えるツールのご紹介

当社の Insight Training Studio は、PowerPoint を素材として研修・教育動画を作成するデスクトップアプリです。拠点ごとの経路の図や危ない場面の説明をスライドに整理し、解説をスピーカーノートに台本として集約 → 合成音声でナレーション生成 → MP4 書き出し、受講記録が必要なら SCORM 1.2 でパッケージ出力、という本ガイドの流れをそのまま 1 つのアプリ内で進められます。無料版をご用意していますので、まずは土台編の 1 本からお試しください。

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