HARMONIC insight
🧭 実務ガイド

SNS 利用ルールの研修を動画で実施するには
私生活を縛らずに、職場の情報と写真を出さない考え方を全社にそろえる進め方

SNS は、多くの人にとって仕事の外の、ごく普通の日常の一部です。休憩中に撮った一枚、仕事の愚痴をこぼしたひとこと、職場の仲間とふざけた短い動画――本人にとっては身内に向けた何気ない投稿でも、背景に写った書類やホワイトボード、制服や社名入りの車、取引先や来店客の姿、位置情報がきっかけになって、思わぬ相手に勤め先と結びつけて読まれることがあります。一方で、会社が個人の発信をどこまで求められるかには限りがあり、締めつけるほど教育は届かなくなります。この、個人の投稿でも、見る人には勤め先と結びつくことがあるという共通の考え方と、迷ったときの相談先を、働く全員に同じ内容で届けて記録に残す ための進め方を整理します。総務・広報・人事の教育担当者の方向けに、動画にできる部分とできない部分の切り分け、社内の実際の迷いから作る手順、撮影・構成時の注意点、視聴記録の残し方までを実務目線でまとめました。

所要時間:7 分 / 最終更新:2026 年 10 月

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セクション 1

なぜ SNS 利用ルールの研修を動画にするのか

SNS の利用ルールは、入社時に規程や誓約書を渡して終わり、という形になりがちです。ところが規程の文面だけでは、どの場面で何に気をつければよいかが伝わりにくく、働き方の違う人ほど受け取る機会もばらつきます。動画にしておくと扱いやすくなる理由は、次の 3 つです。

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気をつける点は「文面」より「場面」で伝わる

「業務上知り得た情報を公開しない」と書かれていても、休憩室で撮った写真の奥に掲示物が写っている、制服のまま撮った動画に店名が映っている、といった場面と結びつかなければ、投稿する瞬間に思い出せません。投稿前の一枚を画面に出し、どこに何が写っているかを一緒に確かめる形で見せられる点が、動画の効きやすいところです。

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働き方の違う全員に、同じ内容を渡せる

SNS の扱いは、正社員だけでなく、パート・アルバイトや派遣の方、短期の応援の方、内定者にも関わります。シフトや勤務地がばらばらだと集合研修では全員がそろわず、職場ごとの口頭説明は人によって中身が変わります。同じ動画を、入社時や配属時、シフトに入る前の空き時間に見てもらえるのは、動画の利点です。

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サービスも使い方も、毎年のように変わる

使われる SNS は入れ替わり、短い動画やライブ配信、位置情報の共有、写真から場所が分かる機能など、気をつける点も変わっていきます。規程の改定に合わせて紙の資料を配り直すより、変わった場面を扱う本だけを差し替えて配り直すほうが、手間も伝わり方も整えやすくなります。

※ 本ガイドは、SNS の利用にまつわる社内ルールの周知を動画教材として運用する方法を整理するものであり、教材が法令・規程で求められる要件を満たすことや、会社が従業員の私的な発信をどこまで制限できるかを示すものではありません。従業員の社外での発信に会社がどこまで関与できるか、規程にどう定めるか、問題のある投稿にどう対応するかは、業務との関わり方、雇用形態、自社の就業規則や規程の定めによって異なり、個別の判断が必要です。規程の内容や運用については、自社の人事部門・法務部門や、社労士・弁護士など所管の専門家にご確認ください。

セクション 2

扱う内容の種類と動画化の相性

「SNS の研修」とひとことで言っても、その中身は、働く人の誰にでも共通する考え方から、自社の規程で定めている範囲、会社の公式アカウントの運用、個別の投稿への対応まで幅があります。動画化との相性は内容によって大きく変わるため、まずどこを動画にするかを切り分けると、作る本数も更新の手間も見通しが立ちます。

扱う内容変わりやすさ動画化との相性進めるときのポイント
個人の投稿でも見る人には勤め先と結びつくことがあるという共通の考え方(写り込みと位置情報を確かめる、職場の人や来訪者を本人の了解なく載せない、取引先や業務の中身に触れない、迷ったら投稿前に相談する、一度出たものは消しても残ることがある)変わりにくい全員に同じ内容を届ける用途に向く1 本目はここから。雇用形態や部署を問わずそのまま渡せる
自社の規程で定めている範囲(撮影してよい場所といけない場所、制服や社名入りの物の扱い、勤め先を名乗る場合の決まり、相談先と報告の流れ)規程の改定や 職場の変化で変わる向く。更新前提で本を分けておく共通編と別の本にし、改定のたびにその本だけ差し替える
会社の公式アカウントの運用ルール(担当者、投稿前の確認、問い合わせやコメントへの返し方)体制の変更で変わる向く。ただし対象は担当者に絞る全社向けとは別の本にし、担当者だけに渡す
個別の投稿への対応、削除の依頼、処分の判断、名誉や権利が関わる事案事案ごとに違う動画で決めるものではない教材では相談先と流れだけを示し、判断は所管部門と専門家へ

※ 何をどこまで教材に載せるか、どの範囲の人を対象とするかは、業種、職場の性質、雇用形態、自社の就業規則や規程の定めによって異なり、本ガイドでは判断できません。従業員の私的な発信に対して会社が求められる範囲には限りがあり、教材に書いたことがそのまま規程として効力を持つわけでもありません。規程として定める場合の内容と手続きは、自社の人事部門・法務部門や所管の専門家にご確認ください。

セクション 3

実務の進め方 — 社内で実際に寄せられた「迷い」から作る

SNS の教材でつまずきやすいのは、ネットで話題になった他所の騒ぎを並べ、「こうならないように」と締めくくる構成から作り始めてしまうパターンです。見る側には「自分は大丈夫」と受け止められやすく、投稿する瞬間には思い出されません。まずは、自社の中で実際に寄せられた迷いと相談を書き出すところから始めてください。教材の題材はすべてここから出てきます。

相談窓口と現場の責任者に、寄せられた迷いを聞く — 「職場の飲み会の写真を載せてよいか」「新しい制服を着た写真はどうか」「お客様から一緒に写真を撮ろうと言われた」「勤め先をプロフィールに書いてよいか」「同僚が投稿した写真に自分が写っていた」。多くの職場で、似た迷いが何度も出てきます。件数の多いものから 3 つか 4 つで十分です。誰が相談したかは記録せず、場面と迷った点だけを残してください。

1 本目は共通の考え方に絞る — 規程の条文を順に読み上げる構成にすると、長くなり、どこが大事かが伝わりません。まずは、写り込みと位置情報を確かめる/職場の人や来訪者を本人の了解なく載せない/取引先や業務の中身に触れない/迷ったら投稿前に相談する/一度出たものは消しても残ることがある――この五つだけで 1 本にすると、どの職場の誰にでもそのまま渡せます。規程の詳しい範囲や公式アカウントの話は、そのあとに別の本で足していけば十分です。

投稿前の一枚を、一緒に確かめる形で見せる — SNS の教材で効くのは、写り込みに気づく体験です。休憩室や作業場、店頭などで撮った架空の一枚を画面に出し、少し間を置いてから、背景の書類、画面、掲示物、名札、窓の外の看板などに印を入れて示してください。教材用の写真は撮影用に用意した場所と小道具で撮り、実在の書類や画面、取引先の名前が写らないようにします。人が映る場合は、撮られる人の同意と、社外に出さない前提の確認を先に取ります。実際の社員の投稿を例として使うことは避けてください。

「しないこと」と同じ重さで「相談の仕方」を見せる — 禁止事項だけを並べると、迷ったときに黙って投稿するか、黙って我慢するかの二択になります。教材の中で、誰に、どの手段で、どう聞けばよいかを、窓口の名前を入れて具体的に示してください。あわせて、問題のある投稿を見つけたとき(拡散しない・自分で反論しない・所管の窓口へ知らせる)と、自分が攻撃や誹謗中傷を受けたとき(一人で抱えない・記録を残す・相談する)の流れも扱うと、教材が「縛るもの」ではなく「困ったときに頼れるもの」として受け止められます。

場面で区切って短く作る — 「SNS のすべて」を 1 本にまとめると、自分に関係のない話が続き、途中で止められます。「共通編(働く全員向け)」「うちの職場の撮影と名乗り方の決まり編」「問題のある投稿を見つけたとき・攻撃を受けたとき編」「公式アカウント担当者編」のように区切っておくと、必要な本だけを渡せますし、規程を改定したときも差し替えが一部で済みます。ナレーションは、自分たちの声で録音する、台本から合成音声(TTS)で生成する、といった選択肢があります。規程の改定に合わせて一部だけ直して配り直したい場合や、日本語が母語でない方が働く職場で多言語版も用意したい場合は、台本を直せば作り直せる合成音声(TTS)が運用しやすい方式です。スマートフォンで見られることも多いため、字幕を併せて用意しておくと、音を出しにくい場所でも視聴の妨げになりません。

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研修動画の作り方 — 6 ステップの実務ガイド

SNS 利用ルールの教材も、企画 → 台本 → スライド → ナレーション → 書き出し → 配信という基本の流れは他の研修動画と同じです。台本の書き方やナレーションの選択肢の比較は、こちらの実務ガイドに整理しています。

研修動画の作り方を読む →

セクション 4

視聴記録をどう残すか

誰がどの教材を見たかを把握しておくと、働く全員に行き渡っているか、規程を改定したときの配り直しが届いたかを確認できます。残し方は大きく 2 つです。

動画を共有し、記録は既存の様式に残す(MP4 共有)

まず始めるなら

共有フォルダや社内ポータルに動画を置いて視聴してもらい、記録は入社時の書類や教育記録簿など、これまで使っている様式に残す運用です。追加のシステムが不要で、今の流れを変えずに始められます。動画の側では誰が視聴したかは残らないため、記録は従来の様式で押さえる形になります。入社手続きの書類と並べて「視聴した日」を記入してもらう運用にしている職場もあります。

LMS で受講状況を管理する(SCORM)

証跡を集約するなら

教材を SCORM 形式で LMS(学習管理システム)に登録すると、受講者ごとの完了状況や学習時間を LMS が自動で記録します。拠点や店舗が多く、雇用形態ごとにどこまで行き渡ったかを一覧で確認したい場合に向きます。無料・オープンソースの LMS もあり、まずは小さく試すこともできます。ただし記録に残るのは「見たかどうか」であり、その人が投稿前に立ち止まれるかどうかとは別のものです。記録の様式や保存期間が自社の規程で決まっている場合は、その基準にあわせて運用を整えてください。

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SCORM 1.2 入門ガイド

受講記録を残すうえで避けて通れないのが SCORM 規格です。SCORM とは何か、なぜ重要か、対応 LMS、書き出しの流れまでをまとめた入門ガイドをご用意しています。サンプル SCORM 1.2 パッケージも無料でダウンロードできます。

SCORM 1.2 入門ガイドを読む →

セクション 5

つまずきやすいポイント

SNS 利用ルールの研修を動画にするときに引っかかりやすい点を、先回りして 5 つ挙げておきます。

私的な発信そのものの是非に踏み込まない — 教材で扱えるのは、職場の情報、職場で撮った写真、職場の人や取引先、来訪者に関わる部分です。趣味の投稿や意見の表明、どの SNS を使うかといった私生活の中身にまで良し悪しを示すと、受け止められ方が変わり、肝心の部分も届かなくなります。会社としてどこまで求められるかは、自社の規程と人事部門・法務部門の判断に沿い、教材はその範囲の内側にとどめてください。

脅しで作らない — 他所の騒ぎを大きく映し、処分や損害賠償の話を前面に出す構成は、見た直後の緊張は生みますが、問題が起きたときに「言い出せない」空気もつくります。投稿してしまったあとに早く相談してもらえることのほうが、多くの場合は大切です。教材の中で「気づいたら、早めに相談してよい」と伝え、相談したことで不利に扱われないかどうかは自社の方針として先に整理しておいてください。

規程の代わりにしない — 教材の中で、何が禁止で何が許されるかを独自に言い切ると、規程と教材の二つの正本ができてしまいます。教材は「規程のどこに書いてあるか、誰に聞くか」を示す形にして、定めの中身は規程に置いてください。規程の文面が分かりにくいと感じたら、教材で言い換えるより、規程の側を見直すきっかけにしたほうが食い違いが起きません。

実在の投稿や人を例に使わない — 社内で実際にあった投稿や、他社の騒ぎで話題になった投稿をそのまま映すと、当事者が特定されたり、教材自体が二次的な拡散になったりするおそれがあります。例として見せる写真や投稿画面は、架空の内容で一から作り、実在のアカウント名・店名・人物が写らないようにしてください。他社の事例に触れる場合も、名前を出さず、どこに気をつければよかったかという一般的な形に置き換えます。

サービスや規程が変わったら教材も差し替える — 新しい SNS が広まった、位置情報や写真の扱いが変わった、規程を改定した、相談窓口が移った――このとき教材だけが以前の内容のまま残ると、見た人は存在しない窓口に連絡しようとします。自社の決まりを扱う本には、いつ時点の内容かを画面に入れておき、規程を改定する側から教材の担当に伝わる流れを決めてください。差し替えたら旧版は共有場所から下げ、どの版を見ればよいかが分かる状態にしておきます。

セクション 6

よくある質問

会社として、社員の SNS 利用を禁止したり、投稿を確認したりできますか?
本ガイドでは判断できません。従業員の社外での発信に会社がどこまで関与できるかは、業務との関わり方、雇用形態、自社の就業規則や規程の定めによって異なります。実務では、私的な発信そのものの是非ではなく、職場の情報や写真、職場の人や取引先に関わる部分に絞って教材を作り、迷ったときの相談先を示す形が取りやすい方法です。規程として定める場合の内容や手続きについては、人事部門・法務部門や社労士・弁護士など所管の専門家にご確認ください。
「情報漏えい防止・SNS 利用」の教材とは、どう使い分けますか?
扱う範囲が違います。業務端末の持ち出しや私物端末・外部サービスの利用を含め、情報の取り扱い全般を扱うのが「情報漏えい防止・SNS 利用の教育を動画で実施するには」、資料や投稿に使う画像・文章・フォントの扱いを扱うのが「著作権・素材利用のルールを動画で周知するには」です。本ガイドは、個人のアカウントでの発信に絞り、写り込みや位置情報、職場の人を載せるときの了解、問題のある投稿を見つけたときや攻撃を受けたときの相談の流れまでを扱う位置づけです。重なる部分もありますので、既存の教材がある領域はそちらを活かすと、作る本数を抑えられます。
パート・アルバイトや派遣の方にも同じ教材を使えますか?
共通編は、雇用形態を問わずそのまま使える内容にしておくのが扱いやすい方法です。ただし、規程の適用範囲や、派遣の方への教育を誰がどう行うかは、雇用形態や契約によって異なります。派遣の方については派遣元との役割分担があるため、所管の部門と派遣元にご確認ください。シフト制の職場では、勤務の前後に見られる短い本にしておくと行き渡りやすくなります。
社員が攻撃や誹謗中傷を受けたときのことも、教材で扱うべきですか?
扱っておくと、教材が「縛るもの」ではなく「困ったときに頼れるもの」として受け止められやすくなります。教材で示せるのは、一人で抱えない、反論や削除を急がずに記録を残す、所管の窓口に相談する、という流れと窓口の名前までです。個別の事案で会社としてどう対応するか、法的な手続きを取るかどうかは、事案ごとの判断が必要ですので、人事部門・法務部門や弁護士など所管の専門家にご確認ください。
日本語が母語でない方にも同じ教材を使えますか?
そのままでは届きにくい部分があります。SNS の決まりは「どこで撮ってよいか」「誰を載せてよいか」の組み合わせが多く、文章で説明すると取り違えが起きやすいところです。字幕を用意する、多言語版を作る、撮影してよい場所といけない場所は職場の写真と図で示す、写り込みの例は印を入れた写真で見せる、といった工夫が有効です。あわせて、迷ったときに誰へ声をかければよいかを教材の中で名指ししておくと、実際に困ったときに使われます。合成音声(TTS)で作っておくと、台本を訳して同じ構成の多言語版を用意しやすくなります。
どこから作ればよいですか?
まず、相談窓口や職場の責任者に寄せられた SNS の迷いを書き出してみてください。自社で多い場面が見えます。1 本目は、写り込みと位置情報を確かめる/職場の人や来訪者を本人の了解なく載せない/取引先や業務の中身に触れない/迷ったら投稿前に相談する/一度出たものは消しても残ることがある――という共通の考え方に絞ると、働く誰にでも配れる教材になります。次に「うちの職場の撮影と名乗り方の決まり編」、そして「問題のある投稿を見つけたとき・攻撃を受けたとき編」を足していくと、実際に必要な形になります。すべてを一度に作ろうとすると完成しないまま止まりがちです。

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