来訪者・協力会社の受け入れルールの教育を動画で実施するには
入構の手続き・立ち入ってよい範囲・案内役の決まりを、受け入れる側の全員に同じ内容で届ける進め方
工場や事業所には、商談や見学の来訪者、設備の点検や修理に来る業者、構内で工事や清掃を請け負う協力会社など、毎日のようにさまざまな人が出入りします。受付で何を確かめ、どこまで入ってもらってよいか、誰が付き添うかといった決まりは多くの会社にありますが、受付の担当や来訪者を呼んだ部署の人がその決まりを同じように理解しているとは限りません。そこで、受付と入構の手続き、立ち入ってよい範囲と撮影・持ち込みの決まり、案内役と発注する部署の動き方を、受け入れる側の全員に同じ内容で届けて記録に残す ための進め方を整理します。総務や安全担当、工場の管理部門で受け入れの決まりを受け持つ方向けに、動画にできる部分とできない部分の切り分け、作る順番、構成時の注意点、視聴記録の残し方までを実務目線でまとめました。
所要時間:7 分 / 最終更新:2026 年 11 月
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セクション 1
なぜ受け入れのルールの教育を動画にするのか
受け入れの決まりは、受付の担当だけが知っていればよいものではありません。来訪者を呼ぶのも、協力会社に作業を頼むのも、各部署の一人ひとりです。部署も勤務も分かれた人たちに同じ内容を届けたいとき、動画にしておくと扱いやすくなる理由は、次の 3 つです。
来訪者を呼ぶ人・付き添う人の全員に、同じ決まりを届けられる
受付で入構の手続きをしても、そのあと構内を案内するのは来訪者を呼んだ部署の人です。案内役が立ち入ってよい範囲を知らなければ、来訪者を危険な場所や見せてはいけない場所に連れて行ってしまうことがあります。動画にしておけば、配属のとき、初めて来訪者を受け持つとき、定期の見直しのときに同じ内容を渡し、誰に届いたかを残しておけます。
通ってよい道と、入ってはいけない場所を、実際の構内で示せる
「来訪者は指定の通路を通る」「生産エリアには付き添いなしで入れない」と規程に書いてあっても、どこからが生産エリアなのか、どの通路が来訪者用なのかまでは、文字だけでは伝わりません。動画なら、受付から応接室や作業場所までの道順、立入禁止の表示、保護具を着ける場所を、自社の構内の映像として見せられます。撮影のときは、映ってはいけない設備や書類、従業員の顔が入らないよう、撮る範囲を先に決めてください。
建屋の配置や決まりが変わったときに、一部だけ差し替えられる
建屋の新設や改修、通路の変更、入館の仕組みの入れ替えがあると、受け入れの決まりも見直されます。資料を配り直したり説明会を開き直したりするのは負担ですが、動画を内容ごとに分けておけば、変わった部分の本だけを作り直して差し替えられます。
※ 本ガイドは、来訪者や協力会社の受け入れにかかわる社内の決まりを動画教材として届ける方法を整理するものです。制度の事実は労働安全衛生法の定め(2026 年 11 月確認)に触れていますが、動画教材は、同じ場所で作業するときの連絡・調整や、作業ごとの安全の取り決めの代わりになるものではありません。自社にどの定めがかかわるか、協力会社との取り決めの具体的な内容は、自社の安全衛生管理部門や法務部門、所轄の労働基準監督署にご確認ください。本ガイドは法的な助言や、個別の判断を示すものではありません。
セクション 2
扱う内容の種類と動画化の相性
「受け入れのルール」とひとことで言っても、その中身は、受け入れで守る共通の考え方から、自社の入構手続きと立ち入ってよい範囲、案内役と発注する部署の動き方、個別の工事や作業の安全の取り決めまで幅があります。動画化との相性は内容によって大きく変わるため、まずどこを動画にするかを切り分けると、作る本数も見直しの手間も見通しが立ちます。
| 扱う内容 | 変わりやすさ | 動画化との相性 | 進めるときのポイント |
|---|---|---|---|
| 受け入れで守る共通の考え方(来る人は必ず受付を通す/付き添いなしで決められた範囲の外に出さない/入構と退出を記録に残す/おかしいと思ったら案内役か受付に知らせる) | あまり変わらない | 受け入れる側の全員に同じ内容を届ける用途に向く | 1 本目はここから。部署を問わずそのまま渡せる |
| 自社の入構手続きと立入範囲(受付で確かめること、入構証の渡し方と返し方、来訪者が通ってよい通路と入れない場所、撮影・録音・持ち込みの決まり、保護具の貸し出し) | 建屋の配置や入館の仕組みの変更で変わる | 向く。道順と表示を構内の映像で見せられる | 事業所ごとに違う決まりをこの段階で洗い出す。変わったらここだけ差し替える |
| 案内役と発注する部署の動き方(来訪者を呼ぶ前の連絡、付き添うときの立ち位置と離れてよい場面、構内で作業する協力会社との作業の連絡と調整、作業前に伝えておく危険の情報) | 組織や担当の変更で変わる | 向く。呼ぶ前から退出までを場面として見せられる | 誰が何をするかを役割ごとに示す。連絡の様式は既存のものをそのまま映す |
| 個別の工事・作業の安全の取り決めそのもの、作業計画や作業許可の判断、協力会社との契約の内容 | 工事・作業ごとに違う | 動画で代えられるものではない | 教材では「どこで決めるか」「誰に確かめるか」だけを示す |
※ 何をどこまで教材に載せるか、誰を対象とするかは、業種、事業所の規模と配置、扱う設備や化学物質、来訪者や協力会社の種類、自社の安全衛生管理と情報管理の定めなどによって異なり、本ガイドでは判断できません。教材の内容が事業所の決まりと食い違わないよう、総務・安全衛生管理部門と各事業所の責任者と確かめてから作ってください。
セクション 3
実務の進め方 — 「受け入れで困った場面」から作る
この教材でつまずきやすいのは、入館の規程を読み上げる形で作ってしまうパターンです。規程の条文はひととおり伝わっても、来訪者を目の前にしたときにどう動けばよいかは伝わらないまま終わります。そろえたいのは、どの部署の人が受け入れても、同じ手続きで迎え、同じ範囲までしか案内せず、同じように退出まで見届けることです。まずは、自社で実際に受け入れで困った場面を集めるところから始めてください。
受け入れで困った場面を、先に書き出す — 受付の担当、総務や安全担当、来訪者をよく呼ぶ部署の人に、これまでに困った場面を書き出してもらいます。「来訪者が案内役を待たずに構内に入ってしまった」「点検の業者がどの設備を止めてよいか知らないまま作業を始めかけた」「見学の人がスマートフォンで生産ラインを撮っていた」「入構証が返ってこないまま、退出したのか分からなくなった」といった、規程には書かれていない自社の場面が集まります。ここで集めた場面が、そのまま教材の骨組みになります。
1 本目は共通の考え方に絞る — 受け入れの決まりをすべて盛り込もうとすると長くなり、規程の読み上げになります。まずは、来る人は必ず受付を通す/付き添いなしで決められた範囲の外に出さない/入構と退出を記録に残す/おかしいと思ったら案内役か受付に知らせる――この四つほどで 1 本にすると、受付の担当にも、来訪者を呼ぶ各部署の人にもそのまま渡せます。
受付から退出までを、順に見せる — 来訪の前の連絡、受付での確認と入構証の受け渡し、保護具の着け方と注意の説明、案内役と一緒に通る通路、立入禁止の表示のある場所、作業や打ち合わせのあいだの付き添い方、退出のときの入構証の返却と記録。1 回の受け入れの流れを、自社の構内の配置で順に映してください。どこで誰が何を確かめるのかがひと目で分かれば、言葉の説明は短くて済みます。
対象ごとに本を分ける — 受付の担当が知っておくこと、来訪者を呼んで付き添う人が守ること、構内で作業する協力会社を手配する部署が押さえておくことは別物です。1 本にまとめると、どの人にも関係の薄い話が続きます。「共通編(受け入れにかかわる全員向け)」「案内役編(来訪者に付き添う人向けの道順と付き添い方)」「発注編(構内で作業する協力会社を手配する部署向けの連絡と調整)」のように区切っておくと、必要な本だけを渡せますし、決まりが変わったときも差し替えが一部で済みます。来る人に事前に見てもらう短い本を別に用意しておくと、受付での説明も短くなります。
変わりやすい部分を、本編と分けておく — 通路の配置、入構証の仕組み、受付の場所や時間は、建屋の改修や仕組みの入れ替えのたびに変わります。本編は考え方と流れを中心にし、事業所ごとの配置は短い本にまとめておくと、作り直す範囲が小さくなります。ナレーションは、自分たちの声で録音する、台本から合成音声(TTS)で生成する、といった選択肢があります。決まりが変わるたびに一部だけ直したい場合や、海外からの来訪者や外国籍の作業者向けに多言語版も用意したい場合は、台本を直せば作り直せる合成音声(TTS)が運用しやすい方式です。
研修動画の作り方 — 6 ステップの実務ガイド
受け入れのルールの教材も、企画 → 台本 → スライド → ナレーション → 書き出し → 配信という基本の流れは他の研修動画と同じです。台本の書き方やナレーションの選択肢の比較は、こちらの実務ガイドに整理しています。
研修動画の作り方を読む →セクション 4
視聴記録をどう残すか
誰がどの教材を見たかを把握しておくと、配属された人や初めて来訪者を受け持つ人に漏れなく届いたか、協力会社を手配する部署に届いたかを確認できます。決まりを見直したときに、改めて見てもらう人を絞る手がかりにもなります。残し方は大きく 2 つです。
動画を共有し、記録は既存の様式に残す(MP4 共有)
まず始めるなら共有フォルダや社内ポータルに動画を置いたり、部署の朝礼や安全ミーティングで流したりして視聴してもらい、記録は教育の実施記録や受講者の名簿など、これまで使っている様式に残す運用です。追加のシステムが不要で、今の流れを変えずに始められます。動画の側では誰が視聴したかは残らないため、記録は従来の様式で押さえる形になります。来る人向けの短い本は、来訪の案内のメールにリンクを添える使い方もできます。
LMS で受講状況を管理する(SCORM)
証跡を集約するなら教材を SCORM 形式で LMS(学習管理システム)に登録すると、受講者ごとの完了状況や学習時間を LMS が自動で記録します。部署や事業所が分かれていて、誰に届いたかを一覧で確認したいときに向きます。無料・オープンソースの LMS もあり、まずは小さく試すこともできます。案内役編や発注編のように対象者が限られる本も、同じ仕組みで誰に届いたかを確認できます。
SCORM 1.2 入門ガイド
受講記録を残すうえで避けて通れないのが SCORM 規格です。SCORM とは何か、なぜ重要か、対応 LMS、書き出しの流れまでをまとめた入門ガイドをご用意しています。サンプル SCORM 1.2 パッケージも無料でダウンロードできます。
SCORM 1.2 入門ガイドを読む →セクション 5
つまずきやすいポイント
受け入れのルールの教育を動画にするときに引っかかりやすい点を、先回りして 5 つ挙げておきます。
動画で作業ごとの取り決めの代わりになると考えない — 製造業などで、自社の従業員と協力会社の作業者が同じ場所で作業するときは、元方事業者として作業間の連絡や調整などの措置を講じることが労働安全衛生法で求められています。化学物質を扱う設備の改造・修理・清掃などを発注するときは、注文者として危険の情報を文書などで伝えることも定められています。動画教材はそうした取り決めや情報の受け渡しを済ませたことにはなりません。教材の位置づけを「受け入れの決まりの共有と、どこで何を決めるかの案内」と社内で先に決めておき、個別の作業の決め方は担当の部門と様式に任せてください。
来訪者を呼ぶ部署の人を、対象から外さない — 受け入れの教材を受付の担当や総務だけに配ると、いちばん守ってほしい「付き添いなしで決められた範囲の外に出さない」が、実際に来訪者を案内する人に届かないまま残ります。来訪者を呼ぶこと、協力会社に作業を頼むことは、どの部署でも起こります。共通編は、受け入れにかかわる可能性のある全員に配る前提で作ってください。
事業所ごとの決まりの違いを、そのままにしない — 事業所や建屋ごとに受付の手順や入構証の扱いが少しずつ違うと、異動してきた人や応援に入った人が迷います。教材を作る段階で各事業所の決まりを並べて見直し、会社として統一する部分と、事業所ごとに決める部分(受付の場所、通路、保護具の置き場など)を分けてから撮ってください。決まりそのものは、総務・安全衛生管理部門と各事業所の責任者で決めます。
撮影で、見せてはいけないものを映さない — 受け入れの教材は構内を映すことが多く、生産設備の細部、掲示物や画面に映った情報、従業員や来訪者の顔が入りやすい題材です。教材自体が協力会社や来訪者に見せることもある前提で、撮る範囲と映してよいものを情報管理の担当と先に決めてください。受付簿の映し方にも注意が要ります。実際の記入例ではなく、架空の記入例を用意して映すと安心です。
決まりが変わったあとも、古い本を残さない — 建屋の改修、通路の変更、入構証の仕組みの入れ替えがあったのに古い動画が残っていると、どれが今の決まりなのかが分からなくなります。いつ時点の内容かを画面に入れ、配置や仕組みを変えたときは該当する本を見直して、旧版は共有場所から下げる担当を決めてください。
セクション 6
よくある質問
新規入場者教育とは、どう使い分けますか?
来訪者や協力会社の人に、この教材をそのまま見せてもよいですか?
構内で作業する協力会社への説明も、動画で済ませられますか?
防災や避難のときの来訪者の扱いも、この教材に入れるべきですか?
外国からの来訪者や、外国籍の作業者にも使えますか?
どこから作ればよいですか?
ご紹介
社内の研修教材づくりに使えるツールのご紹介
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