情報機器作業(VDT)の健康管理の教育を動画で実施するには
パソコン作業の姿勢・休止・照明の基本を、事務職の全員に同じ内容で届ける進め方
パソコンやタブレットを使う仕事は、いまや事務職だけでなく、設計・営業・現場の管理など多くの職種に広がっています。一方で、「安全衛生の教育は現場の人のもので、事務職には関係ない」と受け止められやすく、入社時に椅子の高さを一度説明されたきり、という職場も少なくありません。目の疲れや肩・首のこり、腰の痛みは少しずつ積み重なるため、本人も気づきにくく、気づいたときには「仕方がない」と我慢している、という声もよく聞かれます。在宅勤務が増え、食卓やソファで長時間作業している人がいても、職場からは見えにくくなりました。そこで、姿勢と目の負担についての共通の考え方と、自分の席で椅子・机・画面を合わせる手順、自社で決めている休止の取り方と相談先を、事務職の全員に同じ内容で繰り返し届けて記録に残す ための進め方を整理します。人事労務・安全衛生の担当者の方向けに、動画にできる部分とできない部分の切り分け、職場の実際の席から作る手順、構成時の注意点、視聴記録の残し方までを実務目線でまとめました。
所要時間:7 分 / 最終更新:2026 年 10 月
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セクション 1
なぜ情報機器作業の健康管理の教育を動画にするのか
情報機器作業の健康管理は、対象となる人が多く、勤務地や働き方もばらばらになりやすいテーマです。集合研修で一度説明するだけでは届きにくく、動画にしておくと扱いやすくなる理由は、次の 3 つです。
椅子・机・画面の「合わせ方」を、手順として目で見せられる
椅子の座面の高さ、背もたれの角度、画面までの距離や高さ、キーボードの位置。言葉で「適切に調整しましょう」と伝えても、どこをどう動かせばよいかは伝わりません。人によって体格も席も違うため、決まった数値を覚えるより、自分の体に合わせて確かめる手順が大切です。動画なら、実際の椅子のどのレバーを触るのか、座ったときに足の裏や肘がどうなっていればよいのかを、順に見せられます。
オフィスにも在宅勤務にも、入社や異動の時期にかかわらず同じ内容を渡せる
情報機器作業をする人は部署をまたいで広く、在宅勤務やサテライトオフィスで働く人もいます。集合研修に全員を集めるのは難しく、年の途中で入社する人や異動してきた人には説明が届かないまま、ということも起きがちです。動画にしておけば、勤務地や時期にかかわらず同じ説明から始められ、自宅の作業環境を見直すきっかけも同じ内容で渡せます。
見返せて、机や機器が変わったら差し替えられる
目の疲れや肩のこりは、気になり始めたときに見返せることに意味があります。短い動画にしておけば、席替えや機器の入れ替えのあとに見直してもらえます。フリーアドレスを始めた、モニターアームを入れた、ノートパソコン中心の働き方に変えた――そのときは、変わった部分を扱う本だけを差し替えて配り直せます。
※ 本ガイドは、情報機器作業にまつわる健康管理の考え方と社内の決まりを動画教材として届ける方法を整理するものです。厚生労働省の「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」では、作業環境や作業時間の管理、健康管理とあわせて、作業者や管理者への労働衛生教育についても示されています。作業時間や休止の取り方、健康診断の扱いなど具体的な運用は、最新のガイドラインと自社の安全衛生管理部門・産業医の判断に沿って決めてください。動画の視聴だけでガイドラインで求められる管理が満たされるかどうかは、本ガイドでは判断できません。
セクション 2
扱う内容の種類と動画化の相性
「情報機器作業の健康管理の教育」とひとことで言っても、その中身は、どの職場にも共通する考え方から、席ごとの合わせ方、自社の休止の決まりや在宅勤務の環境、一人ひとりの症状への対応まで幅があります。動画化との相性は内容によって大きく変わるため、まずどこを動画にするかを切り分けると、作る本数も更新の手間も見通しが立ちます。
| 扱う内容 | 変わりやすさ | 動画化との相性 | 進めるときのポイント |
|---|---|---|---|
| 共通の考え方(同じ姿勢を続けない/画面を見続けずに目を休める/体に合わせて席を整える/照明や映り込みに気を配る/不調は我慢せず早めに相談する) | 変わりにくい | 情報機器作業をする全員に同じ内容を届ける用途に向く | 1 本目はここから。部署や働き方を問わずそのまま渡せる |
| 自分の席で合わせる手順(椅子の高さと背もたれ、机と画面の位置、キーボードとマウス、ノートパソコンを使うときの工夫) | 机・椅子・機器の入れ替えで変わる | 向く。実際の席で手順を順に見せられる | 自社で使っている椅子や机で撮る。機器を入れ替えたらここだけ差し替える |
| 自社の決まりと在宅勤務の環境(休止の取り方、会議が続くときの工夫、在宅勤務の席の整え方、備品の貸し出しや申請の窓口) | 働き方や制度の見直しで変わる | 向く。ただし人事・総務との作り込みが必要 | 制度の担当と内容をそろえる。在宅勤務の本はオフィスの本と分ける |
| 一人ひとりの症状への対応、健康診断の結果にもとづく措置、作業の制限 | 人ごとに違う | 動画で決めるものではない | 教材では「不調を感じたら相談する先」だけを示し、判断は産業医・医療機関や健康管理の担当で |
※ 何をどこまで教材に載せるか、どの範囲の人を対象とするかは、会社の規模、職種、働き方、社内の決まりによって異なり、本ガイドでは判断できません。作業時間の管理や健康診断の扱いは、ガイドラインと社内の安全衛生の定めが優先します。教材の内容が社内の制度や産業医の方針と食い違わないよう、人事労務・安全衛生の担当や産業医と確かめてから作ってください。
セクション 3
実務の進め方 — 「自分の席で合わせられなかった理由」から作る
情報機器作業の教材でつまずきやすいのは、目や筋肉の仕組み、望ましい姿勢の図、気をつけることの一覧から作り始めてしまうパターンです。内容として正しくても、見た人が自分の席に戻ったときに何も変えられなければ、行動は変わりません。まずは、職場で実際に「合わせられていない」「休めていない」理由を聞き出すところから始めてください。教材の題材はすべてここから出てきます。
実際の席を見て、働いている人に聞く — 安全衛生の担当や総務の側からは「椅子は調整できるようにしてある」と見えていても、働いている人からは「レバーの場所を知らなかった」「フリーアドレスで毎朝合わせ直すのが面倒」「画面を上げる台がない」「ノートパソコンだと画面が低くなる」「会議が続いて席を立つ間がない」という声が出てきます。多いものから 3 つか 4 つで十分です。誰がそう言ったかは記録せず、場面と理由だけを残してください。
1 本目は共通の考え方と、席に着いてすぐできることに絞る — 目の仕組み、筋肉の解剖、照明の基準、体操の種類まで網羅しようとすると、長くなり、何をすればよいかが伝わりません。まずは、同じ姿勢を続けない/画面から目を離す時間をつくる/自分の体に合わせて席を整える/不調は我慢せず相談する――この四つほどと、座ったその場で確かめられる点で 1 本にすると、部署を問わずそのまま渡せます。席ごとの手順や在宅勤務の環境は、そのあとに別の本で足していけば十分です。
「自分の席で合わせる」手順を、実際の椅子と机で見せる — 教材の中心は、正しい姿勢の図よりも、自分の席で何をどの順に動かすかです。椅子の座面を上げ下げして足の裏が床につくか確かめる、背もたれに寄りかかったときに画面が見やすい距離か確かめる、画面の上端と目の高さの関係を見る、窓や照明が画面に映り込んでいないかを座った位置から見る――といった流れを、自社で実際に使っている椅子・机・モニターで撮ってください。体格の違う何人かに出てもらうと、「人によって合わせ方が違う」ことが伝わります。社員に出てもらう場合は、出演と社内配信について本人の了承を取っておきます。
オフィスと自宅の両方の席を、同じ重さで扱う — 在宅勤務では、食卓やソファ、低いローテーブルで作業していることがあり、オフィスより負担がかかりやすい場合もあります。オフィスの席の本と同じ流れで、自宅にあるものでどう工夫できるか(クッションで座面を調整する、ノートパソコンの下に台を置いて外付けのキーボードを使う、など)を見せる本を用意してください。社員の自宅を撮る代わりに、教材用に用意した部屋で撮ると、私生活が映り込む心配もありません。
対象で区切って短く作る — 「情報機器作業のすべて」を 1 本にまとめると、自分に関係のない話が続き、途中で止められます。「共通編(全員向け)」「席の合わせ方編(オフィス)」「在宅勤務編」「管理者編(休止を取りやすくする職場の工夫)」のように区切っておくと、必要な本だけを渡せますし、机や機器、制度が変わったときも差し替えが一部で済みます。ナレーションは、自分たちの声で録音する、台本から合成音声(TTS)で生成する、といった選択肢があります。一部だけ直して配り直したい場合や、外国籍の社員向けに多言語版も用意したい場合は、台本を直せば作り直せる合成音声(TTS)が運用しやすい方式です。
研修動画の作り方 — 6 ステップの実務ガイド
情報機器作業の教材も、企画 → 台本 → スライド → ナレーション → 書き出し → 配信という基本の流れは他の研修動画と同じです。台本の書き方やナレーションの選択肢の比較は、こちらの実務ガイドに整理しています。
研修動画の作り方を読む →セクション 4
視聴記録をどう残すか
誰がどの教材を見たかを把握しておくと、年の途中で入社した人や在宅勤務の人に行き渡っているか、席や機器を変えたときの配り直しが届いたかを確認できます。残し方は大きく 2 つです。
動画を共有し、記録は既存の様式に残す(MP4 共有)
まず始めるなら共有フォルダや社内ポータルに動画を置いて視聴してもらい、記録は入社時の研修記録や安全衛生教育の記録簿など、これまで使っている様式に残す運用です。追加のシステムが不要で、今の流れを変えずに始められます。動画の側では誰が視聴したかは残らないため、記録は従来の様式で押さえる形になります。在宅勤務の開始時や席替えのときに見てもらう運用にしておくと、抜け漏れを防ぎやすくなります。
LMS で受講状況を管理する(SCORM)
証跡を集約するなら教材を SCORM 形式で LMS(学習管理システム)に登録すると、受講者ごとの完了状況や学習時間を LMS が自動で記録します。拠点や部署が多く、在宅勤務の人も含めて行き渡りを一覧で確認したい場合に向きます。無料・オープンソースの LMS もあり、まずは小さく試すこともできます。管理者編を管理職研修に組み込む場合も、同じ仕組みで記録をまとめて確認できます。
SCORM 1.2 入門ガイド
受講記録を残すうえで避けて通れないのが SCORM 規格です。SCORM とは何か、なぜ重要か、対応 LMS、書き出しの流れまでをまとめた入門ガイドをご用意しています。サンプル SCORM 1.2 パッケージも無料でダウンロードできます。
SCORM 1.2 入門ガイドを読む →セクション 5
つまずきやすいポイント
情報機器作業の健康管理の教育を動画にするときに引っかかりやすい点を、先回りして 5 つ挙げておきます。
医学的な判断を教材でしない — 目の疲れや肩・首・腰の痛み、手のしびれ、頭痛などは、情報機器作業以外の原因で起きていることもあります。教材の中で「この症状ならこれをすれば治る」「この体操で予防できる」と言い切ると、受診が遅れたり、合わない対処を続けたりするおそれがあります。教材では、不調を感じたら我慢せずに相談してよいことと、相談先(健康管理の担当、産業医、医療機関)を示すところまでにとどめてください。体操やストレッチを入れる場合は、産業医や保健師に内容を確認してもらい、痛みがあるときは無理をしないことも添えます。
「休止を取りましょう」で終わらせない — 作業の合間に目や体を休めることは大切ですが、教材で勧めるだけで、会議が続く・電話番がある・締め切り前で席を立ちにくいといった職場の事情に答えていないと、見た人は「そうは言っても無理」で終わります。休止の取り方は職場で決め、管理者編で「休止を取りやすくするために上司ができること」(会議の間に区切りを入れる、長時間の連続作業を前提にした割り振りを見直す、など)を扱ってください。具体的な時間の目安はガイドラインと自社の決まりに沿って示し、教材の中で独自の数字を作らないようにします。
「姿勢を正しく」を一つの型で押しつけない — 体格や視力、使う機器、仕事の内容によって、楽な姿勢や画面の位置は人それぞれです。理想の姿勢の図を一つだけ示して「この形に合わせましょう」と伝えると、合わない人は無理な姿勢を続けたり、「自分には関係ない」と受け止めたりします。教材では、確かめる点(足の裏が床につくか、肩が上がっていないか、画面がまぶしくないか)と、その確かめ方を示し、合わせ方は人によって違ってよいことを伝えてください。眼鏡やコンタクトレンズが画面の距離に合っているかも、確かめる点の一つとして挙げられます。
整えられない席を、本人の工夫だけで片づけない — 椅子の高さが合わない、画面を上げる台がない、在宅勤務の机が低い。こうした問題を「工夫して乗り切りましょう」とだけ伝えると、備品や環境の側で直すべきことが本人に押しつけられます。備品の貸し出しや申請の窓口、在宅勤務の環境についての相談先が自社にあるなら、教材の中で示してください。制度がまだない場合は、教材を作る過程で見えた要望を人事・総務に伝えることも、担当者の大切な仕事です。
机や機器、働き方が変わったら教材も差し替える — フリーアドレスを始めた、モニターやノートパソコンを入れ替えた、在宅勤務の制度を変えた――このとき教材だけが以前の席や機器のまま残ると、見た人は今の席で何をすればよいかが分かりません。席の合わせ方編と在宅勤務編には、いつ時点の内容かを画面に入れておき、備品や制度を変える側から教材の担当に伝わる流れを決めてください。差し替えたら旧版は共有場所から下げ、どの版を見ればよいかが分かる状態にしておきます。
セクション 6
よくある質問
情報機器作業の健康管理の教育は、動画だけで足りますか?
メンタルヘルスの研修や、安全衛生教育とはどう使い分けますか?
在宅勤務の人の自宅の環境まで、会社が教材で扱ってよいのでしょうか?
現場の職員や、タブレットを持ち歩く職種にも同じ教材を使えますか?
外国籍の社員にも同じ教材を使えますか?
どこから作ればよいですか?
ご紹介
社内の研修教材づくりに使えるツールのご紹介
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