HARMONIC insight
📝 実務ガイド

職場の性の多様性(SOGI)理解研修を動画で実施するには
呼び方・相談窓口・個人の情報の扱いなど社内の決まりを、全社に同じ内容で届ける進め方

性的指向・性自認(SOGI)にかかわる侮辱的な言動や、本人の了解なく他の人に話してしまうこと(アウティング)は、職場のハラスメントに当たりうるものとして国の指針に挙げられています。ただ、言葉の意味の説明だけで研修が終わってしまい、自分の職場で何に気をつければよいのか、相談したいときや相談されたときにどこへつなげばよいのかまでは伝わっていない、ということは少なくありません。そこで、職場でしてはいけない言動、個人の情報の扱い、呼び方や制度・設備について相談するときの窓口と流れを、全従業員に同じ内容で届けて記録に残す ための進め方を整理します。人事やダイバーシティ推進の担当の方向けに、動画にできる部分とできない部分の切り分け、作る順番、構成時の注意点、視聴記録の残し方までを実務目線でまとめました。

所要時間:7 分 / 最終更新:2026 年 10 月

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セクション 1

なぜ SOGI 理解研修を動画にするのか

性の多様性についての研修は、話す人によって言葉の選び方や強調する点が変わりやすく、拠点や部署ごとに伝わり方がずれやすいテーマです。また、当事者がその場にいるかもしれないことを前提に、表現を慎重に選ぶ必要があります。動画にしておくと扱いやすくなる理由は、次の 3 つです。

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言葉を選び抜いた内容を、全員に同じ形で届けられる

集合研修では、講師の言い回しやその場の質問への答え方によって、意図しない受け取られ方をすることがあります。動画にしておけば、人事や相談窓口の担当者、必要に応じて社外の専門家とも表現を確かめたうえで、拠点・部署・入社時期を問わず同じ内容を届けられます。新しく入った人や異動してきた人にも、配属のときにそのまま渡せます。

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質問しにくいことを、それぞれの人が自分のペースで確かめられる

「この呼び方はよいのか」「相談されたら誰に伝えてよいのか」といった疑問は、大勢の前では聞きにくいものです。動画なら、一人で見返しながら確かめられます。見る人が自分の性的指向や性自認を明かすことなく受講できる点も、このテーマでは大切です。

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社内の制度や窓口が変わったときに、一部だけ差し替えられる

家族を対象にした制度の範囲、通称名の使い方、相談窓口の担当や連絡先は、見直されることがあります。研修全体を作り直すのは負担ですが、内容ごとに本を分けておけば、変わった制度や窓口の本だけを作り直して差し替えられます。

※ 本ガイドは、性の多様性にかかわる社内の決まりを動画教材として届ける方法を整理するものです。制度の事実は、労働施策総合推進法に基づくパワハラ防止の指針、セクハラ防止の指針、性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律(2023 年 6 月施行)の定め(2026 年 10 月確認)に触れていますが、何をどこまで行うべきか、個別の場面でどう対応するかは、自社の人事・法務部門や社会保険労務士・弁護士などの専門家にご確認ください。本ガイドは法的な助言や、個別の判断を示すものではありません。

セクション 2

扱う内容の種類と動画化の相性

「SOGI 理解研修」とひとことで言っても、その中身は、全員に共通の基本から、職場でしてはいけない言動と個人の情報の扱い、相談の窓口と社内の制度、個別の相談への対応まで幅があります。動画化との相性は内容によって大きく変わるため、まずどこを動画にするかを切り分けると、作る本数も見直しの手間も見通しが立ちます。

扱う内容変わりやすさ動画化との相性進めるときのポイント
全員に共通の基本(性的指向・性自認とは何か/見た目や話し方で決めつけない/誰もが当事者でありうる/職場の誰にとっても働きやすくするための話であること)あまり変わらない全従業員に同じ内容を届ける用途に向く1 本目はここから。用語の説明は短くし、職場での行動に結びつける
してはいけない言動と個人の情報の扱い(からかい・侮辱的な冗談、本人の了解なく他の人に話すこと、詮索、相談を受けた内容の扱い)社内規程の見直しで変わる向く。ありがちな場面として見せられる社内のハラスメント防止の規程と言葉をそろえる。場面は架空の設定で作る
相談の窓口と社内の制度(相談先と連絡のしかた、秘密の守られ方、通称名・呼び方・服装・設備の使い方について話し合う流れ、家族を対象にした制度の範囲)制度や担当の変更で変わる向く。流れを図にして見せられる決まっていないことは決まっていないと書き、「相談して一緒に決める」流れを示す
個別の相談への対応そのもの、一人ひとりの事情に合わせた配慮の中身の判断人ごとに違う動画で代えられるものではない教材では「誰に相談すればよいか」「相談を受けたら誰につなぐか」だけを示す

※ 何をどこまで教材に載せるか、どの制度を設けるかは、業種、職場の設備、社内規程、労使の話し合いなどによって異なり、本ガイドでは判断できません。教材の内容が社内の規程や窓口の運用と食い違わないよう、人事・法務部門と相談窓口の担当者と確かめてから作ってください。

セクション 3

実務の進め方 — 「職場で迷った場面」から作る

この教材でつまずきやすいのは、用語の解説と一般的な知識だけで作ってしまうパターンです。知識は増えても、自分の職場で何をすればよいのか、何をしてはいけないのかは伝わらないまま終わります。そろえたいのは、全員が同じ考え方で振る舞い、相談したい人も相談された人も、同じ窓口と流れにたどり着けることです。まずは、自社の職場で実際に迷った場面を集めるところから始めてください。

職場で迷った場面を、先に書き出す — 人事や相談窓口の担当者、管理職に、これまでに対応に迷った場面や受けた質問を、個人が分からない形で書き出してもらいます。「飲み会の雑談で、恋人や結婚のことを当然のように聞いてしまった」「相談された内容を、よかれと思って上司に伝えてしまった」「通称名を使いたいと言われたが、社内のどの書類を変えられるのか分からなかった」といった、自社で起こりうる場面が集まります。ここで集めた場面が、そのまま教材の骨組みになります。

1 本目は全員に共通の基本に絞る — 用語や背景の知識をすべて盛り込もうとすると長くなり、職場での行動に結びつきません。まずは、見た目や話し方で決めつけない/からかいや侮辱的な冗談を言わない・笑わない/本人の了解なく他の人に話さない/迷ったら相談窓口へ――この四つほどで 1 本にすると、全従業員にそのまま渡せます。

場面は架空の設定で、ありがちな日常として見せる — 社内で実際にあった出来事をそのまま使うと、誰のことか分かってしまうおそれがあります。場面は架空の部署・架空の人物で組み立て、雑談・面談・書類の手続きといった、どの職場にもある日常のやりとりとして見せてください。人物を特定の見た目や話し方で描かないことも大切です。スライドに図や吹き出しで示し、ナレーションで補う形にすると、出演者を立てずに作れます。

対象ごとに本を分ける — 全従業員が知っておくこと、管理職や相談窓口の担当者が相談を受けたときに守ること、制度の手続きを受け持つ人事の担当者が知っておくことは別物です。1 本にまとめると、どの人にも関係の薄い話が続きます。「共通編(全従業員向け)」「相談対応編(管理職・相談窓口向けの聞き方と、つなぎ先と、秘密の守り方)」「制度編(通称名・呼び方・服装・設備・家族を対象にした制度の相談の流れ)」のように区切っておくと、必要な本だけを渡せますし、制度が変わったときも差し替えが一部で済みます。

変わりやすい部分を、本編と分けておく — 相談窓口の担当や連絡先、制度の範囲は、見直しのたびに変わります。本編は考え方と流れを中心にし、窓口の連絡先や制度の一覧は短い本や別の資料にまとめておくと、作り直す範囲が小さくなります。ナレーションは、自分たちの声で録音する、台本から合成音声(TTS)で生成する、といった選択肢があります。言葉の選び方を何度も確かめながら直したい場合や、外国籍の従業員向けに多言語版も用意したい場合は、台本を直せば作り直せる合成音声(TTS)が運用しやすい方式です。

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研修動画の作り方 — 6 ステップの実務ガイド

SOGI 理解研修の教材も、企画 → 台本 → スライド → ナレーション → 書き出し → 配信という基本の流れは他の研修動画と同じです。台本の書き方やナレーションの選択肢の比較は、こちらの実務ガイドに整理しています。

研修動画の作り方を読む →

セクション 4

視聴記録をどう残すか

誰がどの教材を見たかを把握しておくと、新しく入った人や管理職になった人に漏れなく届いたかを確認でき、ハラスメント防止の周知・啓発を行った記録としても役に立ちます。残し方は大きく 2 つです。いずれの場合も、記録するのは「誰がいつ見たか」までにとどめ、見た人の感想やアンケートの答えを個人が分かる形で集めないよう注意してください。

動画を共有し、記録は既存の様式に残す(MP4 共有)

まず始めるなら

社内ポータルや共有フォルダに動画を置いて視聴してもらい、記録はハラスメント研修の受講記録や確認の署名など、これまで使っている様式に残す運用です。追加のシステムが不要で、今の流れを変えずに始められます。動画の側では誰が視聴したかは残らないため、記録は従来の様式で押さえる形になります。

LMS で受講状況を管理する(SCORM)

証跡を集約するなら

教材を SCORM 形式で LMS(学習管理システム)に登録すると、受講者ごとの完了状況や学習時間を LMS が自動で記録します。拠点や勤務が分かれていて、誰に届いたかを一覧で確認したいときに向きます。無料・オープンソースの LMS もあり、まずは小さく試すこともできます。相談対応編のように対象者が限られる本も、同じ仕組みで誰に届いたかを確認できます。

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SCORM 1.2 入門ガイド

受講記録を残すうえで避けて通れないのが SCORM 規格です。SCORM とは何か、なぜ重要か、対応 LMS、書き出しの流れまでをまとめた入門ガイドをご用意しています。サンプル SCORM 1.2 パッケージも無料でダウンロードできます。

SCORM 1.2 入門ガイドを読む →

セクション 5

つまずきやすいポイント

SOGI 理解研修を動画にするときに引っかかりやすい点を、先回りして 5 つ挙げておきます。

教材づくりの過程で、個人の情報を広げない — 場面を集めるときに、「あの人のことだ」と分かる形で話が回ってしまうと、教材づくりそのものがアウティングになりかねません。書き出してもらう場面は個人が分からない形にし、集めた記録を見られる人を限ってください。社内の当事者に内容を見てもらう場合も、本人の了解を得たうえで、その人が誰かを周りに知られない形で進めます。

決まっていないことを、決まっているように見せない — 通称名の使い方、服装、トイレや更衣室などの設備の使い方は、職場の設備や一人ひとりの事情によって答えが変わり、一律には決めていない会社もあります。教材で「こうしなければならない」と言い切ると、本人と話し合う余地をなくしてしまいます。決まっていることは決まっていると、決まっていないことは「相談窓口に相談し、一緒に決める」と、分けて示してください。

からかいや決めつけの例を、笑いの演出にしない — してはいけない言動を示す場面を、コミカルな演出や大げさな人物像で描くと、それ自体が偏った見方を広げてしまいます。場面は淡々と、日常のやりとりとして示し、どこがいけないのか、どう言い換えればよいのかを落ち着いた言葉で添えてください。

相談された人の動き方まで示す — 全員向けの教材が「理解しましょう」で終わると、実際に打ち明けられた人がどうすればよいか分からず、よかれと思って他の人に話してしまうことがあります。相談されたら、まず本人の話を聞く/誰に伝えてよいかを本人に確かめる/本人の了解を得て窓口へつなぐ――という順番を、共通編の中でも短く示しておいてください。

制度や窓口が変わったあとも、古い本を残さない — 相談窓口の担当や連絡先、制度の範囲が変わったのに古い動画が残っていると、相談したい人が間違った窓口にたどり着いてしまいます。いつ時点の内容かを画面に入れ、制度や窓口を変えたときは該当する本を見直して、旧版は共有場所から下げる担当を決めてください。

セクション 6

よくある質問

SOGI 理解研修は、動画だけで足りますか?
動画で担えるのは、全員に共通の基本と、職場でしてはいけない言動・個人の情報の扱い・相談の窓口と流れを、同じ内容で繰り返し届けるところまでです。相談を受けたときの聞き方や、一人ひとりの事情に合わせた配慮の中身は、相談窓口や人事の担当者が個別に対応するものです。動画は周知と啓発の入口に使い、相談の受け皿と組み合わせて運用してください。何をどこまで行うべきかは、自社の人事・法務部門や専門家にご確認ください。
ハラスメント研修とは、どう使い分けますか?
扱う範囲が違います。パワハラ・セクハラ・マタハラなど、職場のハラスメント防止全般の方針と対応を扱うのが「ハラスメント研修を動画で実施するには」です。本ガイドは、そのうち性的指向・性自認にかかわる言動と個人の情報の扱い、相談の窓口と社内の制度に絞った位置づけです。ハラスメント研修の一つの章として組み込む形も、別の本として渡す形も取れます。
管理職向けには、別の本を作ったほうがよいですか?
相談対応編を分けて作ることをおすすめします。管理職は部下から打ち明けられたり、配置や出張・制度の手続きで個人の事情にかかわったりする機会があるため、聞き方、誰に伝えてよいかの確かめ方、窓口へのつなぎ方を具体的に知っておく必要があります。管理職向けのハラスメント防止全般は「管理職向けハラスメント研修を動画で実施するには」も参考になります。
研修の後に、理解度のアンケートを取ってもよいですか?
取ることはできますが、聞き方と集め方に注意が必要です。受講者自身の性的指向や性自認を推し量れるような設問は避け、答えは個人が分からない形で集めてください。確かめたいのが内容の理解であれば、「相談されたら最初にすること」「相談窓口はどこか」といった、職場での行動にかかわる設問にとどめるのが無難です。
外国籍の従業員にも同じ教材を使えますか?
使えます。字幕を用意する、多言語版を作る、といった工夫が有効です。合成音声(TTS)で作っておくと、台本を訳して同じ構成の多言語版を用意しやすくなります。言葉の選び方の受け取られ方は言語や文化によって違うことがあるため、訳した台本はその言語が分かる社内の人にも確かめてもらうと安心です。
どこから作ればよいですか?
まず、人事や相談窓口の担当者、管理職に、これまでに対応に迷った場面や受けた質問を、個人が分からない形で書き出してもらってください。自社で起こりうる場面が集まります。1 本目は、見た目や話し方で決めつけない/からかいや侮辱的な冗談を言わない・笑わない/本人の了解なく他の人に話さない/迷ったら相談窓口へ――という共通の基本で作ると、全従業員に配れる教材になります。次に管理職と相談窓口向けの相談対応編、制度の相談の流れをまとめた制度編を足していくと、実際に必要な形になります。

ご紹介

社内の研修教材づくりに使えるツールのご紹介

当社の Insight Training Studio は、PowerPoint を素材として研修・教育動画を作成するデスクトップアプリです。全員に共通の基本と、してはいけない言動・個人の情報の扱い・相談の窓口と流れをスライドに整理し、解説をスピーカーノートに台本として集約 → 合成音声でナレーション生成 → MP4 書き出し、受講記録が必要なら SCORM 1.2 でパッケージ出力、という本ガイドの流れをそのまま 1 つのアプリ内で進められます。出演者を立てずにスライドとナレーションだけで作れるため、言葉の選び方を確かめながら何度でも直せます。無料版をご用意していますので、まずは共通編の 1 本からお試しください。

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