職場の感染症対策の教育を動画で実施するには
手洗い・体調が悪いときの連絡先・共用部の決まりを、全社に同じ内容で届ける進め方
季節ごとに流行する感染症の時期が近づくと、手洗いのポスターを貼り直し、注意を促すメールを全社に送る。多くの職場で、感染症対策の周知はこうした形で続けられています。ただ、実際に職場で広がるきっかけになりやすいのは、手の洗い方そのものよりも、「少し熱っぽいけれど、休むと周りに迷惑がかかる」と無理に出勤してしまうことや、休憩室や更衣室、社用車のように、決まりがはっきりしないまま皆で使っている場所だったりします。さらに、シフトや雇用形態の違う人、派遣や協力会社の人には、社内メールや掲示が届いていないこともあります。そこで、自社の職場のどこで・いつ手を洗うのか、体調が悪いときは誰にどう連絡すればよいのか、共用部ではどうするのか、という自社の決まりを、雇用形態や拠点を問わず同じ内容で届けて記録に残す ための進め方を整理します。総務・人事・安全衛生の担当者や、介護・食品など衛生に気を配る職場の教育担当者向けに、動画にできる部分とできない部分の切り分け、作る順番、構成時の注意点、視聴記録の残し方までを実務目線でまとめました。
所要時間:7 分 / 最終更新:2026 年 10 月
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セクション 1
なぜ職場の感染症対策の教育を動画にするのか
感染症対策は、内容そのものは多くの人が知っているつもりでいる一方で、自社の決まりとなると知られていないことが多いテーマです。動画にしておくと扱いやすくなる理由は、次の 3 つです。
雇用形態やシフトを問わず、同じ内容を届けられる
社内メールや朝礼での連絡は、夜勤の人、週に数日だけ働く人、派遣や協力会社の人、出張や外回りの多い人には届きにくいものです。体調が悪いときの連絡先や共用部の決まりは、職場で働く全員が知っていなければ意味がありません。動画にしておけば、入社時や配属時、流行期の前に、誰にでも同じ内容を渡し、誰に届いたかを残しておけます。
自社の職場の「どこで・いつ」を、実際の場所の映像で示せる
「こまめに手を洗いましょう」と聞いても、自社のどの手洗い場を、どのタイミングで使えばよいのかまでは伝わりません。動画なら、出勤してすぐに使う手洗い場、休憩室や食堂の入口の消毒液、更衣室や社用車の使い方を実際の場所で映し、「ここで、このときに」と具体的に覚えてもらえます。
体調が悪いときの連絡の流れを、迷わない形で見せられる
体調が悪い朝に、誰に、何で、何を伝えればよいのかが分からないと、連絡をためらって無理に出勤してしまう原因になります。動画なら、連絡を受ける側の上司や窓口が実際にどう受け止めるかまで含めて見せられるため、「休むと伝えてよい」という安心感をそろえて届けられます。
※ 本ガイドは、職場の感染症対策についての考え方と社内の決まりを動画教材として届ける方法を整理するものです。感染症ごとに出勤してよいか、どのくらい休むか、受診や検査が必要かといった判断は、医療機関や保健所などの公的な案内、自社の就業規則と産業医などの助言に沿って行ってください。介護・医療・食品など、衛生管理について法令や指針で定めがある職場では、それらが優先します。本ガイドは医学的な判断や、休んだ期間の賃金・休暇の扱いを示すものではありません。
セクション 2
扱う内容の種類と動画化の相性
「職場の感染症対策の教育」とひとことで言っても、その中身は、誰にでも共通する考え方から、自社の連絡の流れや共用部の決まり、流行の時期だけの追加の決まり、出勤してよいかの医学的な判断まで幅があります。動画化との相性は内容によって大きく変わるため、まずどこを動画にするかを切り分けると、作る本数も見直しの手間も見通しが立ちます。
| 扱う内容 | 変わりやすさ | 動画化との相性 | 進めるときのポイント |
|---|---|---|---|
| 共通の考え方(手を洗う・咳エチケットの基本/体調が悪いときは無理に出勤せず早めに連絡する/休む人を責めない・病名を聞き出さない) | 変わりにくい | 全員に同じ内容を届ける用途に向く | 1 本目はここから。雇用形態や拠点を問わずそのまま渡せる |
| 自社の連絡の流れと共用部の決まり(体調が悪い朝の連絡先と手段、出勤後に具合が悪くなったときの動き、手洗い場・休憩室・食堂・更衣室・社用車の使い方) | 体制や拠点の変更で変わる | 向く。実際の場所と連絡の流れを映して見せられる | 連絡先は拠点・部署ごとに確かめる。変わったらここだけ差し替える |
| 流行の時期だけの追加の決まり(その時期の会議・出張・来客対応・行事の扱いなど) | その年・その時期で変わる | 本編に混ぜず、短いお知らせとして別にする | 期間と見直しの日を画面に入れる。期間が過ぎたら必ず下げる |
| 出勤してよいか・どのくらい休むかの判断、受診や検査の要否、個別の体調の相談 | 人と病気ごとに違う | 動画で決めるものではない | 教材では「誰に相談するか」「どこで確かめるか」だけを示す |
※ 何をどこまで教材に載せるか、誰を対象とするかは、業種、拠点の数と形態、派遣や協力会社との契約、就業規則などによって異なり、本ガイドでは判断できません。介護・医療・食品など、衛生管理について別に定めがある職場では、その定めにもとづく教育が優先します。休んだ期間の賃金や休暇の扱いは就業規則と人事の判断によります。教材の内容が社内の決まりと食い違わないよう、総務・人事・産業医など関係する部門と確かめてから作ってください。
セクション 3
実務の進め方 — 「体調が悪いと言い出せる」ことを中心に据えて作る
この教材でつまずきやすいのは、感染の仕組みや正しい手洗いの手順の説明から作り始めてしまうパターンです。内容として正しくても、見た人の多くは「知っている話」と受け取り、職場での行動は変わりません。職場で本当にそろえたいのは、体調が悪いときに無理をせず連絡できること、そして自社の共用部での動き方です。まずは、自社の連絡の流れと共用部を確かめるところから始めてください。
体調が悪いときの連絡の流れを、先に紙に書き出す — 総務・人事と現場の管理者で、体調が悪い朝に誰へ、何で(電話・チャット・勤怠システムなど)、何を伝えるのかを書き出します。夜勤や休日の連絡先、派遣や協力会社の人の連絡先、出勤後に具合が悪くなったときに誰に声をかけ、どこで休み、どう帰るのか、までを一続きにしてください。部署や拠点によって違うことが多いので、この段階で食い違いを見つけておくと、教材ができてから直す手間が減ります。
1 本目は共通の考え方と「早めに連絡する」ことに絞る — 感染症の種類ごとの特徴や症状、休む期間までを網羅しようとすると長くなり、しかも病気や時期によって変わる内容が混ざって、すぐに古くなります。まずは、手を洗う・咳エチケットの基本/体調が悪いときは無理に出勤せず早めに連絡する/休む人を責めない・病名を聞き出さない――この三つほどで 1 本にすると、どの雇用形態の人にもそのまま渡せます。個別の病気の扱いは、医療機関や公的な案内に任せます。
共用部は、自社の実際の場所で見せる — 出勤してすぐに使う手洗い場、休憩室や食堂、更衣室、喫煙所、社用車や共用のパソコン、受付や来客用の会議室。皆で使う場所ごとに、自社で決めている使い方を実際の場所で映してください。消毒液の置き場所や、換気のために開けてよい窓、社用車を使い終わったあとにすることなど、場所と動きがひと目で分かれば、言葉の説明は短くて済みます。社員に出てもらう場合は、出演と社内配信について本人の了承を取っておきます。
対象ごとに本を分ける — 全員が知っておくこと、拠点ごとに違う共用部の決まり、休みの連絡を受ける管理者が知っておくことは別物です。1 本にまとめると、どの人にも関係の薄い話が続きます。「共通編(全員向け)」「拠点の共用部編(拠点ごと)」「管理者編(休みの連絡の受け方と、体調や病名にかかわる情報の扱い)」のように区切っておくと、必要な本だけを渡せますし、体制や拠点が変わったときも差し替えが一部で済みます。
平時の本と、流行期のお知らせを分ける — 流行の時期だけの決まりを本編に入れてしまうと、時期が過ぎても古い決まりが残り、どれが今の決まりなのかが分からなくなります。本編は一年を通じて変わらない内容にとどめ、流行期の追加の決まりは、期間と見直しの日を入れた短いお知らせとして別に作るのが運用しやすい形です。ナレーションは、自分たちの声で録音する、台本から合成音声(TTS)で生成する、といった選択肢があります。連絡先や決まりが変わるたびに一部だけ直したい場合や、外国籍の従業員向けに多言語版も用意したい場合は、台本を直せば作り直せる合成音声(TTS)が運用しやすい方式です。
研修動画の作り方 — 6 ステップの実務ガイド
職場の感染症対策の教材も、企画 → 台本 → スライド → ナレーション → 書き出し → 配信という基本の流れは他の研修動画と同じです。台本の書き方やナレーションの選択肢の比較は、こちらの実務ガイドに整理しています。
研修動画の作り方を読む →セクション 4
視聴記録をどう残すか
誰がどの教材を見たかを把握しておくと、雇用形態や拠点を問わず全員に行き渡ったか、新しく入った人や派遣・協力会社の人にも届いたかを確認できます。残し方は大きく 2 つです。
動画を共有し、記録は既存の様式に残す(MP4 共有)
まず始めるなら共有フォルダや社内ポータル、休憩室の端末に動画を置いて視聴してもらい、記録は入社時の案内のチェックリストや、配属時の説明の記録、派遣・協力会社の受け入れ記録など、これまで使っている様式に残す運用です。追加のシステムが不要で、今の流れを変えずに始められます。動画の側では誰が視聴したかは残らないため、記録は従来の様式で押さえる形になります。
LMS で受講状況を管理する(SCORM)
証跡を集約するなら教材を SCORM 形式で LMS(学習管理システム)に登録すると、受講者ごとの完了状況や学習時間を LMS が自動で記録します。拠点が多い、シフトが複数ある、といった場合に、誰に届いたかを一覧で確認したいときに向きます。無料・オープンソースの LMS もあり、まずは小さく試すこともできます。管理者編のように対象者が限られる本も、同じ仕組みで誰に届いたかを確認できます。
SCORM 1.2 入門ガイド
受講記録を残すうえで避けて通れないのが SCORM 規格です。SCORM とは何か、なぜ重要か、対応 LMS、書き出しの流れまでをまとめた入門ガイドをご用意しています。サンプル SCORM 1.2 パッケージも無料でダウンロードできます。
SCORM 1.2 入門ガイドを読む →セクション 5
つまずきやすいポイント
職場の感染症対策の教育を動画にするときに引っかかりやすい点を、先回りして 5 つ挙げておきます。
休む人を責める空気を、教材がつくらない — 「体調管理も仕事のうち」といった言い回しは、聞いた人によっては「体調を崩すのは自己管理ができていないから」と受け取られ、具合が悪くても言い出しにくくなります。教材では、体調が悪いときに早めに連絡することを、周りを守るための当たり前の行動として見せてください。連絡を受けた上司が「分かりました、無理しないでください」と受け止める場面を入れておくと、言い出す側も受ける側も、同じ形をそろえて覚えられます。
医学的な判断を、教材でしない — 「熱が何度以上なら休む」「何日たてば出勤してよい」といった基準を教材の中で一つだけ示すと、それが病気や人の事情にかかわらず独り歩きするおそれがあります。出勤してよいか、どのくらい休むか、受診や検査が必要かは、医療機関や公的な案内、自社の就業規則と産業医などの助言に沿って決めることです。教材では、迷ったときに誰に相談すればよいか、社内の決まりはどこで確かめられるか、を示すところまでにとどめてください。
病名や体調の詳しい内容を、聞き出す流れにしない — 休みの連絡を受けた上司や同僚が、病名や症状を細かく尋ねたり、周りに広めたりすると、本人が連絡をためらう原因になり、個人の情報の扱いとしても問題になりえます。管理者編では、連絡を受けたときに確かめること(いつまで休むか、業務の引き継ぎ、職場で必要な対応があるか)と、確かめなくてよいこと、知った情報を誰にどこまで伝えるかを、社内の決まりにそって示してください。体調や病名にかかわる情報の扱いは、人事や産業医と確かめてから教材に載せます。
派遣・協力会社・短時間の人を、対象から外さない — 社員向けの研修として作ると、派遣や協力会社の人、週に数日だけ働く人、夜勤の人に届かないことがあります。けれど、共用部を使い、体調が悪い朝に連絡をする必要があるのは、職場で働く全員です。共通編と拠点の共用部編は、受け入れのときに必ず見てもらう流れに入れ、派遣や協力会社の人の連絡先がどこになるのか(自社か、所属先か、両方か)も、契約と社内の決まりにそって示してください。
流行期のお知らせを、期間が過ぎても残さない — 流行の時期に足した決まりは、時期が過ぎれば元に戻ることが多いものです。古いお知らせが共有場所に残ったままだと、どれが今の決まりなのかが分からなくなり、本編の内容まで信用されにくくなります。お知らせには期間と見直しの日を画面に入れておき、期間が過ぎたら共有場所から下げる担当を決めてください。本編の連絡先や共用部の決まりを変えたときも、いつ時点の内容かを画面に入れ、旧版は下げておきます。
セクション 6
よくある質問
職場の感染症対策の教育は、動画だけで足りますか?
食品衛生の教育や、介護・医療の職場の研修とは、どう使い分けますか?
大きな流行で出勤や業務を絞るときの対応も、この教材で扱いますか?
毎年同じ教材を見せても、効果はありますか?
外国籍の従業員にも同じ教材を使えますか?
どこから作ればよいですか?
ご紹介
社内の研修教材づくりに使えるツールのご紹介
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