HARMONIC insight
🧭 実務ガイド

著作権・素材利用のルールを動画で周知するには
禁止事項の読み上げで終わらせず、素材の出どころと使える範囲を確かめる習慣を全社にそろえる進め方

提案書の表紙に検索で見つけた写真を入れた、社内報に雑誌の記事をそのまま貼った、SNS の投稿に誰かが描いたイラストを使った、社内勉強会の資料が取引先にそのまま渡った、パソコンに入っていたフォントで作ったロゴを外に出した――素材の扱いにまつわる問題の多くは、悪意からではなく「使っていいものだと思った」「社内だけのつもりだった」ところから起きます。しかも、資料を作る人は全社に広がっています。広報や制作の担当者だけでなく、営業も人事も現場の班長も、日々スライドを作り、写真を貼り、社外に出しています。この、ネットで見られることと自由に使えることは別だという共通の考え方と、自社で使ってよい素材の置き場・迷ったときの相談先を、資料を作るすべての人に同じ内容で届けて記録に残す ための進め方を整理します。総務・広報・法務・情報システムで周知を任されている方向けに、動画にできる部分とできない部分の切り分け、社内で実際に起きた迷いから作る手順、教材そのものに使う素材の選び方、視聴記録の残し方までを実務目線でまとめました。

所要時間:7 分 / 最終更新:2026 年 9 月

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セクション 1

なぜ著作権・素材利用のルールを動画にするのか

素材の扱いについては、規程やガイドラインを定めて社内ポータルに置いている会社が少なくありません。ただ、文書を置いただけでは、資料を作る瞬間に思い出されることはあまりありません。動画で周知する職場が増えているのは、次の 3 つの理由によります。

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資料を作る人が、全社に広がっている

かつて社外に出る制作物は、広報や制作の担当者がまとめて扱っていました。今は、営業が提案書を作り、人事が採用ページの写真を選び、現場の担当者が SNS に投稿します。素材を選ぶ人が増えたぶん、ルールを知っている人が一部に偏っていると、そこから漏れます。部署や職種を問わず全員に同じ内容を渡せる点が、動画の効きやすいところです。

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迷いは「使ってよいか」ではなく「どこから来たか」で起きる

素材の扱いで判断に困るのは、多くの場合、その素材の出どころが分からなくなっているときです。前任者の資料から流用した画像、誰かが共有フォルダに置いた写真、昔のテンプレートに入っていたイラスト。出どころが分からなければ、使える範囲も確かめようがありません。実際の画面を映しながら「どこを見れば出どころが分かるか」「分からないときはどうするか」を順番に示せるのは、文書よりも動画のほうが向いています。

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契約や使える素材は、ときどき変わる

素材サービスやフォントの契約を見直した、ロゴの使い方の決まりを変えた、SNS の投稿に承認の流れを加えた――こうした変更は、関わる人全員に伝わらないと、古い前提のまま資料が作られ続けます。共通の考え方と自社の決まりを別の本にしておけば、変わった部分の本だけを差し替えて配り直せます。新しく入った人への説明にも、そのまま使えます。

※ 本ガイドは、著作権・素材利用のルールに関する社内教育を動画教材として運用する方法を整理するものであり、個別の素材が利用できるかどうか、ある使い方が引用や許諾の範囲に当たるかどうかといった法的な判断を示すものではありません。素材の利用可否や条件は、素材の種類、提供元の利用規約や使用許諾、契約の内容、使う場面(社内か社外か、営利か否か、改変の有無など)によって異なり、法令の解釈が関わります。個別の判断は、自社の法務・知的財産の所管部門、または弁護士などの専門家にご確認ください。

セクション 2

扱う内容の種類と動画化の相性

「著作権の研修」とひとことで言っても、その中身は、誰にでも当てはまる考え方から、自社で使ってよい素材と承認の流れ、素材ごとの利用規約、そして個別の法的な判断まで幅があります。動画化との相性は内容によって大きく変わるため、まずどこを動画にするかを切り分けると、作る本数も更新の手間も見通しが立ちます。

扱う内容変わりやすさ動画化との相性進めるときのポイント
誰にでも当てはまる考え方(ネットで見られることと自由に使えることは別/素材には出どころと使える範囲がある/社内で使うのと社外に出すのとでは条件が変わりうる/出どころが分からない素材は、分かるまで外に出さない/迷ったら誰に聞くか)変わりにくい全員に同じ内容を届ける用途に向く1 本目はここから。部署や職種を問わずそのまま渡せる
自社の決まり(使ってよい素材の置き場、契約している素材やフォントの範囲、ロゴや社名表記の使い方、社員や来訪者の写真を撮るときの同意、社外に出す資料や SNS 投稿の承認の流れ)契約や体制の 見直しで変わる向く。更新前提で本を分けておく共通編と別の本にし、変わった部分の本だけ差し替える
素材ごとの利用条件(素材サービスの利用規約、フォントの使用許諾、取引先やグループ会社から受け取った資料の扱い、外注した制作物の契約)提供元の改定や 契約で変わる一部向く。正本は規約と契約に置く教材は「どこを見て、誰に聞くか」までにとどめる
個別の判断(ある使い方が引用や許諾の範囲に当たるか、権利を侵害していないか、指摘や問い合わせを受けたときの対応)案件ごとに異なる動画で置き換えるものではない所管部門や専門家が判断する。教材は相談の道筋を示す

※ 何をどこまで教材に載せるか、社内利用と社外利用の線をどこに引くかは、自社の規程、契約している素材やフォントの条件、業種や扱う情報によって異なり、本ガイドでは判断できません。素材ごとの利用条件は、提供元の利用規約・使用許諾と自社の契約が優先します。法令の解釈が関わる判断は、自社の法務・知的財産の所管部門、または弁護士などの専門家にご確認ください。

セクション 3

実務の進め方 — 社内で実際に起きた迷いから作る

素材利用の教材でつまずきやすいのは、法律の説明や一般的な禁止事項を並べるところから作り始めてしまい、「言っていることは分かるが、自分の資料のどこが問題なのか分からない」内容になるパターンです。まずは、これまでに所管部門へ寄せられた問い合わせや、社外に出す前に差し戻しになった資料を並べるところから始めてください。教材の題材はすべてここから出てきます。

社内の迷いを「どの場面で起きたか」で並べる — 問い合わせや差し戻しの記録を集めて、「素材を探す段階」「資料に貼る段階」「社外に出す段階」「SNS に投稿する段階」で並べ替えてみてください。自社で迷いが集まっている場面が見えます。前任者の資料からの流用、社内資料のつもりで作ったものが取引先に渡った、といった場面がよく挙がります。件数の多いものから 3 つか 4 つで十分です。問い合わせた人の名前や部署、実際の資料の中身は外し、状況の条件だけを残してください。

1 本目は「出どころと使える範囲を確かめる」一つの習慣に絞る — 権利の種類ごとに説明を始めると本数が膨らみ、覚えることも増えます。まずは、ネットで見られることと自由に使えることは別/素材を使う前に、出どころ(誰が作ったか、どこから入手したか)と使える範囲(社内だけか、社外に出してよいか、加工してよいか)を確かめる/出どころが分からない素材は、分かるまで社外に出さない/迷ったら自分で決めずに相談先へ――この四つだけで 1 本にすると、部署や職種を問わず、誰にでもそのまま渡せます。

「出どころを残す」仕組みとセットで教える — 確かめる習慣を教えても、出どころを残す場所がなければ、次にその資料を使う人がまた迷います。使ってよい素材をまとめた置き場、素材を入手したときに出どころと条件を書き残す場所(スライドのノート欄や素材一覧など)を先に用意し、教材ではその実際の画面を映して「ここに書く」「ここから選ぶ」を示してください。仕組みがあると、教材の内容が日々の作業につながります。

教材そのものに使う素材に気をつける — 素材の扱いを教える教材が、出どころの分からない画像を使っていては説得力がありません。教材に使う写真・図・イラストは、自社で撮影・作成したものか、使える範囲を確かめた素材に限ってください。悪い例を示す場面でも、実在する他者の作品や他社の資料を画面に映さず、架空の例を作って示します。社員が映り込む場合は、撮られる人の同意と、社外に出ない前提の確認を先に取っておきます。

対象で区切って短く作る — 「著作権のすべて」を 1 本にまとめると、自分に関係のない場面の話が続き、途中で止められます。「共通編(資料を作るすべての人向け)」「うちの素材と承認の流れ編」「社外向け資料・提案書を作る人向け編」「SNS・広報の担当者向け編」のように区切っておくと、必要な本だけを渡せますし、契約や体制を見直したときも差し替えが一部で済みます。ナレーションは、自分たちの声で録音する、台本から合成音声(TTS)で生成する、といった選択肢があります。決まりの見直しにあわせて一部だけ直して配り直したい場合や、海外拠点・グループ会社向けに多言語版も用意したい場合は、台本を直せば作り直せる合成音声(TTS)が運用しやすい方式です。

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研修動画の作り方 — 6 ステップの実務ガイド

素材利用の教材も、企画 → 台本 → スライド → ナレーション → 書き出し → 配信という基本の流れは他の研修動画と同じです。台本の書き方やナレーションの選択肢の比較は、こちらの実務ガイドに整理しています。

研修動画の作り方を読む →

セクション 4

視聴記録をどう残すか

誰がどの教材を見たかを把握しておくと、資料を作る人に行き渡っているか、契約や決まりを変えたときの配り直しが届いたかを確認できます。残し方は大きく 2 つです。

動画を共有し、記録は既存の様式に残す(MP4 共有)

まず始めるなら

共有フォルダや社内ポータルに動画を置いて視聴してもらい、記録は研修の受講記録など、これまで使っている様式に残す運用です。追加のシステムが不要で、今の流れを変えずに始められます。動画の側では誰が視聴したかは残らないため、記録は従来の様式で押さえる形になります。SNS の投稿や社外向け資料の承認の流れに「視聴済みであること」を組み込んでいる職場もあります。

LMS で受講状況を管理する(SCORM)

証跡を集約するなら

教材を SCORM 形式で LMS(学習管理システム)に登録すると、受講者ごとの完了状況や学習時間を LMS が自動で記録します。拠点やグループ会社が複数あり、どこまで行き渡ったかを一覧で確認したい場合に向きます。無料・オープンソースの LMS もあり、まずは小さく試すこともできます。ただし記録に残るのは「見たかどうか」であり、素材を適切に扱えている状態かどうかとは別のものです。

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SCORM 1.2 入門ガイド

受講記録を残すうえで避けて通れないのが SCORM 規格です。SCORM とは何か、なぜ重要か、対応 LMS、書き出しの流れまでをまとめた入門ガイドをご用意しています。サンプル SCORM 1.2 パッケージも無料でダウンロードできます。

SCORM 1.2 入門ガイドを読む →

セクション 5

つまずきやすいポイント

著作権・素材利用のルールを動画にするときに引っかかりやすい点を、先回りして 5 つ挙げておきます。

法的な判断を教材で言い切らない — ある使い方が引用に当たるか、どこまで加工すれば別のものと言えるか、社内利用なら許されるか――このあたりを教材で断定すると、実際の判断と食い違ったときに、教材を信じて動いた人が困ります。教材では「こういう場面は自分で決めずに相談する」という見分け方と相談先を示すところまでにし、判断は法務・知的財産の所管部門が持つ形にしてください。教材の役割は、迷う場面に気づけるようにすることです。

禁止リストだけにしない — 「検索で見つけた画像は使わない」「他社の資料を貼らない」と禁止事項だけを並べると、資料を作る人は代わりに何を使えばよいか分からず、結局こっそり使うことになります。使ってよい素材の置き場、社内で撮影を頼める窓口、図を自作するときのテンプレートといった「代わりに使えるもの」を先に用意し、教材ではそちらを大きく示してください。禁止事項は、その後ろに添える程度で十分です。

利用規約を教材に書き写さない — 契約している素材サービスやフォントの使える範囲を教材の中に細かく書き込むと、提供元が規約を改定したり、自社が契約を見直したりしたときに、教材だけが古い条件のまま残ります。教材では「規約はここにある」「契約の範囲は誰に聞けば分かる」を示す形にして、正本がどちらかをはっきりさせておいてください。

個人の落ち度の話にしない — 事例を扱うとき、「確認を怠った」「安易に使った」といった本人の不注意を指摘する構成にすると、次から相談が上がらなくなります。素材の問題は、早く相談されるほど対応の選択肢が残ります。扱うべきなのは、なぜ出どころが分からなくなったのか、なぜ代わりの素材が手元になかったのか、といった条件のほうです。事例は必ず、個人や部署、取引先が特定されない形に加工してください。

契約・体制・決まりを変えたら教材も差し替える — 素材サービスやフォントの契約を変えた、ロゴの使い方の決まりを改めた、承認の流れを変えた――このとき教材だけが以前の内容のまま残ると、見た人は古い前提で資料を作ります。自社の決まりを扱う本には、いつ時点の内容かを画面に入れておき、契約や規程を所管する側から教材の担当に伝わる流れを決めてください。差し替えたら旧版は共有場所から下げ、どの版を見ればよいかが分かる状態にしておきます。

セクション 6

よくある質問

著作権の教育は、動画だけで足りますか?
足りません。動画で足りるのは、素材の出どころと使える範囲を確かめるという共通の考え方と、自社で使ってよい素材の置き場や承認の流れを全員にそろえるところまでです。個別の素材が使えるかどうか、ある使い方が許される範囲に当たるかどうかは、案件ごとに所管部門や専門家が判断するものです。実務では、共通の考え方と自社の決まりを動画で全員に配ったうえで、迷ったときに相談できる窓口を用意しておく、という組み合わせをしている職場が見られます。
社内資料だけなら、自由に使ってよいのでは?
本ガイドでは判断できません。社内での利用であっても、素材によっては利用規約や契約で条件が定められていることがあり、法令の解釈が関わる場合もあります。加えて実務上は、社内資料のつもりで作ったものが、取引先への説明や採用活動、社外の勉強会などで外に出ることが少なくありません。教材では「社内だけのつもりでも、外に出ることがある」という点と、迷ったときの相談先を示し、個別の判断は法務・知的財産の所管部門にご確認ください。
パソコンに入っているフォントは、どこで使ってもよいですか?
本ガイドでは判断できません。フォントにも使用許諾があり、使える範囲は提供元の条件と自社の契約によって決まります。画面で文字を表示するだけの使い方と、ロゴや商品のパッケージに使う、ファイルに埋め込んで社外に配るといった使い方とで、条件が異なることもあります。教材では「パソコンに入っていることと、どこでも使えることは別」という点と、確認先(使用許諾、自社の契約、所管部門)を示すところまでにしてください。
生成 AI で作った画像や文章の扱いは、この教材で扱いますか?
扱う範囲を分けておくことをおすすめします。生成 AI を業務で使ってよいか、入力してよい情報は何か、生成物をどう確認して使うかは、「生成 AI の業務利用ルールを動画で周知するには」で整理しています。本ガイドの範囲では、「出どころと使える範囲を確かめる」という考え方が生成物にも当てはまること、その扱いは自社の生成 AI の利用ルールに従うことを示すところまでにとどめると、二つの教材の内容が食い違いません。SNS への投稿や情報の持ち出しについては、「情報漏えい防止・SNS 利用の教育を動画で実施するには」も参考になります。
海外拠点やグループ会社にも同じ教材を使えますか?
共通編はそのまま使える部分が多い一方、素材やフォントの契約が国や会社ごとに違う場合があり、決まりの本は分けて用意したほうが安全です。また、権利の考え方や法令は国によって異なるため、法的な説明を教材に含めると、ある国では当てはまらない内容になることがあります。共通編は「出どころと使える範囲を確かめる」「迷ったら相談する」という習慣に絞り、各拠点の相談先を差し替えて使う形にすると運用しやすくなります。合成音声(TTS)で作っておくと、台本を訳して同じ構成の多言語版を用意しやすくなります。
どこから作ればよいですか?
まず、これまでに所管部門へ寄せられた問い合わせや、社外に出す前に差し戻しになった資料を、「探す・貼る・社外に出す・SNS に投稿する」のどの場面で起きたかで並べてみてください。自社で迷いが集まっている場面が見えます。1 本目は、ネットで見られることと自由に使えることは別/使う前に出どころと使える範囲を確かめる/出どころが分からない素材は、分かるまで社外に出さない/迷ったら相談先へ――という共通の考え方に絞ると、資料を作る誰にでも配れる教材になります。あわせて、使ってよい素材の置き場を用意してから配ると、教材の内容がそのまま日々の作業につながります。

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