HARMONIC insight
📝 実務ガイド

玉掛け作業の安全教育を動画で実施するには
合図・立入禁止の範囲・用具の点検の決まりを、資格を持つ人と周りで働く人に同じ内容で届ける進め方

玉掛けは、つり上げ荷重 1 トン以上のクレーンなどでは技能講習を修了した人、1 トン未満では特別教育を受けた人が行う業務と定められています。ただ、資格を取ったのが何年も前だったり、職場ごとに合図の出し方や立入禁止の範囲の決め方が少しずつ違ったりして、現場の決まりが人によってずれていくことは少なくありません。つり荷の近くで働く、資格を持たない人に決まりが届いていないこともあります。そこで、自社の合図の決め方、つり荷の下と周りの立入禁止の範囲、玉掛け用具の点検と使わない基準を、資格を持つ人にもその周りで働く人にも同じ内容で届けて記録に残す ための進め方を整理します。安全担当や、製造・建設・物流の現場で教育を受け持つ方向けに、動画にできる部分とできない部分の切り分け、作る順番、構成時の注意点、視聴記録の残し方までを実務目線でまとめました。

所要時間:7 分 / 最終更新:2026 年 10 月

📩 公開・改訂のお知らせをメールで受け取る

EN / ZH 翻訳版・追加資料・ガイド改訂のお知らせを不定期にお送りします(解除はいつでも)。

送信時、お問い合わせフォームに必要事項が引き継がれます(最終送信はそちらで完了)。

セクション 1

なぜ玉掛け作業の安全教育を動画にするのか

玉掛けの資格は一度取れば更新がなく、その後の教育は職場に任されています。交代勤務や複数の現場にまたがる職場では、全員をそろえて話を聞いてもらうのも難しいテーマです。動画にしておくと扱いやすくなる理由は、次の 3 つです。

🏗️

資格を取った時期が違う人にも、自社の決まりを同じ内容で届けられる

技能講習や特別教育で学ぶのは、玉掛けの基本の知識と技能です。自社の現場で使う合図、つり荷の通り道、立入禁止の範囲の示し方、用具の置き場と点検の記録の付け方といった職場の決まりは、講習では教わりません。動画にしておけば、配属のとき、現場が変わったとき、定期の再教育のときに同じ内容を渡し、誰に届いたかを残しておけます。

🎥

合図や立ち位置を、実際の動きで示せる

「合図は決められた一人が出す」「つり荷の下に入らない」と書いた掲示があっても、どこに立てば合図が見えて、どこからが立入禁止なのかまでは伝わりません。動画なら、合図者の立ち位置、手の動き、地切りでいったん止めて確かめる場面、介錯ロープの使い方を、実際の動きとして見せられます。撮影のときは、つり荷を実際に動かさず、止めた状態や模型で撮るなど、撮影そのものが危険にならない方法を選んでください。

🔄

設備や用具が変わったときに、一部だけ差し替えられる

クレーンの入れ替え、使う玉掛け用具の種類の変更、置き場や通路の変更があると、現場の決まりも見直されます。資料を配り直したり説明会を開き直したりするのは負担ですが、動画を内容ごとに分けておけば、変わった部分の本だけを作り直して差し替えられます。

※ 本ガイドは、玉掛け作業にかかわる社内の決まりを動画教材として届ける方法を整理するものです。制度の事実は労働安全衛生法とクレーン等安全規則の定め(2026 年 10 月確認)に触れていますが、動画教材は技能講習や特別教育、定められた教育の代わりになるものではありません。誰が玉掛けを行ってよいか、どの教育が必要か、作業計画や合図の具体的な決め方は、自社の安全衛生管理部門、元請の統括安全衛生管理部門、所轄の労働基準監督署や登録教習機関にご確認ください。本ガイドは法的な助言や、個別の判断を示すものではありません。

セクション 2

扱う内容の種類と動画化の相性

「玉掛けの安全教育」とひとことで言っても、その中身は、玉掛けで守る共通の考え方から、自社の合図と立入禁止の決まり、用具の点検と保管、資格に結びつく講習や実技まで幅があります。動画化との相性は内容によって大きく変わるため、まずどこを動画にするかを切り分けると、作る本数も見直しの手間も見通しが立ちます。

扱う内容変わりやすさ動画化との相性進めるときのポイント
玉掛けで守る共通の考え方(つり荷の下に入らない/合図は決められた一人が出す/地切りでいったん止めて確かめる/おかしいと思ったら誰でも止める)あまり変わらない資格を持つ人にも周りで働く人にも同じ内容を届ける用途に向く1 本目はここから。現場を問わずそのまま渡せる
自社の合図と立入禁止の決まり(合図の出し方と合図者の決め方、つり荷の通り道、立入禁止の範囲の示し方、無線を使うときの決まり)設備や現場の配置の変更で変わる向く。立ち位置と動きを場面として見せられる現場ごとに違う決まりをこの段階で洗い出す。変わったらここだけ差し替える
玉掛け用具の点検と保管(作業開始前の点検のしかた、使わない基準、点検の記録、置き場と保管の決まり)使う用具の種類の変更で変わる向く。用具の実物を近くで映して見せられる使わない基準の見本は実物の写真で示す。基準そのものは安全衛生管理部門と確かめる
技能講習・特別教育そのもの、実技の習得、個別の作業での玉掛けの方法や作業計画の判断作業ごと・人ごとに違う動画で代えられるものではない教材では「誰が玉掛けをしてよいか」「誰に確かめるか」だけを示す

※ 何をどこまで教材に載せるか、誰を対象とするかは、業種、使っているクレーンなどの種類とつり上げ荷重、扱う荷の形や重さ、現場の配置、自社や元請の安全衛生管理の定めなどによって異なり、本ガイドでは判断できません。教材の内容が現場の決まりと食い違わないよう、安全衛生管理部門と各現場の責任者と確かめてから作ってください。

セクション 3

実務の進め方 — 「ひやりとした場面」から作る

この教材でつまずきやすいのは、講習のテキストをなぞる形で作ってしまうパターンです。資格を持つ人にとっては一度学んだ内容のくり返しになり、職場の決まりは伝わらないまま終わります。そろえたいのは、自社の現場で、全員が同じ合図で動き、同じ範囲を立入禁止として守り、同じ基準で用具を点検することです。まずは、自社の現場で実際にひやりとした場面を集めるところから始めてください。

ひやりとした場面を、先に書き出す — 安全担当や各現場の責任者、玉掛けをする人に、これまでにひやりとした場面を書き出してもらいます。「合図が二人から出て、どちらに従えばよいか迷った」「地切りで荷が傾いた」「つり荷の旋回の先に別の作業の人がいた」「傷んだワイヤロープがそのまま置き場に戻っていた」といった、講習のテキストには出てこない自社の場面が集まります。ここで集めた場面が、そのまま教材の骨組みになります。

1 本目は共通の考え方に絞る — 玉掛けの知識をすべて盛り込もうとすると長くなり、講習のくり返しになります。まずは、つり荷の下に入らない/合図は決められた一人が出す/地切りでいったん止めて確かめる/おかしいと思ったら誰でも止める――この四つほどで 1 本にすると、資格を持つ人にも、つり荷の近くで働く人にもそのまま渡せます。

地切りから着地までを、順に見せる — 作業前の用具の点検、荷の重さと重心の確かめ、合図者と立ち位置の確認、地切りでいったん止めて傾きや掛け方を確かめる場面、つり荷の通り道と立入禁止の範囲、着地と玉外し。1 回の玉掛けの流れを、自社の現場の配置で順に映してください。どこで止まり、誰が何を確かめるのかがひと目で分かれば、言葉の説明は短くて済みます。撮影は、つり荷を動かさない状態で行うか、実際の作業を離れた位置から撮るなど、撮影のための危険が生まれない方法を選んでください。

対象ごとに本を分ける — 玉掛けをする人が知っておくこと、クレーンなどを運転する人と合わせておくこと、つり荷の近くで働く資格を持たない人が守ることは別物です。1 本にまとめると、どの人にも関係の薄い話が続きます。「共通編(つり荷の近くで働く全員向け)」「作業編(玉掛けをする人・運転する人向けの合図と手順)」「用具編(点検と使わない基準・保管)」のように区切っておくと、必要な本だけを渡せますし、設備や用具が変わったときも差し替えが一部で済みます。

変わりやすい部分を、本編と分けておく — 現場の配置や立入禁止の範囲の示し方、使う用具の種類は、設備の入れ替えや現場の移動のたびに変わります。本編は考え方と流れを中心にし、現場ごとの配置は短い本にまとめておくと、作り直す範囲が小さくなります。ナレーションは、自分たちの声で録音する、台本から合成音声(TTS)で生成する、といった選択肢があります。決まりが変わるたびに一部だけ直したい場合や、外国籍の作業者向けに多言語版も用意したい場合は、台本を直せば作り直せる合成音声(TTS)が運用しやすい方式です。

🎬

研修動画の作り方 — 6 ステップの実務ガイド

玉掛け作業の安全教育の教材も、企画 → 台本 → スライド → ナレーション → 書き出し → 配信という基本の流れは他の研修動画と同じです。台本の書き方やナレーションの選択肢の比較は、こちらの実務ガイドに整理しています。

研修動画の作り方を読む →

セクション 4

視聴記録をどう残すか

誰がどの教材を見たかを把握しておくと、配属された人や現場が変わった人に漏れなく届いたか、つり荷の近くで働く協力会社の人にも届いたかを確認できます。定期の再教育の記録としても役に立ちます。残し方は大きく 2 つです。

動画を共有し、記録は既存の様式に残す(MP4 共有)

まず始めるなら

共有フォルダや社内ポータルに動画を置いたり、朝礼や安全ミーティングで流したりして視聴してもらい、記録は安全教育の実施記録や受講者の名簿など、これまで使っている様式に残す運用です。追加のシステムが不要で、今の流れを変えずに始められます。動画の側では誰が視聴したかは残らないため、記録は従来の様式で押さえる形になります。

LMS で受講状況を管理する(SCORM)

証跡を集約するなら

教材を SCORM 形式で LMS(学習管理システム)に登録すると、受講者ごとの完了状況や学習時間を LMS が自動で記録します。現場や勤務が分かれていて、誰に届いたかを一覧で確認したいときに向きます。無料・オープンソースの LMS もあり、まずは小さく試すこともできます。作業編や用具編のように対象者が限られる本も、同じ仕組みで誰に届いたかを確認できます。

📘

SCORM 1.2 入門ガイド

受講記録を残すうえで避けて通れないのが SCORM 規格です。SCORM とは何か、なぜ重要か、対応 LMS、書き出しの流れまでをまとめた入門ガイドをご用意しています。サンプル SCORM 1.2 パッケージも無料でダウンロードできます。

SCORM 1.2 入門ガイドを読む →

セクション 5

つまずきやすいポイント

玉掛け作業の安全教育を動画にするときに引っかかりやすい点を、先回りして 5 つ挙げておきます。

動画で資格や講習の代わりになると考えない — つり上げ荷重 1 トン以上のクレーンなどの玉掛けは技能講習を修了した人、1 トン未満は特別教育を受けた人が行う業務です。動画教材はその要件を満たすものではありません。教材の位置づけを「自社の決まりの共有と、講習で学んだことの思い出し」と社内で先に決めておき、誰が玉掛けをしてよいのか、資格を持たない人はどこまで関わってよいのかを示すところまでにとどめてください。

周りで働く人を、対象から外さない — 玉掛けの事故で巻き込まれるのは、玉掛けをする人や運転する人だけではありません。つり荷の通り道の近くで別の作業をしている人、通路を通る人、協力会社や来訪者も対象です。資格を持つ人向けの本だけを作ると、いちばん守ってほしい「つり荷の下と周りに入らない」が届かない人が残ります。共通編は、つり荷の近くで働く全員に配る前提で作ってください。

現場ごとの合図の違いを、そのままにしない — 現場や班ごとに合図の出し方が少しずつ違うと、応援に入った人や異動してきた人が迷います。教材を作る段階で各現場の合図をそろえて見直し、自社として統一する部分と、現場ごとに決める部分(無線の使い方や立ち位置など)を分けてから撮ってください。合図の決め方そのものは、安全衛生管理部門と各現場の責任者で決めます。

用具の「使わない基準」を、言葉だけで説明しない — ワイヤロープやつりチェーン、繊維スリングの傷み、変形、摩耗は、文字で読んでも見分けがつきにくいものです。使わない基準に当たる用具を、実物の写真や近くで撮った映像で並べて見せ、その場でどう扱うか(使わずに分けて置く、誰に報告する)までを示してください。基準の中身は、用具の取扱説明と自社の安全衛生管理の定めに沿って確かめます。

設備や用具が変わったあとも、古い本を残さない — クレーンの入れ替え、用具の種類の変更、現場の配置の変更があったのに古い動画が残っていると、どれが今の決まりなのかが分からなくなります。いつ時点の内容かを画面に入れ、設備や用具を変えたときは該当する本を見直して、旧版は共有場所から下げる担当を決めてください。

セクション 6

よくある質問

玉掛けの安全教育は、動画だけで足りますか?
動画で担えるのは、玉掛けで守る共通の考え方と、自社の合図・立入禁止の範囲・用具の点検の決まりを、同じ内容で繰り返し届けるところまでです。技能講習や特別教育の代わりにはなりませんし、実際の掛け方や合図の動きは、現物を前にした指導と実地の確認でしか身につきません。動画は周知と再教育の入口に使い、現場での指導と組み合わせて運用してください。何をどこまで行うべきかは、自社の安全衛生管理部門や所轄の労働基準監督署にご確認ください。
荷役・構内運搬の安全教育とは、どう使い分けますか?
扱う範囲が違います。荷の積み下ろしや台車・フォークリフトでの構内運搬など、荷を扱う作業全般で守る考え方を扱うのが「荷役・構内運搬の安全教育を動画で実施するには」です。本ガイドは、そのうちクレーンなどでつり上げる作業に特有の、合図・立入禁止の範囲・玉掛け用具の点検に絞った位置づけです。荷を扱う職場では、両方を組み合わせて渡す形も取れます。
資格を持たない人にも、この教材を見せるべきですか?
共通編は、見てもらうことをおすすめします。つり荷の近くで別の作業をする人や通路を通る人が、つり荷の下と周りに入らない、合図の邪魔をしない、おかしいと思ったら声をかけて止める、という決まりを知っていることが、巻き込まれを防ぐうえで大切です。ただし、資格を持たない人が玉掛けをしてよいと受け取られないよう、「この業務は誰が行うか」を教材の中ではっきり示してください。
協力会社や応援に来た人にも使えますか?
使えます。共通編と、その現場の合図と立入禁止の決まりをまとめた短い本を、入場の前に見てもらう運用が考えられます。協力会社の作業者が玉掛けを行う場合は、資格の確認や作業の決め方が元請と協力会社のあいだの取り決めにかかわるため、自社と元請の安全衛生管理の定めに沿って進めてください。新しく入場する人への案内全体は「新規入場者教育を動画で実施するには」も参考になります。
外国籍の作業者にも同じ教材を使えますか?
合図の動きや立ち位置、用具の傷みの見本を目で見せる構成にしておけば、言葉に頼る部分が少なく使いやすい教材です。字幕を用意する、多言語版を作る、といった工夫が有効です。合成音声(TTS)で作っておくと、台本を訳して同じ構成の多言語版を用意しやすくなります。ただし、教材を母語で見られることと、玉掛けの資格の要件は別の話です。資格や講習の受け方は、登録教習機関などにご確認ください。
どこから作ればよいですか?
まず、安全担当や各現場の責任者、玉掛けをする人に、これまでにひやりとした場面を書き出してもらってください。講習のテキストには出てこない自社の場面が集まります。1 本目は、つり荷の下に入らない/合図は決められた一人が出す/地切りでいったん止めて確かめる/おかしいと思ったら誰でも止める――という共通の考え方で作ると、つり荷の近くで働く全員に配れる教材になります。次に合図と手順の作業編、点検と使わない基準の用具編を足していくと、実際に必要な形になります。

ご紹介

社内の研修教材づくりに使えるツールのご紹介

当社の Insight Training Studio は、PowerPoint を素材として研修・教育動画を作成するデスクトップアプリです。玉掛けで守る共通の考え方と自社の合図・立入禁止・用具の点検の決まりをスライドに整理し、解説をスピーカーノートに台本として集約 → 合成音声でナレーション生成 → MP4 書き出し、受講記録が必要なら SCORM 1.2 でパッケージ出力、という本ガイドの流れをそのまま 1 つのアプリ内で進められます。無料版をご用意していますので、まずは共通編の 1 本からお試しください。

  • ✓PowerPoint から研修動画(MP4)を生成
  • ✓合成音声(TTS)によるナレーション — 47 言語に対応
  • ✓SCORM 1.2 パッケージ出力(LMS 配信・受講記録向け)
  • ✓無料版あり・キー不要ですぐに使えます

導入のご相談は info@h-insight.jp まで