経費精算ルールの教育を動画で実施するには
領収書・申請期限・立替の決まりを、新人にも中途入社の人にも同じ内容で届ける進め方
経費精算は、多くの会社で「規程はあるが、読まれるのは困ったときだけ」という領域です。入社時に規程と申請の手順書を渡していても、実際に迷うのは初めての出張のあとや、月末の締めの直前です。どんな支出なら経費として申請できるのか、領収書をもらい忘れたらどうすればよいのか、申請の期限を過ぎたら何をすればよいのか、立て替えた分はいつ戻ってくるのか――その答えが人によってばらばらだと、差し戻しと問い合わせが締めのたびに繰り返されます。中途入社の人は前の会社の決まりで動いてしまうこともあります。その答えを、業務に必要な支出を、証憑と期限を守って申請するという共通の考え方と、申請の手続き・承認の流れ・迷ったときの相談先を、新人にも中途入社の人にも同じ内容で届けて記録に残す ための進め方を整理します。経理・総務部門の教育担当者の方向けに、動画にできる部分とできない部分の切り分け、社内の実際の問い合わせから作る手順、構成時の注意点、視聴記録の残し方までを実務目線でまとめました。
所要時間:7 分 / 最終更新:2026 年 10 月
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セクション 1
なぜ経費精算ルールの教育を動画にするのか
経費精算のルールは、規程や手順書を配るだけでは「自分のどの支出に、どの決まりが当てはまるのか」が伝わりにくい領域です。動画にしておくと扱いやすくなる理由は、次の 3 つです。
支払いから申請までの流れは、文章より映像のほうが伝わる
「証憑を添えて期限内に申請する」と書かれても、実際の支払いの場面で何を受け取り、どこに何を書き、いつまでに誰へ回せばよいかは、文章だけでは掴みにくいものです。支払う前に確かめること、受け取る書類、申請の画面への入力、承認されるまでの流れ――典型的な場面を順に示し、一連の手順を通して見せられる点が、動画の効きやすいところです。
新人にも中途入社の人にも、同じ内容を渡せる
経費精算の決まりは会社ごとに違います。新人は初めて触れる手続きで迷い、中途入社の人は前の会社のやり方で動いてしまいがちです。出張の多い営業、現場で消耗品を買う担当、立替が発生しやすい総務など、部署によって迷う場面も違います。経理の担当者が入社や異動のたびに口頭で説明すると、伝わる中身が人によって変わります。共通の考え方を同じ動画で届けておけば、誰が加わっても同じ説明から始められます。
規程や申請の画面が変わるたびに配り直せる
旅費の決まり、申請の期限、承認の経路、申請に使うシステムの画面などは、見直しが入ることがあります。そのたびに説明会を開き直すより、変わった部分を扱う本だけを差し替えて配り直すほうが、手間も伝わり方も整えやすくなります。入社時や異動時、規程を改めたときの周知に同じ教材を使えるのも動画の利点です。
※ 本ガイドは、経費精算にまつわる社内の決まりと手続きの周知を動画教材として運用する方法を整理するものであり、教材が法令で求められる要件を満たすことや、特定の支出が経費として認められるか、税務上どう扱われるかを示すものではありません。証憑の受け取りと保存には、インボイス制度(適格請求書等保存方式)や電子帳簿保存法など税に関わる定めが関係します。規程の内容や運用、勘定科目や税の扱い、個別の支出の可否については、自社の経理部門や、税理士など所管の専門家にご確認ください。
セクション 2
扱う内容の種類と動画化の相性
「経費精算ルールの教育」とひとことで言っても、その中身は、全社に共通する考え方から、申請の手続きと承認の流れ、出張や交際、現場の購入といった部署ごとの決まり、勘定科目や税の扱いまで幅があります。動画化との相性は内容によって大きく変わるため、まずどこを動画にするかを切り分けると、作る本数も更新の手間も見通しが立ちます。
| 扱う内容 | 変わりやすさ | 動画化との相性 | 進めるときのポイント |
|---|---|---|---|
| 共通の考え方(経費として申請できるのは業務に必要な支出だけ/私的な支出を混ぜない/支払ったら証憑を受け取って残す/決められた期限までに申請する/迷ったら支払う前に経理へ聞く) | 変わりにくい | 全社に同じ内容を届ける用途に向く | 1 本目はここから。部署を問わずそのまま渡せる |
| 申請の手続き(申請の画面への入力、証憑の添付、申請の期限と締めの日、承認の経路、差し戻されたときの直し方、立て替えた分の支払われ方、仮払いの申請と精算) | 規程の見直しや システムの変更で変わる | 向く。手続きの流れを順に見せられる | 考え方の本と別にし、画面や期限が変わったらここだけ差し替える |
| 部署ごとの決まり(出張の手配と旅費の申請、取引先との会食や贈答の事前申請、現場での消耗品の購入、法人カードの使い方) | 部署の運用や 規程の改定で変わる | 向く。ただし対象を部署ごとに絞る | 全社向けとは別の本にし、該当する部署の担当だけに渡す |
| ある支出が経費として認められるかどうか、勘定科目や消費税の扱い、証憑の要件や保存の方法の判断、規程に定めのない例外の扱い | 支出ごとに違う/ 制度の改正で変わる | 動画で決めるものではない | 教材では相談先と流れだけを示し、判断は経理部門と専門家へ |
※ 何をどこまで教材に載せるか、どの範囲の人を対象とするかは、業種、出張や現場の購入の多さ、使っている申請のシステム、自社の規程の定めによって異なり、本ガイドでは判断できません。教材に書いたことがそのまま規程として効力を持つわけでもありません。規程として定める場合の内容と手続きは、自社の経理部門や所管の専門家にご確認ください。
セクション 3
実務の進め方 — 締めの時期に寄せられる「問い合わせ」から作る
経費精算の教材でつまずきやすいのは、規程の条文を頭から順に解説する構成から作り始めてしまうパターンです。規程の条文の順番は、申請する人が迷う順番とは一致しません。まずは、締めの時期に経理の窓口へ繰り返し寄せられる問い合わせと、差し戻しの理由を書き出すところから始めてください。教材の題材はすべてここから出てきます。
経理の担当者に、繰り返し出る問い合わせと差し戻しの理由を聞く — 「領収書をもらい忘れたが、どうすればよいか」「レシートと領収書のどちらを出せばよいか」「申請の期限を過ぎてしまった」「立て替えた分はいつ振り込まれるのか」「この支出は経費になるのか」「但し書きや宛名はどう書いてもらえばよいか」。多くの会社で、似た問い合わせと差し戻しが締めのたびに出てきます。件数の多いものから 3 つか 4 つで十分です。誰が申請したかは記録せず、場面と迷った点だけを残してください。
1 本目は共通の考え方に絞る — 規程の全項目や例外の扱いまで網羅しようとすると、長くなり、どこが自分に関係するのかが伝わりません。まずは、業務に必要な支出だけを申請する/私的な支出を混ぜない/支払ったら証憑を受け取って残す/決められた期限までに申請する/迷ったら支払う前に経理へ聞く――この五つだけで 1 本にすると、部署を問わずそのまま渡せます。申請の画面の操作や部署ごとの決まりは、そのあとに別の本で足していけば十分です。
「支払う前・受け取るとき・申請するとき」を場面で見せる — 教材の中心は、規程の説明よりも、支払いから申請までの一連の流れです。出張の切符や宿を手配する場面、取引先との会食の前に申請する場面、現場で急ぎの消耗品を買う場面、月末に申請の画面へ入力する場面――といった場面を短い寸劇や図で示し、支払う前に確かめること、受け取る書類、申請に書く内容と添付するもの、承認されるまでの流れがどう当てはまるかを順に追ってください。場面は教材用に作った架空のものを使い、実在の取引先や店、社員が特定されないようにします。
禁止事項と同じ重さで「困ったときの直し方」を示す — 「期限を守ること」「私的な支出を申請しないこと」だけを並べると、領収書をなくした、期限を過ぎてしまった、という人が言い出しにくくなり、申請そのものが後回しになりかねません。証憑を受け取れなかったときに何を出せばよいのか、期限を過ぎたら誰に連絡すればよいのか、差し戻されたらどこを直せばよいのかを、窓口の名前を入れて具体的に示してください。困ったときの手順が見えていると、教材が「叱られないためのもの」ではなく「迷わず申請できるためのもの」として受け止められます。
対象で区切って短く作る — 「経費精算のすべて」を 1 本にまとめると、自分に関係のない話が続き、途中で止められます。「共通編(全社向け)」「申請の画面と承認の流れ編」「出張と旅費編」「会食・贈答の事前申請編」「承認者向けの確かめ方編」のように区切っておくと、必要な本だけを渡せますし、規程や画面が変わったときも差し替えが一部で済みます。ナレーションは、自分たちの声で録音する、台本から合成音声(TTS)で生成する、といった選択肢があります。期限や画面が変わったときに一部だけ直して配り直したい場合や、外国籍の社員向けに多言語版も用意したい場合は、台本を直せば作り直せる合成音声(TTS)が運用しやすい方式です。
研修動画の作り方 — 6 ステップの実務ガイド
経費精算ルールの教材も、企画 → 台本 → スライド → ナレーション → 書き出し → 配信という基本の流れは他の研修動画と同じです。台本の書き方やナレーションの選択肢の比較は、こちらの実務ガイドに整理しています。
研修動画の作り方を読む →セクション 4
視聴記録をどう残すか
誰がどの教材を見たかを把握しておくと、新しく加わった人に行き渡っているか、規程を変えたときの配り直しが届いたかを確認できます。残し方は大きく 2 つです。
動画を共有し、記録は既存の様式に残す(MP4 共有)
まず始めるなら共有フォルダや社内ポータルに動画を置いて視聴してもらい、記録は入社時の手続きの確認表など、これまで使っている様式に残す運用です。追加のシステムが不要で、今の流れを変えずに始められます。動画の側では誰が視聴したかは残らないため、記録は従来の様式で押さえる形になります。入社時や、出張や購入の多い部署に就くタイミング、初めて申請する前に視聴してもらう運用にしておくと、抜け漏れを防ぎやすくなります。
LMS で受講状況を管理する(SCORM)
証跡を集約するなら教材を SCORM 形式で LMS(学習管理システム)に登録すると、受講者ごとの完了状況や学習時間を LMS が自動で記録します。拠点や部署が多く、規程を改めたときの周知がどこまで行き渡ったかを一覧で確認したい場合に向きます。無料・オープンソースの LMS もあり、まずは小さく試すこともできます。改定のたびに受講を求める場合も、版ごとの記録をまとめて確認できます。
SCORM 1.2 入門ガイド
受講記録を残すうえで避けて通れないのが SCORM 規格です。SCORM とは何か、なぜ重要か、対応 LMS、書き出しの流れまでをまとめた入門ガイドをご用意しています。サンプル SCORM 1.2 パッケージも無料でダウンロードできます。
SCORM 1.2 入門ガイドを読む →セクション 5
つまずきやすいポイント
経費精算ルールの教育を動画にするときに引っかかりやすい点を、先回りして 5 つ挙げておきます。
不正を疑う前提の教材にしない — 不正な申請の事例や処分の話から始めると、見た人に残るのは「疑われている」という気持ちになりがちです。実際の差し戻しや問い合わせの多くは、決まりを知らなかった、手順が分からなかった、という理由で起きています。教材の目的は、迷わず正しく申請できるようになることです。私的な支出を混ぜないことは共通の考え方として落ち着いて示し、時間の多くは手順と困ったときの直し方に使ってください。
税や勘定科目の扱いを教材で言い切らない — 「この支出は経費になる」「この書類なら証憑として足りる」と教材で一律に言い切ると、支出の内容や取引先、制度の改正によって当てはまらない場面が出てきます。証憑の要件や勘定科目、消費税の扱いは経理部門が判断するものです。教材では、自社の規程で決めている受け取り方と出し方を示し、判断に迷う支出は支払う前に経理へ聞く、という流れにとどめてください。
申請の画面をそのまま映さない — 申請のシステムの実画面を録画して使うと、他の社員の名前や申請の中身、取引先の名前、口座などが写り込むことがあります。画面の操作を見せるときは、教材用の架空の申請データを用意するか、画面を図に置き換えてください。書き出す前に、実在の名前や社内の資料が写り込んでいないかを確認します。
例外や細かい決まりを 1 本に詰め込まない — 旅費の区分、会食の人数の数え方、法人カードの扱いなど、細かい決まりまで共通編に入れると、大半の人には関係のない話が続きます。共通編は誰にでも当てはまる流れに絞り、細かい決まりは部署向けの本か、規程そのものを参照する形にしてください。教材の中で規程の数字を読み上げるより、どこを見ればよいかを示すほうが、改定のたびに直す箇所も少なく済みます。
規程や画面が変わったら教材も差し替える — 申請の期限が変わった、承認の経路を見直した、申請のシステムを入れ替えた――このとき教材だけが以前の内容のまま残ると、見た人は古い期限や古い手順で動き、差し戻しが増えてしまいます。自社の手続きを扱う本には、いつ時点の内容かを画面に入れておき、規程や画面を変える側から教材の担当に伝わる流れを決めてください。差し替えたら旧版は共有場所から下げ、どの版を見ればよいかが分かる状態にしておきます。
セクション 6
よくある質問
申請のシステムに操作の手順書があれば、動画は要らないのでは?
「労働時間・勤怠の記録ルール」の教材とは、どう使い分けますか?
承認する管理職にも、同じ教材を見てもらうべきですか?
外国籍の社員にも同じ教材を使えますか?
インボイス制度や電子帳簿保存法への対応も、教材で説明できますか?
どこから作ればよいですか?
ご紹介
全社向けの周知教材づくりに使えるツールのご紹介
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